2021/04/07 政治
【石垣島住民投票】控訴審判決ドキュメンタリー「“私たち”に起こっていること」

市民が持つ多様な意見。
ひとりひとりがそれを表し、互いに違う意見も認め合い、話し合いながら地域のことを考えていきたい。
若者たちが発したこの想いが共感を呼び、市の有権者の3人に1人が署名で支持した、石垣島の住民投票。
2年以上経った今も実施されず、市民の意思表明の機会は奪われたままです。

 

 

▶︎「石垣市平得大俣地域への陸上自衛隊配備計画の賛否を問う住民投票実施義務付け等請求控訴事件」
2021年3月23日午後2時 判決言い渡し
(福岡高等裁判所那覇支部・大久保正道裁判長)
→当日の会見を中心に傍聴席での所感を交え、7分の映像に記録しました。

映像でお伝えできなかった判決内容の矛盾について、こちらの記事で補足させていただきます。

 

那覇地裁での一審判決(2020年8月27日・平山馨裁判長)は、住民投票の実施は抗告訴訟の対象となる行政処分には当たらないとして訴えを入り口で退け、石垣市長の実施義務の有無についての判断をしませんでした。控訴審判決もこれを追認し、控訴を棄却。新たに、石垣市自治基本条例に基づく住民投票の実施には、その案件ごとに条例の制定が必要である旨の文言を加えました。しかしこれは2つの点から間違った判断だと考えられます。

 

①憲法94条違反

・地方自治法第74条では、有権者の50分の1以上の連署を集めたら市長に条例の制定を請求することができますが、議会がこの条例案を否決すると住民投票を実施することができません。

・石垣市自治基本条例第28条では、有権者の4分の1以上の連署を集めたら市長に実施を請求でき、その請求を受けた市長は住民投票を実施しなければならないとあります。

(原告・石垣市住民投票を求める会は、冒頭に記したように有権者の3分の1を超える14,263 筆の署名を集めています)

 

 

 石垣市自治基本条例

 第28条  住民投票の請求及び発議

 【第1項 】
市民のうち本市において選挙権を有する者は、市政に係る重要事項について、その総数の4分の1以上の者の連署をもってその代表者から市長に対して住民投票の実施を請求することができる
 【第4項 】
市長は、第1項の規定による請求があったときは、所定の手続を経て、住民投票を実施しなければならない

 

文章をそのまま読んでも控訴審判決に違和感を抱くのではないでしょうか。「50分の1」と「4分の1」では明らかに設定されたハードルの高さが異なります。にもかかわらず同じように「議会の可決による条例の制定」が必要だと判断しているのです。これは「法律の範囲内で条例を制定することができる」とした憲法94条に反していると、原告弁護団は指摘しています。

 

②2016年の八重山毎日新聞記事が示している事実

2016年10月9日付の八重山毎日新聞の記事には、
「条例なしで実施可能 自治基本条例の住民投票」という見出しで、市側の明確な回答が記されています。(記事全文リンク

 

 

 市が解釈を明示

石垣市自治基本条例第28条で定める住民投票は、条例を制定しなくても実施できることが分かった。同基本条例は有権者の4分の1以上の連署で住民投票の実施を請求でき、市長は「所定の手続き」を経て実施しなければならないと規定。この所定の手続きについては条文で明確な規定がないが、市は8日までの八重山毎日新聞の取材に対し、議会の議決を必要とする条例の制定は含まれていないとの解釈を示し、「その数の署名が集まれば、市議会に諮ることなく、必ず住民投票を実施するというもの」と説明した。
(中略)
市は「住民投票は市の将来を左右するような重大な事項に関して、市民が自らの意思を直接表明する権利を保障するもの。この権利をより強く保障するため、市民から有権者の4分の1の連署により住民投票実施の請求があったときは、市議会の議決に付することなく、必ず住民投票を実施するものとしている」と解説する。

 

控訴審判決は、原告側から証拠書類として提出されていたこちらの記事にはまったく触れずに「自治基本条例における住民投票はその案件ごとに定められる条例により実施されるもの」と判断したことになります。

 

一審・二審ともに、原告の市民が求めた「市長の住民投票実施義務」についての判断を避けました。しかし石垣市の中山義隆市長は、判決を受けて「今回も市の主張を全面的に認めていただいたものと考えております」とコメントしています。
また、市長から「改廃を含めて助言いただきたい」と諮問を受けた自治基本条例審議会は、住民投票の規程を含む5項目の「見直し」を答申しています。
一方で、実際に市に寄せられた市民意見の多くは自治基本条例に肯定的で、変える必要はない、或いはその理念を充実発展させることを望む声でした。

 

 

救いを求めて司法判断を仰いだ住民投票を求める会ら、原告の市民たち。

 

彼らの声を正面から受け止める判決文は書かれませんでした。

 

市民に背を向けた行政、司法。

原因の一つは、それが許容される構造ができているからだと私は思います。プレッシャーになる世論が培われにくい。報道されない、伝わらない、広がりを見せない。安全保障や基地の問題、ましてや自衛隊のことには触れづらい。

 

けれど石垣島から聴こえてくる声は、それらをタブー視せずにちゃんと話していこう、健全な民主主義を育て、それを子どもたちの未来にのこしていこう。
そのような声なのです。

 

私たちはこの声にどのように応えることができるでしょうか。

 

判決を受けて原告団と弁護団が出した声明の、最後の一文を引用します。

 

“住民投票の実施によって、住民自治の実現を図り、政治的意思を表明する権利が保障され、かつ、石垣市のみならず我が国の民主主義を護ることができるようになるまで、我々は決して諦めない”

 

 


 

【関連トークイベント・ドキュメンタリー】

▶︎堀潤さん YouTubeチャンネル

▶️ウーマンラッシュアワー村本大輔×ジャーナリスト堀潤×石垣島からの声『島人〜すまぴとぅ〜と考える 大切なこと ー石垣島 全国初の住民投票義務付け訴訟からー』

▶️私たちが控訴を決めた理由 石垣島・島人(すまぴとぅ)と考える2

▶︎蔵原実花子 8bit News 動画/記事

▶️僕らは話したい、そして聴きたい。〜石垣島住民投票・一審判決ドキュメンタリー〜

▶️於茂登 命をめぐる水と生きて

▶️だはずの人 ーA Field of Flowers Foreverー 

▶︎蔵原実花子 note記事

✏️この島の人たちが本音で話せるように〜石垣島・ハルサーの闘わない闘い〜

プロデュース :蔵原実花子
Comment

コメントは管理者が承認後に表示されます。

Page Top