この動画の要点
- パレスチナの雑貨を扱うブランド「架け橋」代表の髙橋智恵さんが、現地のデザイナー・アイシャさんの活動拠点を設立するためのクラウドファンディングについて語ります。
- デザイナーのアイシャさんは、ナブルスの家具工房などで出る端切れを活用したアップサイクルと伝統的な刺繍を組み合わせた独自の製品作りを行っています。
- 2023年10月以降の情勢悪化により、物価高騰や移動制限(検問所での長時間待機)、精神的なダメージなど、現地のものづくりはかつてない困難に直面しています。
- プロジェクトの目的は、アイシャさんが自宅の片隅ではなく専用のスタジオで安定して働ける環境を整え、他の女性たちの雇用も創出することです。
- 支援を通じて、単なる同情ではなく、遠く離れたパレスチナの人々と「共に在る」という「共在感」を育むことを目指しています。
全文書き起こし
堀 潤: さあ、この時間の8bitNewsはですね、素敵なゲストをお迎えしております。皆さんパレスチナが今どうなっているか、きちんと覚えていてくれますか?というか、今の状況を知っていますか?8bitNewsを見てくださっている方々は、適宜いろんなタイミングでお伝えしてきましたけれども、ちょっと今日はより身近な暮らしの中でもパレスチナを感じられる、そんな時間になるかもしれません。スタジオのゲストは「架け橋」の髙橋智恵さんです。よろしくお願いします。
髙橋 智恵: よろしくお願いします。
堀 潤: 今日早速スタジオに「パレスチナ雑貨のお店 架け橋」という素敵な看板と、お店で扱われているものですかね。箸とかお皿とか持ってきていただきました。ちょっと簡単な自己紹介をお願いしてもいいですか?
髙橋 智恵: はい。「架け橋」というお店をやってます、髙橋智恵と申します。2020年の2月に大学を卒業する本当にギリギリのところで、個人事業としてこのパレスチナの作り手の製品を届けるフェアトレードのブランドということで開業をしました。それから今7年目になりまして、この間、大阪・近畿を中心に各地で販売をして回ったり、イベントや今の状況ではお話会をしたりしながら過ごしているというような状況です。
堀 潤: しかも「中東パレスチナと日本の『かわいい』を」というふうにホームページにも書かれてましたけど、これはどういうコンセプトで、しかもフェアトレードっていう。
髙橋 智恵: そうですね。いろいろ渋滞してますね。でもまずはパレスチナとの原体験に遡るんですけど、パレスチナに自分が行ってきましたというところからスタートはするんですけど、それを人に話す時に「パレスチナに行きたい」とか「行ってきた」ということを当時2018年とかに伝えた時に、あんまりいいリアクションが返ってこないというか。「え、危ないんじゃないの?」とか「え、なんで行くの?」とか、ちょっと怪訝に取られるっていうのはなんとなく雰囲気として感じていて。なので、何か切り口、触れる切り口だったり入り口だったりっていうのが、もうちょっとこの日本の世の中で足りていないのかなっていうのを当時思って。
堀 潤: こちらの写真が2018年、ホームステイでお世話になったとありますけれども、ホームステイされてた。
髙橋 智恵: ホームステイを、はい。西岸地区の方のヘブロン、現地語でアル・ハリルっていう街ですね。
堀 潤: いい写真ですね。でも確かに僕もちょうど2017年にJVC(日本国際ボランティアセンター)の皆さんの同行でガザに取材に行って、その時に確かにいろんな話を聞いて帰ってくるんだけれども、日本では反応が悪い。ガザにいる時に、まさに当時も停電がずっと続いて薄暗い家の中で我々が訪問すると、一家の家長が胸に手を当てて「いや、私たちは日本の皆さんを歓迎したい。日本の皆さんは原子爆弾の被害にも遭い、そして戦後の焼け野原の中から経済復興して、今や世界ナンバーワンの経済大国になったんだ。にもかかわらず、こうして人道支援というところに力を入れて、日本の皆さんは本当に尊敬する、ありがとう」っていうふうに言ってくれて。「いや、そんな」って。なのでどこ行っても「日本」って言うといろんな反応が返ってくるわけですけど、日本に帰ってきて「パレスチナが」と言っても、結構みんな「あ、そうか。え、どこでしたっけ?大変ですね」っていう、そういう状況でした。共感しました。
髙橋 智恵: まさに。すごく非対称性を感じますね。
堀 潤: 留学中、ホームステイではどういうお話を結構現地でされたりとか。
髙橋 智恵: そんなたわいもない話が多いですね。私も学生のぺーぺーで行っているので、向こうもそんな大人の話をしようとはならないですから、割と普通に日常の話が多かったです。私が性別的に女性っていうのもあって、女性たちと過ごすことがどちらかというと多かったんですけど。この写真はたまたま女性だけで撮ろうって言って撮ったのでこうなっておりますが、撮ってる側には男性の家族の人たちがいるんですけどね。なのでメイクの話とかK-POPの話とか、同世代の中学生・高校生とはそういう本当に日常的な話、今流行ってるものだったり、パレスチナではこういうふうにメイクするのがいいんだとか、こういうふうに踊るのがいいんだとかいうのを教えてもらったり、アラビア語を教えてもらったりっていう会話が多かったです。
堀 潤: そもそもどうして2018年、ヘブロン訪ねようと思ったんですか?
髙橋 智恵: 学生の時は文化人類学を学んでいて、とりあえずその異文化というか、自分の常識じゃない生活をしてる人たちにすごい興味がもともとありまして。その中でも日本でやっぱりなかなか触れにくい場所にこそ行きたい、今のうちに、学生のうちに行きたいっていうのがなんとなくあったんです。なのでイスラム圏だったりとかスラブ圏だったりとか、よりちょっと日本でマイナーと言われるようなところにすごく興味があって。パレスチナはそれに加えてパレスチナ問題っていうものがやっぱりあって、私も詳しくななかったですけど大学の図書館で本を読む中で、なんかこれは何かすごく変なことが起きている地域なのかなっていうのは思っていて。それで在学中に行きたいっていうので2018年に行きました。
堀 潤: どうでした、でも行ってみて。
髙橋 智恵: 行ってみて、なので、当たり前なんですけど日常を送っているというところがまず最初の強い印象でしたね。街の彩りとか、小さなお店の数の多さとか、子供の多さとか、そういうのにまず圧倒されて。街が夜遅くまで明るい。もう本当に営業する必要がないような、嗜好品のお店とかでも結構遅くまで開いていたりして「これは何だろう」みたいな。皆さん結構生活してるなっていうのが最初にびっくりして。でももちろんそこからご飯を知ったり文化を知ったりしていく中で、歴史がすごく深い場所、それだけそこに人が暮らしてきた場所だっていうのが伝わってきて。そういう入り方で捉えましたね。で、その合間合間に占領の話とか聞くんですよ。こちらから聞くわけじゃないんですけど、時々そういう話が差し込まれてくるというか。
堀 潤: 当時もそういう話をその合間に聞かされて思うところはいろいろあったということなんでしょうか。それとも帰ってきてまたよく調べてみて、さらに理解が進むということになったんでしょうか。
髙橋 智恵: そうですね。当時は日常のテンションで言うんですよ、そういう占領の話を。別でするんじゃなくて、本当に話を、それこそ今日の御飯の話とか学校の話とかお家の話をしてる中での「イスラエルの何かの許可が下りなくて、これこれが進まない」とか。ふと昔の家の話、実はホストファミリーも家を壊されている。で、今私が行った家っていうのは第二の家というか、避難した先の家みたいな状況で。そういう昔の話が出てきたりとか。でも特別な話をするっていうより本当にそのままのテンションで言ってくるのがすごく、それがこの人たちの生活のもう一部に深く組み込まれているのがパレスチナ問題であり軍事占領なんだなっていうのを感じて。もちろん移動してると壁も見ますし、自分自身もそういう兵士の検問所を通ったりもしますし、自分事化したというか、腹落ちしたというか。直接本当に暴力を目にした、目に見える暴力を目にしたわけでは幸いなかったんですけど、じんわりいろんな角度から伝わってくるものが、この人たちの直面している問題なんだっていうのを現地で感じました。
堀 潤: 一方でそれが単なる体験とか経験に終わるのではなくて、自らこうしてお店を運営していくっていうのはどういう過程だったんですか?
髙橋 智恵: 一つは、すごく大きかったのはホストファミリーがやっぱり存在としてあって。そんな中でものすごく受け入れてくれて、なんか「助けて」とかでもなくて別に。彼らはそこで生きていて、誇りを持って生きていて、なんならこちらをおもてなしする余裕ありますみたいな態度でいろんなことを受け入れている。で、なんか「なんとかしたい」っていうポジティブになんとかしたいと思った面と、これはやっぱりおかしいことだってふうに。あと、もう少しまっすぐ言ってくる人とかもいて。ホストファミリーはそういう強要をしてこなかったというか、何もそう訴えてこなかったんですけど、やっぱり占領がより進んでいる地域と言いますか、本当に直面してる人のところに行ったりすると「この状況を見て外国から来たあなたはどう思うのか」みたいなことを問われる人もいるんですよね。で、大体の人はそのまま帰って終わると。いうことを言っていた人がいて。「あ、そっか。なんかそれはちょっと消化しきれない言葉ではあって」。見学に来て帰るだけ、みたいな。そう言う人もいて、まあそれはそうですよね。っていうのがあって。変えたいっていう前向きな気持ちと、変えなければっていう切迫した気持ちと両方持って帰ってきて。じゃあ自分がどんな形で関われるだろうというところでちょうど就職活動の時期に差し掛かったので、飲まれながら「どうしようかな、将来」っていう期間に入っていって。ただパレスチナの方々との何らかの関わりをライフワークにしようと思ったら、やっぱり正社員で何か週5、8時間、まあそれ以上でしょうねっていうふうになってしまうと、無理かなと思って。両立が。だったらそれを真ん中に持ってくるしかなくなるので、必然的にそういう就職先を探すか、自分がなかったら作るかっていうことになり。そういう就職先はあんまりなかったので、結果的に自分で開業することになりました。
堀 潤: そうか。じゃあもう専業で最初から自分でやりますということで「架け橋」が立ち上がって。
髙橋 智恵: そうですね。今は複数業、パラレルワークだったりとか、始めた当初も他にパートしてたりとか、いろいろやりながらではあるんですけど。でも中心にはそれを据えたいなっていう。
堀 潤: それでオープンした。で、今日はこちらのものをお持ちいただいてる。今日はひょっとして髙橋さん着ている服も。
髙橋 智恵: あ、そうです。これは全然最近、2024年の夏に西岸地区に行ってきたんですけども、その時に、今日きっと後半で出てくるアイシャさんっていううちの作り手がいるんですけど、アイシャさんと街をぶらぶらしてた時に「土曜日は蚤の市がある」って言って行って、そこでゲットした伝統衣装です。
堀 潤: 素敵ですね。しかも胸には何か木彫りの。
髙橋 智恵: こちらはうちの生産者が作っているフェアトレード商品のブローチですね。
堀 潤: そうか。で、カバンもあるんですか?
髙橋 智恵: カバンも、そのアイシャさんが作っているカバンです。一点物なのでこの色だけなんですが。こちらもそのフェアトレードの。
堀 潤: そしてスタジオにもいろいろ。これはコップ、コースターですかね。すごい、なんかあの丸みがまた絶妙に握りやすい感じの角がね、面が柔らかく取ってくれてます。この木の風合いもいいですよね。
髙橋 智恵: そのまま活かした感じで。
堀 潤: ここに書かれているアラビア語はサインですか?
髙橋 智恵: これは生産地を「パレスチナである」「パレスチナより」っていうのを入れてもらっています。
堀 潤: へえ。他にもいろいろあって、ペンとか。これはやっぱり使ってますね、普段。
髙橋 智恵: 確かに持ちやすいし書きやすい。へえ。他にもね、かわいいのがこちらのスプーン。赤ちゃんから、サジって感じですよね。いいですね、かわいい。へえ。あとはいろいろ。あ、「架け橋」の出店用バッジ。これも。などなどですけれども。今ちょうど生産者の方のお話がありましたけど、そのストーリーも伺っていいですか?
髙橋 智恵: もちろん。生産者との関わりと言いますか。まず最初立ち上げた時にオンラインで繋がった生産者なんですね。2020年の立ち上げだったので、ちょうどコロナ禍になる直前に始めて。こちらはコロナ禍になるとは知らないので「なんとか、どうしましょう」ってなりまして。で、オンラインでそのまま続けてコンタクトを取って今に至ってる生産者で、ベツレヘムっていう西岸地区の南の方にある街のあの辺りで作っている人たちになります。
堀 潤: 写真もあるんですか?
髙橋 智恵: ナブルスって北の方の街で、この蚤の市で一緒に服を買いに行ったのがこのアイシャさんですね。
堀 潤: この方がアイシャさん。アイシャさんはその同年の冬とか終わりぐらいに、もうちょっと布のものをいろいろやりたいなとか。パレスチナは布や刺繍も有名なので、最初オリーブの木工の団体と繋がったんですけど、もうちょっとそういったものもやりたいなとは思って。でもなかなか誰に声をかけていいか、結構やってる方も多いしと思っていたところに、彼女の、さっきのカバンもそうなんですけど、結構落ち着いた色味だったり、アップサイクル、環境問題へのアプローチをしている人なんです。で、それが珍しいというか、他にないものだなと思っていて、お互いにSNSをフォローし合っていたところから声をかけて始まったのが彼女との共同になります。
堀 潤: ちょうど今クラウドファンディングが立ち上がってるんですか?
髙橋 智恵: はい。このアイシャさんが、出会った当初からなかなか生産環境がないんですっていうのを言っていて。生産環境がないとじゃあどういうことなんだっていうのを、私たちも最初は直接訪ねられないコロナ禍だったので、ちょっと他の人に行ってもらったりとかして様子を見てもらってたんですけど。もう玄関入った家の、自分の家で作業していて、入ってすぐの「どこですかそのスペースは」みたいなところで全部お仕事のものを置いていて。なかなか在庫を置く場所もないし、広げてとかもできないし、どうやって作ってたのかなっていうぐらい当時。もう狭いところで作業して。で、かつ場所がないだけじゃなくて、ご家族みんな親戚とか一緒に住んでる。もう家の中がずっとひっちゃかめっちゃかしていると。まあ小さい子が常にやっぱりいますし、パレスチナのご家庭っていうのは。まあギャーとか言ったらまた仕事集中できないとか、誰かの世話を見なきゃいけないとかいうこともあって、なかなか仕事ができないっていうので。自分のブランドとして立ち上げられても、出会った時で7年とか経ってたんですけど、なかなか彼女の思うようにできないっていうことがあって。で、それを現地に2022年に行った時にその状況を見て、で2024年去年行った時はまたさらに場所がなくなって、離れみたいなところにもう物だけ置いてるような状態で。でも次の注文もするけどなかなか作れないみたいな状況で。そこにガザ侵攻が重なって、2023年からの状況が重なり、彼女の個人的な状況とパレスチナ全体の状況で、身動きがなかなか取れなくなってしまって。それは精神的にも。ちょっと鬱状態になったということを本人が言っていて。で、もうまあ少し元気も取り戻しつつはあるんだけど、やっぱり場所がないっていうのが一番自分にとってストレスだし、解決しうるのはそこぐらい。占領をすぐに解決するってなかなか難しいことかもしれないので、彼女の置かれてるものの中で環境を整えるっていうのは一番今目先必要なことだっていうのを今年の6月ぐらいに相談を受けまして。じゃあちょっとそれはやろうっていうので、7月にページをぶわーっと作って。協力結構今回いろんな人に協力していただいてまして、返礼品なんかも。その辺の声掛けをぶわーっとして、もうみんなで突貫で作ったっていうのを、9月30日まで今やってます。
堀 潤: 順番に、実はそのクラファンのサイトには動画も掲載されているんですよね。ちょっと見てみてもいいですか?
(動画再生:アイシャさんのインタビュー)
アイシャ: アイシャデザインのビジョンとして、私たちは独立した拠点を持ちたいと考えています。今は自宅の一角で作業していますが、継続して活動し周囲の重圧から抜け出すには、自分たちの場所が必要です。新しい女性たちに雇用の機会も作りたいですし、このプロジェクトを継続させ、長期的に安定させるためにも、活動拠点となる場所が不可欠です。これまでも、数々の重圧や困難の中で続けてきましたが、その中で最も大きなものの一つが、やはり自分たちの仕事をする場所がないことです。私は自宅で作業していますが、家族や外部との軋轢も多く、常に落ち着いて働ける環境ではありません。注文を受けても作業を完了できない場合があり、場所がないために、潜在的なお客様や、以前から継続的にご注文くださっていたお客様まで失ってしまうこともあるのです。私たちは彼らを失わないように努力していますが、経済的な困難や、パレスチナで起きている出来事によって、状況はさらに厳しくなっています。2度スタジオを借りようとしましたが、攻撃の影響で家賃が異常に高騰し、諦めざるを得ませんでした。ですから、私たちは本当に専用の拠点を持てるよう支援を必要としています。そうすれば、製品を安定的に生産でき、働く女性の数も増やし、単に自宅で働くのではなく、アイシャデザインの専用の場所で活動できるようにしてあげられるのです。
(2023年10月7日以降の状況を受けて)
アイシャ: 10月以降、私は精神的に大きなダメージを受けました。私たちの日常生活そのものに、その影響がはっきりと現れてきました。10月に起きた出来事だけでなく、そもそも人間には、経済的社会的、家庭的な多くの重圧がのしかかっています。その上に、この10月の出来事が加わったことで、個人的な危機や重圧がさらに大きくなったのです。私は何度も、このアイシャデザインのプロジェクトをやめようか、この仕事を続けるのはもう無理なのではないかと考えました。本当に疲弊していました。さらに顧客が途絶え、売上もなくなりました。2年間、私たちは活動できず売上も収入もありませんでした。それもまた私にとっては精神的な打撃となり、ついにうつ状態になりかけていました。それでも、その後なんとか立ち直ろうと努め活動を続けようとしています。しかし正直に言えば、あらゆる重圧があり、とても困難な状況です。パレスチナ全体に影響が広がっています。以前にも重圧はありましたが、10月以降はそれが倍増しています。
(ものづくりの課題や困難について)
アイシャ: アイシャデザインが直面してきた状況は、10月以前も10月以降も基本的には大きく変わらず、私たちの前には毎日同じような困難、同じような複雑さがありました。しかし、10月以降は、特に都市間を移動するときにどうしても余分な時間が必要になってしまったことで、その困難はさらに増大しました。例えばナブルスからラマッラーに行くことは、検問所のせいで、何回も考え直さないといけないくらい大変になりました。2023年10月以前にも検問所はありましたが、10月以降はその大変さが倍増しました。私はラマッラーに行くだけで、行きで6時間、帰りでも6時間検問所で止められることがあります。1日12時間も道路で過ごすことがあるのです。門が開いているのか閉じているのかも分かりません。10月以前にも検問所はありましたが、1〜2時間かからない程度で、ラマッラーへ行き来するために12時間もかかることはありませんでした。さらに、私には生産拠点の問題もあります。これは最も大きな困難の一つで、この仕事を辞めて他に職を探そうかと考えるほどです。しかし私はアイシャデザインを始めましたし、そこに情熱があるので、諦めずに、どんな困難にも向き合いながら続けています。私には自分の作業用スペースが必要ですが、それすらもありません。また、熟練した労働力も不足しています。見つからないのです。もし見つかったとしても、場所が遠すぎます。縫製や刺繍の担い手に会うために長距離を移動しなければならず、時間がかかり過ぎるため、生産コストがとても高くなってしまいます。もう一つの困難は経済状況です。地元で販売することはできません。なぜなら、パレスチナの人々の経済状況が悪く、アップサイクルの商品を買う余裕がないからです。国外で販売しようとしても輸送の問題があります。2023年10月以降、輸送費用が高くなった上に、輸送そのものが長い間止まってしまいました。国外に出荷しようとしてもできない期間が続いたのです。しかも、10月以降は、検問所や新しいイスラエルの手続きのせいで輸送費も上がってしまいました。正直、こうして多くの問題や困難が重なる中で、普通はこんな事業をしていれば、辞めてしまって、別の職に就いた方が良いと誰もが言うと思います。ですが、本当に情熱がある人だけは、こういう仕事でも続けていけるのだと思います。私はアイシャデザインとそのデザインが大好きなので、困難があってもやり遂げたいです。ですから、数々の困難を抱えながらではありますが、私はそれでも続けていくつもりです。
堀 潤: はい。状況がよく分かりました。物価の高騰も著しいし、物を運ぼうにも検問所、この数年特にやはりプレッシャーも厳しく、開けない、開かない、通さない。僕もジェニンにおととし、1年半前か、ジェニンに行っていた時に、病院がもう給料が支払えないからと言って、そこで働いている皆さんがとにかく給与を出してほしい、でもそういう状況があって。でお話聞いていてもやはりおっしゃるように、あらゆるものが高くなっていって。なんかそういう中で精神的にやはりすごいダメージ受けますよね。自分たちが隔離された世界で、しかも正当に評価されず。そういう中で生産を続けるっていうのは本当に大変なことですよね。
髙橋 智恵: やっぱりその先の見えなさっていうのが一番課題、心に負担になるというか。いつまでかが分からないっていうのが、いつまで頑張ればなんとかなるとかじゃないので。やっぱり状況が先が読めない、不確定な要素が多すぎるし、で徐々に悪くなってる感覚があるしみたいなことが、総合されてプレッシャーに感じてるっていうのはアイシャさんもそうですし、木工の方の工房で去年聞いてきた話でもどこの工房もやっぱり先が読めないとか、続けられるか分からないっていうのは聞きましたね。
堀 潤: アイシャさんそのアップサイクルって言ってましたけど、どういう素材を使ってどういうものを作っているのかっていうのもちょっと教えてもらっていいですか?
髙橋 智恵: ものづくりに関しては、ナブルスは結構縫製をする工房っていうのがたくさんあって、あと家具を作るような、家具の縫製ですね、布のソファとかを作るような工房っていうのもあって。そういったところからデッドストックだったりとか、布の大きい端切れが出てしまうっていうのが、結構その積もり積もってナブルスのゴミが多いっていうのが彼女の問題意識としてあって。で、こういった工房ではもう使われない布っていう部分を買ってきて、それを土台にして、あとは伝統的な刺繍のデザインだったり織物と合わせて何か物作るっていうのがベースのスタンスですね。
堀 潤: いや、すごい綺麗ですね。面白いですね。なかなかこういうふうにアップサイクルを目指して商品作っていくんですっていう刺繍の方とか作家の方っていうのは、そんなに多くないんじゃないかなと思ったんですけど、どうですか?
髙橋 智恵: あんまり知らなくて、それでアイシャさんが目立ったというか「あ、こんな人いるんだ」っていうのでチェックしていて。他にももしかしたらいるかもしれないですけどね、なかなか珍しいとは思います。
堀 潤: そうか。じゃあそのアイシャさん支えたいということで今回クラウドファンディングを立ち上げている。いろいろクラファンのギフトも工夫されてるとお話しされましたが、どんな様子ですか?
髙橋 智恵: 全部やりたいようにやったと言いますか、本当に組みたい方に連絡を取ったっていうのがあって。この必ず皆さんにお渡ししてるステッカーがあるんですが、これは2年前に「パレスチナナイト in 仙台」っていうイベントを仙台で実施して、それこそパレスチナのことされて長いパレスチナオリーブさんなんかも仙台に拠点を持ってらっしゃって、何人かでその時にイベントをしたんですね。の時に会場になったアートインクルージョンさんの作家の一人の方が、この原画をこの時飾ってくださってて。パレスチナにインスピレーションを受けてその方が描いた絵。原画すごい良いんですけども。その絵を何かグッズ化したいなってずっと思っていて「今だ」っていうのがこのステッカーで。受け取った方も結構「可愛かったよ」って連絡をいただいてます。あとはその下に多分クッキーが出てくるんですが、これはパレスチナのオリーブオイルを使った植物性ヴィーガンのクッキーになっていて、なるべくいろんな方が食べられるような仕様になっていて、美味しいのはもちろんなんですけども。「毎日食堂」さんっていう淡路島のお店があって、こちらうちの商品も取り扱っていただいているお取引先なんですけど。なんかクッキーみたいなものがあるといいな、食べ物欲しいなと思っていて「あ、多分毎日食堂さんはクッキー作れるな」っていうのでご連絡をして。今製造のお店とデザインもまた別の方がやってくださってるんですけども、まず毎日食堂さんに声掛けて実現しました。で、コーヒーもこちらの「caffé micio」さんっていうのも京都の左京区で焙煎をされている方なんですけど、イベントによく呼んでいただいていて。なのでパレスチナのことももう前からずっと想ってくださってるお店で、コーヒーも誰かにお願いしたいな、もちろん結構知ってる方、コーヒーをやってる方は周りに何人かいるので迷ったんですけど、やっぱりいつもイベントでご一緒させてもらってるので頼んでみようと。で、先ほどの絵をパッケージにも使っています。なので今回クラファンに参加することで、その素敵な想いの詰まったものにたくさん触れられるし、アイシャさんが作品を作り続けられることで私たちがまたそれを手にして、離れていても共にあるっていうのが感じられる、そういう機会にもなりますよね。実際そういうふうに言ってくださってる方も今ちらほらといらっしゃいますので。
堀 潤: これ今目標額が150万円になってますけれども、あと少しで達成ですよね。非常に今あと少しの状況です。でも150万円だけだと、この今のインフレ、円安、物価高、なかなか足りないんじゃないかなって。本当はもっともっとあったほうがいいですよね。
髙橋 智恵: それは少し懸念しています。最初のプロジェクトページにも書かせてもらってるんですけど、やっぱり円が今非常に弱いっていうのがありまして。念のためのもうちょっと確実に届けられるような額であったりとか、資材に関してもその時にならないと最終価格っていうのがやっぱりアイシャさんも分からないので。今の時点では150万の中で収まるかなと言っていても、その後が分からないので。もし超えることができたらネクストゴールを設定したいなというふうに思っています。
堀 潤: 多ければ多いほうがいいので、ぜひ皆さんで支えていただければと思います。今日は「架け橋」の髙橋智恵さんにお越しいただきました。ありがとうございました。
髙橋 智恵: ありがとうございました。
概要(動画説明欄より)
▼パレスチナのデザイナー・アイシャさんの仕事場づくりを応援するクラウドファンディング【2026年9月30日まで】
https://for-good.net/project/1004050
このバッグが、日本に届くまでに。
作り手は、どれだけの困難を越えてきたのでしょうか。
検問で往復12時間かかることもある移動。上昇する輸送費。布を広げ、制作に集中できる場所の不足。それでも、自分の仕事を続けたいと願う人がいます。
今回の8bitNewsは、中東パレスチナのフェアトレードブランド「架け箸」代表・髙橋智恵さんを迎え、堀潤が話を聞きます。
大学生だった2018年、パレスチナ・ヨルダン川西岸地区のヘブロンでホームステイをした髙橋さん。メイクやK-POPの話をする日常の中に、家を壊された経験や移動の制約が織り込まれていました。
その出会いから、2020年に「架け箸」を設立。オリーブの木の雑貨や、伝統の刺繍・織物を生かした布製品を、日本へ届けてきました。
番組では、ナブルスで「Aisha Design」を手がけるアイシャさんの現地インタビューも紹介します。使われなくなった布を新たな作品へと生まれ変わらせるアップサイクル。その仕事を続けたいという思いと、制作を妨げる具体的な事情を、本人の言葉から見つめます。
※現地インタビューは、髙橋さんらが2025年夏に収録したものです。
■アイシャさんの働く場所をつくるために
「架け箸」は、アイシャさんが安心して制作を続けられる環境を整えるため、クラウドファンディングを実施しています。
目標額:150万円
募集期限:2026年9月30日
実行者:架け箸
返礼品には、パレスチナ産オリーブオイルを使ったクッキーやコーヒー、飲食店の食事券なども。詳細・最新の募集状況は、冒頭のプロジェクトページをご覧ください。
■「架け箸」公式サイト
https://kakehashi-palestine.com/
気に入った作品を手に取り、その作り手を知る。
遠く離れていても、関わり続けることはできる。
髙橋さんが大切にする「共在感」という言葉についても伺いました。
出演:髙橋智恵(「架け箸」代表)
聞き手:堀潤(ジャーナリスト/8bitNews代表)
#パレスチナ #フェアトレード #8bitNews
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