この動画の要点
- 地方創生の「ステージ2」として、補助金に頼らず自走するための「地域ファイナンス」の仕組み作りが提唱されています。
- 地域経営において、日々の現金の出入り(PL)だけでなく、不動産やブランドなどの資産(BS)を評価し、資金調達に活用する視点が重要です。
- 香川県三豊市の事例では、空き家をリノベーションして商店街を再生し、DAO(自律分散型組織)を活用したシェアハウス運営など、独自の「ローカルIPO」が実践されています。
- グローバルファイナンスの単一基準に吸い上げられないよう、地域の良さを理解する人たちの間で資金が回る「限定的な金融市場」の構築が求められています。
全文書き起こし
村上 敬亮:この人たちが自分の力で資金調達ができて、後ろから4匹目、5匹目のカエルがついてきても来なくても、「俺たちはこっちに行ける」っていう状態を作るのがステージ2だと思うんですね。その時に鍵になるとその本(新・地方創生論)で言っているのが、不動産を上手に使えという話と、グローバルファイナンスから金を持ってくるんじゃなくて、それが好きなやつだけの限定流通性みたいな「ご利益ファイナンス」と言っていますが、その2つを完成させれば、飛び出した2、3匹も補助金なしで生きていけるようになるんじゃないかと。飛び出した2、3匹が自分で自走するようになり始めると、後ろのやつが安心してついてくることで、だんだんタイタニックが水面に向かっていくんじゃないか。それをステージ2で試してみたいと言っています。
堀 潤:まさにそれが第2章の「ビジネスモデルの再構築をどう進めるのか」。前段であった公金投入、地方創生交付金のようなもの、そして政策的に皆さんを後押しするパッケージ。これがあることによって数人の方々が出てきた。でも今度は自走するための新たなファイナンスのスキームをどう構築するか。そこに対しての提言。その「不動産」というのはどういう意味合いになってくるのか、どういう不動産のことを指しているのか、もう少し伺っていいですか。
村上 敬亮:ファイナンスのプロから見ると素人じみた議論で、ファイナンスに馴染みのない方から見ると何を言っているかわからないという議論なんですけど、「PLからBSへ」ということなんです。PLというのは、要はその時々の売上の出入りの話。BSというのは、その根っこにあるお店であるとか、その年の繰越資金を貸借対照表側で資産に持ってきて、現預金資産に来るとか。実はありとあらゆる事業は、そのフローとストックに分けられるはずなんですね。ところが、普通に地域で経営していると、もうフローを追いかけるのに精一杯で。
堀 潤:確かに。
村上 敬亮:僕が小学生の時だと、まだ地域の八百屋さんが野菜の上に天井からカゴをぶら下げていて、売上のお金をボンボンそこに入れていて、朝になるとそこの金を掴んで仕入れに行くみたいな。たまに覗いて「あ、なんか減ってるな」みたいな。失礼ですけど、多くの中小企業の経営はそれに近いんです。で、カゴの中の金が足りなくなったとか、来月店員の給料が払えないからお金貸してって銀行に借りに行くと、「お前、担保あんのか」って言われる。でも実は、持っているお店の不動産に価値がありませんかとか、あなたが使っているもののブランドの暖簾に価値がありませんかとか、ストックで評価できるものを資金調達の理由に立てると、実はお金って調達できるんじゃないですかと。
村上 敬亮:ただ、ここにはプロの技が必要なんです。地域金融機関もフローの融資しかやっていないから、そんなことできないし。ましてや八百屋の親父が家の資産価値の評価とか、家を1回切り離してオフバランスしてリースバックをすることでリノベ費用が出るんじゃないか、なんて言うと。まさに「オフバランス」「リースバック」「リノベ費用」なんて言葉も、ファイナンスの人が聞けばすぐわかる。普通の人が聞くとカタカナだらけでよくわからない。このギャップがものすごく大きいので、まずはBSをちゃんと扱える人を地域で1社立てて、そこがまとめて地域にあるアセットを管理してあげれば、リノベ費用や空き家の取得費用を代理調達してあげられるんじゃないかと。それを「ご利益」だと思って支援してくれる人から、安い資金調達コストで調達できる仕組みにすれば、飛び出したカエルたちは自分たちでファイナンスができるようになるんじゃないかということを、この本では言っています。
(場面転換:香川県三豊市の街並み)
古田 秘馬:ちなみに、ここも我々が取得していて、ここは今度、状態がいいのでこのままゲストハウスではなく、飲みに来た人が代行がないから(そのまま泊まれるように)メンバーシップ制で仮眠できるようにしています。で、ここがブルワリーになっています。ここが今、焼き鳥屋ができました。後で来ます。ここが寿司屋です。
堀 潤:すごいですね。
古田 秘馬:ここがバイク屋になっていて、ここが和食屋さんです。かつて150年前、ここは商店街でした。
堀 潤:商店街を作るってすごいですね。
古田 秘馬:そうそうそう。ここに焼き鳥屋ができて、隣にお寿司屋があるという感じです。おしゃれ。こないだ外国人がいっぱい来ている時で、こんな感じで世界中から来ていて。
堀 潤:これは観光ですか?
古田 秘馬:農業の経営者たちが街づくりに来ているんです。これは世界コンテンツだなと僕も思っているので。面白いのは、世界中の農業者が同じ課題を抱えていて、みんな若い者が街を出ていき、国の補助金漬けになっている。そんな中で「この街は何なんだ」と。
古田 秘馬:そして今度、ここは焼肉屋になります。こんにちは。
古田 秘馬:平野さんはもともと地元の饅頭屋さんの娘さんだったんですが、チーズが好きすぎて、フランスからもチーズの称号をもらった500人の1人です。
平野:私がすごく良かったなと思うのは、私たちだけでやっていた時は、ここにあるものを東京などに持っていこうとしていました。でも、秘馬さんたちが来て視野がぐっと広がってから、外の人がこっちに来てくれるようになって、ここにあるものを新鮮な状態で食べてもらえるようになった。これが正解だったと思って、本当にありがたいです。
スタッフ:ここは通り沿いを商店街にしようという話です。通り沿いを5区画に分けて、コーヒースタンド、ワインバー、アンティークショップ、フレグランスショップ。
古田 秘馬:3店舗あるけど、スタッフは1人です。なので隣がカランカランと言ったら、「はーい!」と言ってこっちに出てきて。(お客さんが)隣に行こうかなと言ったら、「はーい!」と言ってこっちに出る。これも「共助」で、3店舗で1人ならコストも下げられる。みんなでスタッフ付きの家賃を入れようかと。
堀 潤:もうかなり出来上がっていますね。
村上 敬亮:きれい。びっくりしました。急に出来上がっていますね。
スタッフ:ここはDAOのメンバーのみが使えるシェアハウススペースになっていて、1棟貸しの宿ではなく、メンバーだけが使います。
古田 秘馬:ポイントは1口10万円なんです。10万円出資すると、年間5泊で使え、10年間使えます。そうすると400人株主がいると2000泊分なんですけど、10人一緒に泊まれるようになっているので、3650泊あるじゃないですか。そのうち2000泊はDAOのメンバー。残りの1650泊をどうするかというと、我々が手伝ってほしいこととかをやってくれたら1泊つけます、という形で。通貨の代わりに宿泊をつける。
スタッフ:そういう関わりしろがあって、信用資産を積み重ねていける。すると、困った時も誰かが助けてくれる。そんな地域ができてきたなという感じです。
古田 秘馬:ここまで出来上がってくると、「出資したい」「参加したい」となるじゃないですか。でも、ボロボロの状態ではなかなか出資者は集まりません。企業も「カフェの運営費」では出資しにくいけど、不動産として2年後にはみんなが使い、家賃も入るので銀行融資に切り替えるんで、その前の2年間を出してくださいというモデルなら出しやすいんです。そういったモデルを今ここで作ろうと。ローカルファイナンスの空き家モデルですね。
(場面転換:スタジオ)
堀 潤:まさに地域にある古民家や宿泊施設を、持続可能な資金調達ができる資産に変えていく試みを三豊ではやっていましたよね。付加価値をつけてブランド化し、誰が見ても「これはいいものですね」となった時に資金調達を外部に求めていく。でも、あれができる人というのはなかなか少ないのではないか。
村上 敬亮:特にその説明の仕方が、三豊の浦島ヴィレッジの場合は上手で。先週末も大学の仕事の関係で行っていたんですけど、みんな驚かれたんじゃないですかね。浦島ヴィレッジというのは2つ意味があって、1つは人の家業に出資するなんてことほとんど経験したことのない地元の人が、新しい事業に自分の金を500万出したと。これを経験してもらって、浦島ヴィレッジという1棟建ての宿泊施設を回す中で、お土産特産品や建物の建材などで実は回収できちゃった。「出資ってそういうこと」というのを勉強してもらうのが1つ。
村上 敬亮:その上で回り始めたので、不動産だけファンドを作って売っちゃったんですよ。建てるのに2億かかっているんですけど、不動産売却時に3億以上で買い取っている。そうすると当時出資した人はちゃんと「出口」というものを勉強できる。じゃあその3億は何で支えるかというと、実は100万単位の個人投資家の金で支えていて、しかもそのかなりの部分が地元の人なんです。今度は個人が100万出す。それをどう説明しているか。
村上 敬亮:金融商品としてはそのファンドは2%程度の利回りしかなくて、「国債買ったほうがいいんじゃないか」くらいの勢いなんですけど、年に1回タダで泊まれるんですよ、1泊。夏場だと1泊16万くらいするので、100万出して16万の宿がタダ、プラス2%リターン。もう16%以上のリターンがある金融商品でございますと。古田秘馬さんたちはこう説明するんです。「じいちゃんじいちゃん、あなたが郵便局に預けている100万円をこっちに預け替えれば、年に1回お孫さんたちが来た時に泊める宿がタダになるよ」って。
堀 潤:わかりやすいですね。
村上 敬亮:そうすると「おお、孫が来る瞬間が一番楽しみな時間だし、毎回うちに泊めたら大変だし、タダで泊めてもらえて、郵便局の100万をこっちに移すだけでいいんだ」って説明するんです。金融のノウハウとしてはかなり初歩的なオフバランス・リースバックなんですけど、それをどう説明するかというところがすごく大事。
堀 潤:もう一つ、そういう投資話を外部の人たちがして、お金だけ集めて不具合が生じたら去っていくという不信感は各地にありますよね。でも古田秘馬さんはご自身の住まいもお墓まで三豊に移して、お金を出し合っているのが地域の方や地場産業となると、絶対に逃げられないファンドだということですよね。その覚悟が地域の方々とのエンゲージメントを強めるのかなと思います。
村上 敬亮:三豊の大変うまくいっていることの一つは、秘馬のプロデュース力はもちろんあるんですけど、次から次へとそれを支える次の世代が入り続けてきている。秘馬の世代がいて、今川宗一郎が地元の人と秘馬たちをつなぐと、その次に田島颯とか交通をやり、横山裕一がリファーミングをやり、児玉章平が教育事業をやり。今やそれを見ている次の世代が「僕、創業したい」と言って、月平均2つクラファン事案が立ち上がっている。人の流れが上手に組めていた。
村上 敬亮:これはやる(書く)とすれば次の本なんですけど、「ファイナンスマーケットの階層構造化」というテーマがありまして。つまり、文化の話とグローバルファイナンスって相性悪いんです、もともと。90年頃までのメインバンクの時代のほうが、銀行の出向者が役員で会社の内側にいて、会社が意思決定した時にはファイナンス判断が出ているので、あとは銀行が貸し付けたからマーケットから資金を調達する必要がなかった。ところが銀行側がバブルが弾けてそこまでコミットする力がなくなり、日本企業がやむを得ず直接金融に舵を切ってみたら、意外と金が集まるじゃんという話になって一気にシフトした。外国人株主比率が15%から33%まで一気に上がっていくわけですけど、その段階で何が起きたかというと、みんなシングルスタンダードのマーケットに吸い上げられていっちゃった。
村上 敬亮:コーポレートガバナンス、のれん代の処理は欧米と同じにしろ、社外取締役を置け、会計基準はこれであるべきだ。グローバルファイナンスは、現場まで行かなくても現場の機微とか文化とかを理解しなくてもちゃんとバリュエーションできるように設計するから。世界規模の中で、3と5、5と7のリターンがあれば、5が総取りし、7が総取りしちゃう。シングルマーケットで一つのスタンダードで評価できるマーケットにつながればつながるほど、リターンが高いと思われる半導体とかAIとかが総取りしちゃう。その端っこのほうでお金を吸い上げられてスカスカになっていくのが地方経済で。
村上 敬亮:例えば地方銀行は、借りた金の半分しか貸し返していない。残りの金で何をやっているかというと、ファイナンスマーケットで運用しているわけ。なんでそうなってんのと言ったら、金融庁が指導するんだもん。「ちゃんと儲けてないと利息払えんのか」って話になるから。結局、地域から借りた金は半分グローバルマーケットに吸い上げられている。大企業でも「地方との関係大事だ」と思っている担当者はたくさんいるけど、経営会議に上がると「なんでこの3000万を、放っておいても5%儲かる事業がある手前に、ゼロのこちらに回さなきゃいけないんだっけ?」って叩かれちゃうからお金が出てこない。
村上 敬亮:だけど、地域の良さ、浦島ヴィレッジの良さをグローバルに言葉だけでわかるように説明しろと言われたって無理なんです、来たことない人に。本当にそこに居込んだ人たちのコミュニティの中では、浦島ヴィレッジに毎年1回来たいという気持ちが湧くから、ファンドが16%の利回りに見える。単なる金融商品としての説明しか受けてない人には2%のリターンにしか見えない。そういう意味で、地域の良さは地域の良さだけを理解する人たちだけの限定的な金融市場を作って、例えば三豊の商店街が好きな人のDAOを作り、それをリバリューするのが好きな人たちのマーケットができ……というふうに、ファイナンスマーケットに階段を作ってあげないと、上に全部金取られておしまい。モビリティが面白いのは、これ不動産問題と裏表なんです。
(続きは後編へ)
概要(動画説明欄より)
補助金がなくなっても、地域の事業が自ら資金を調達し、次の挑戦へ投資できるようにするには何が必要なのか。
村上敬亮さんが示すのは、日々の売り上げや経費だけを見る「PL」から、不動産やブランド、地域に蓄積された価値を資産として捉える「BS」への転換です。
その先駆事例として登場するのが、香川県三豊市。古田秘馬さんや地域の事業者たちは、古民家や宿泊施設を再生するだけでなく、地域の人たちが他者の事業に出資し、その価値とリターンを実感できる仕組みをつくってきました。
単なる利回りでは魅力が伝わらない投資も、「郵便局に預けている100万円を地域に預け替えれば、孫が来たときに宿へ泊められる」と説明すれば、その人にとっての価値が見えてくる。
地域を理解し、応援したい人たちによる小さな金融市場をつくり、そこからより大きな資金市場へ階段をつなげていく「ご利益ファイナンス」とは何か。
さらに、空き家の活用と二次交通の関係、AIオンデマンド交通、能登半島地震で露呈した公助の限界まで、地域を自走させるために欠かせない仕組みを考えます。
全3回シリーズの第2回です。
【主な内容】
・地方創生を「PLからBSへ」転換する
・不動産やブランドを資金調達につなげる方法
・香川県三豊市「浦島ビレッジ」の実践
・地域の人が地域の事業へ出資する意味
・利回りだけでは測れない「ご利益ファイナンス」
・なぜ地域のお金がグローバル市場へ流出するのか
・空き家活用と地域交通の意外な関係
・AIオンデマンド交通が変える住民の暮らし
・能登半島地震で表面化した「公助の限界」
【出演】
村上敬亮
経済産業省、中小企業庁、内閣府などで地域経済活性化に携わり、デジタル庁統括官を歴任。
聞き手:堀潤
ジャーナリスト/8bitNews代表
【書籍】
村上敬亮著『新・地方創生論』
日経BP
https://bookplus.nikkei.com/atcl/catalog/26/08/20/02740/
#地方創生 #地域ファイナンス #三豊市 #空き家 #地域交通 #村上敬亮 #堀潤 #8bitNews
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