2015年にミュンヘン市内に建てられた、難民収容施設を見学してきた。
難民が施設に到着すると、家族単位で部屋が割り当てられ、単身者は男女に分かれて入居する。この施設には常時約100名が生活しており、数か月ごとに人員の入れ替わりはあるものの、概ね男性8割女性2割の比率である。入居時、部屋は綺麗に清掃され、清潔なリネン類と市民が寄付した衣類が用意されている。
難民のなかにはドイツ語はもちろん英語も話せない人達もいるため、ソーシャルワーカーとの意思疎通や施設についての説明は、身振り手振りで示したり、英語ができる難民が通訳をして手助けをしている。
●施設での1日
施設では、基本的に自由に過ごすことができる。
朝食8:30-10:00、昼食12:30-14:00、夕食17:30-19:00となっており、宗教に配慮した献立になっている。
ドイツ語の授業は週に2回2時間ずつ、語学講師によって行われている。授業への参加は、強制ではなく自由意志で良い。施設は人の出入りが激しく、授業に次々と新しい人がやってくるため内容は繰り替えしになり、なかなか前に進まない。そのため、授業に参加せず、施設を出てから通うドイツ語学校で一から学ぼうと考えている人たちも多い。
娯楽も用意されている。食堂にはテレビがあり、いつでも自由に見ることができる。また、チェスやバトミントン、卓球台もあり、人々の楽しみになっている。
また、女性向けに、ネイルやメイク講座が時折催されている。
外出は自由で門限はない。遅くなったり数日戻らないような場合には、職員に自身の携帯番号を残してから外出しなければならない。外出から戻ってきた際には、入口で手荷物のチェックを受ける。
施設にいる間、難民は、一人当たり月額152ユーロが現金で支給される。外出時の交通費は、50ユーロほどする一か月の定期を、難民は28ユーロで購入することができる。
●施設で起こるトラブル
部屋に鍵をかけてはいけないルールのため、現金や携帯電話などの盗難がたびたび発生する。貴重品は肌身離さず持つか、鍵のある自身のトランクにしまうなどして、各人で管理しなければならない。
大勢が会する食事時は、食事を巡る言い争いや、列に横入りするといった些細なことで、小競り合いが起きやすいという。
女性へのセクハラも深刻だ。執拗な視線にさらされたり、部屋を間違えたふりをして、女性の着替えや就寝中に部屋に入ってくる男性がいるという。特にシャワーの利用は注意が必要で、女性の使用時は、身内に男性がいる場合は、扉の前で待ってもらっている。鍵が付いているとはいえ油断は出来ず、のぞきや入出時に一緒に押し入られることを避けるためであるという。
●施設からの出発
施設に入居してから2~3ヵ月経つと、郊外の住宅へと移る。施設を出ると一人当たり月額350ユーロが支給され、あてがわれた住宅で難民数人と共同生活を送る。無料でドイツ語学校に通いながら、難民認定のビザが下りるのを待ち、自立した生活を送るための準備をする。ドイツ郊外の町は車での移動が不可欠のため、近隣にお店が無い場合は、近所の人が車で最寄りのスーパーマーケットまで連れて行ってくれることもあるという。