昨年4月に九州地方を襲った熊本地震。発生からまもなく1年を迎えるが、壊滅的な被害を抱えたまま立ち往生している地域があるのをご存知だろうか。
熊本県南阿蘇村の秘湯、地獄温泉。源泉を囲む山々が崩れ昨年大規模な土石流災害が発生。今も山肌から水が道路に染み出し、アスファルトの亀裂を広げながら流れ出ている。
「熊本で最も最悪な土地」、地元の被災者はこう嘆く。
地域のシンボルでもある温泉郷では、140年以上の歴史を守ってきた老舗旅館が土石流に飲み込まれた。旅館の経営者、河津誠、謙二、進さん3兄弟は自分たちの代で旅館を終わらせてはならないと復旧、復興に向け奮闘を続けている。
地域の人たちの雇用の場にもなってきた温泉郷。自分たちが復興しなくては、地域の復興にも繋がらないとこの1年奮闘してきたが、被害の深刻さに時折本音が深いため息とともに漏れる。
地震発生から1年、再び春を迎える。警戒するのは雨だ。土砂崩れを起こした山の斜面の復旧にはまだ時間がかかる。春の嵐、梅雨、そして台風シーズン。地元では今一度土石流災害が発生したら持ちこたえられないのではないかと不安もよぎる。一刻も早い、復旧作業が望まれる。
旅館の立て直しには数億円規模の新たな費用が必要だ。絶望的にも見える旅館の再建だが、3兄弟には希望がある。
乳白色の優しい手触りの名湯、雀の湯。土石流災害からの難をかろうじて逃れ、今も、コポコポと音を立て湯は湧き続ける。
来月4月には、南阿蘇村で大規模な復興イベントも企画。クラウドファンディングで資金集めを始め、なんとか人々の支援を取り付けた。
熊本市中心部では復興が進み地震の記憶も心のうちにしまわれつつある。「忘れられてはいけない。再び、再興し旅館のファンをよびもどす」兄弟たちの決意は硬い。
現場は今どうなっているのか、温泉地を訪ねた。
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