2017/01/12 地域
富山市議会議員に直撃!なぜ政治家はお金に汚いの?

12体の「ぽてもん」が現れたトヤマ市議会。実はこれ、去年の秋ごろに税金をちょろまかして12人もの政治家が辞めることになった富山市議会のお話です。「政治家」と聞くと多くの人が「金に汚い」というイメージを持つ、そんな状態にさらに勢いをつけたこの事件。本来かかっていなかった費用を、かかっていたと嘘をついて、請求したことが問題になりました。確かに、お母さんに1000円の電車賃をもらって、実際には500円しか使わなかったのに、「1000円丸々かかったよ!」なんて言って500円ちょろまかしたらメッチャ怒られますよね。特に政治家の場合は、このお金を税金からもらっています。世界でひとりだけの愛しいお母ちゃんがくれたお金…ではなく、そんなお母ちゃんが汗水流して働いて納めているお金が税金。そんな大切なお金がウソをついてポッケにいれられてしまうと、それは許せませんよね。ちなみに一昨年に「号泣会見」で有名になった●々村議員、おぼえていますか?彼もまたかかってもいないお金をかかったといってウソをついて余分なお金を自分のものにしていたことで、あの号泣会見に出なければならないハメになっちゃったんです。つまりですよ、富山市には●々村議員と同じことをした人が12人もいたわけです…。特に富山市の人にとってはなかなかパンチのあるできごとだったかもしれませんね。

さて、そんな富山の政治家や●々村議員にとどまらず、去年も沢山の「政治とお金」の問題はニュースになっていました。政治っていつもそんな話ばっかり、だからこそ政治っていつまで経っても信用できないんですよね。超わかります。
しかし、ビックリすることに政治家のみなさんは口をそろえてこの政治とお金の問題は「ある程度はしょうがない」と言うのです。ふざけてますね。お父ちゃんとお母ちゃんが頑張って働いたお金から支払われているのが税金なのに、蛇口をひねれば出てくるものくらいにしか思っていないのかもしれません。許せない、全員クビにしましょう、クビに!号泣会見、やってもらいましょう。ふざけてますもん!!!

…と、言いたいところなのですが少し政治家の実態を見てみると、ちょっと可哀そうなくらいにお金がないみたい。何でそんなにお金が必要なのでしょう。たしかに汚いイメージがある政治家ですが、実際に政治家から投票をしてくれたらお金を上げる…なんて話は聞いたことありませんよね。
もしかしたら、本当にもしかしたら政治家は集めたお金をとっても大切で必要なことにつかっているのかもしれません。知らないうちに批判するのはちょっとアンフェア。ということで今回は政治家が何にお金を使っているのかについておさらいした上で、「政治家とお金」に関して少し考えていきましょう。

■政治はどれくらいお金がかかるの?①―政治家のお給料編―

そもそも政治家(国会議員)は年間でおよそ2200万円のお給料と2200万円ほどの経費をもらっています。お給料とは、その名の通りその働きに対する報酬のこと。生活費や趣味のためにもガンガン使えます。経費とは、政治家として何かの仕事をするときにどうしてもかかってしまうお金のこと。コピー代や電話代、インターネット代に交通費まで、アルバイトのぼくですら会社持ちのこのご時世。政治家は自腹を切ってくださいというのもちょっと違いますよね。どうしてもかかってしまうものはしょうがないから税金で出してあげましょう、という理論なのです。昔イギリスで選挙によって政治家を選ぶことが主流となったころ、政治家にはお給料が支払われなかったため、働かなくても生きていけるお金持ちの貴族だけが政治家になれる状況が続いていました。しかし、貴族出身の政治家しかいない社会では庶民が困ります。庶民向けの政治をするためにも、庶民から政治家になれるように、政治家に給料を、なおかつ政治にかかるお金をある程度税金で負担する仕組みをつくったのです。

加えて、政治家は複数名の秘書を雇ってチームをつくって仕事をします。さすがに一人で事務的な書類作成から広報活動、立法活動や政治家だけでなく有権者とのコミュニケーションをこなすことはどんなスーパーマンでも物理的に不可能です。そこで、3人の秘書のお給料は税金から出してもらえることになっています。

▼議員歳費(国会議員のお給料)に関する法律はこちらから
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S22/S22HO080.html
▼歳費に関してもう少し詳しく知りたい方はコチラなどから
http://blogos.com/article/85562/
http://magazine.voicenote.jp/20154074/

■政治はどれくらいお金がかかるの?②―政治家の支出編―

さて、気になるのはそんな大量のお金を政治家はどこに使っているか。年間4400万円ももらい、秘書さんの給料まで支払われていて(なおかつ事務所も国会議事堂の目の前にあるカッチョエエ建物に用意されています)、それでもお金がないというなんてどんな金銭感覚をしていr…、おっと、また悪口が。もとい、どこにお金を使っているのでしょうか。
実はこの答え、諸説はありますが基本的には人件費にかかっているそう。例えばサラリーマンの平均年収は420万円(平成27年、国税庁)とされています。政治家は国会議事堂前の事務所に加えて、自分が選挙をされる地域にも事務所を構えていることがほとんどですので、そこでのスタッフ人件費や家賃をこの平均年収を使って計算してみましょう。
420万円×地元に3人だとして1260万円。ここに家賃が付き10万円だとして1380万円。加えてスタッフの社会保険料や交通費その他を加味すると…おっと、経費の「2200万円」がもう底を尽きてしまいそうです。仮に政治家がサラリーマンと同じ年収420万円を元手に生活するとして1年間に残るお金はおよそ1800万円。仮に4年間政治家を続けた場合7,200万円が残りますね。
よし、ではその7,200万円の貯金をもってしておよそ4年に1度の選挙に挑むとしましょう。まずは立候補のために300万円(参議院議員ならば600万円)、取り敢えずかかります(このお金は一定の人数が投票してくれれば返ってきます)。次に、選挙があるから応援してください、と有権者にハガキを送りましょう。今どきハガキが来ても…なんて思う若いあなた、ごめんなさい。眼中にあるのは投票に行ってくれる高齢者の皆様。電子メールよりもハガキの方が伝わるのです。では、このハガキを25万人に送りましょう。代替選挙で勝つためには10万票は必要なのです。ハガキを送っても見てくれない人もいるのでちょっと余分に送ってみましょうか。52円×20万=およそ1000万円…。他にも特設の事務所を借り、ポスターをつくって印刷し、選挙カーを借り、ウグイス嬢を雇い……。一体いくらかかるのでしょうか。
そして実際、スタッフ数は4~5人であったりすることはザラにあります。政治家が有権者に対して、よりきめ細やかな対応をするために…もしくは働く環境をホワイトにするために…などいろいろな考えをもってスタッフを増やすとそれだけでお金がかなりかかるようです。
この現状に対して、政治家が率先してお金をかけない選挙をしていけば良いじゃないかという意見もあります。しかし、先ほどもお話したように選挙に行くのはほとんどがご高齢の方々ばかり。「A候補はやっていたけど、B候補はやっていなかった。だから私は真摯な対応をしてくれたAに投票するわ」なんて言われた日には政治家本人はたまったもんじゃあないでしょう。自分だけが負ける確率の高い戦い方をしたい政治家など、どこにもいないのです。少しでも票になりそうな動きを進んで辞めるには相当な勇気が必要でしょう。

▼国税庁データ
https://www.nta.go.jp/kohyo/tokei/kokuzeicho/minkan2015/pdf/001.pdf

■あなたはどう思う?
さて、以上を踏まえた上で皆さんは、政治にお金がかかっている現状をどう思いますか?ここまで出てきた意見を整理してみましょう。

①政治にお金がかかるのは仕方がない

先程少しふれたように、元々政治家が給料をもらったり、経費を税金から払ってもらったりできるようになったのは貴族でなくても政治家になれるようにするためです。できるだけたくさんの意見を政治の場に反映させるためには、政治にかかるお金を税金で負担してあげることは大切。という考え方。皆さんはどう思いますか?
実は必要なお金を税金で賄うようになった大きな理由がもうひとつあります。それは、ワイロが広がることを防ぐことです。かつて日本では会社やいろんな団体からたんまりお金をもらった政治家が、その会社や団体が有利になる法律を作る…といった「利益誘導型」のワイロ政治がはびこっていました。政治家はそこで得た莫大なお金を、先ほどつらつらと挙げた政治活動費用に使っていたのです。しかし、そんな政治がみんなのため、国民全体の幸せのためにいいはずがありません。日本では政治家がたくさんのお金をもらうことを禁止し、代わりに必要なお金を税金で負担してあげることにしたのです。

②経費だろうとお金をかけるべきではない

こちらも少し触れましたが、経費だろうと何だろうとこんなにも沢山のお金を政治にかけていること自体がおかしいという考え方もあります。そもそも政治家がお金をかけている多くの部分は人件費です。この人件費は、有権者へのきめ細かいサービス…なんていえば聞こえがいいですが、実際は次の選挙のための―いわゆる政治家の就職活動のためのスタッフ。事務を行い、地元の声を拾い上げる仕事ならば10人も20人ものスタッフを雇う必要はないかもしれませんね。

③もっと政治にはお金を使うべきだ。

一方ではこんな意見もあるはずです。もっと政治にはお金を使うべきだ、と。しばしば僕らは「政治家が何をしているかよくわからない」「もっと何をしているか分かりやすくちゃんと伝えてほしい」と言うことがあるかもしれません。
実は政治家は「無料でできる」広報活動は結構必死にやっています(およそ7割の政治家が発信のためにSNSを利用しているそうです)。にもかかわらず、全然僕らって政治のことよくわかんないですよね。多分、JRのスキーのCMくらいドーンとやってくれないと、僕らの目にはつかないんでしょう。でも、知ってました?渋谷駅の大きな看板広告。あれ、1週間掲載するのに2億円かかります。山手線のラッピングは2000万円です。多分僕らが満足するレベルで政治家に発信させようとすると、それはそれは膨大なお金がさらにかかることでしょう。
だからこそ政治家はもっとお金を集められるようにして、国民を巻き込んだ広報や演出も含めた政治活動を行うべきだという考え方をするのがこの意見。実際トランプ次期アメリカ大統領はエンターテイメント要素をふんだんに用いて選挙を制しましたが、政治の側から国民に歩み寄ってくることが圧倒的に少ないということはしばしば批判されいますよね。

■答えはないけど考えて何かしらの結論を出すこと。
上記3点の意見を今回は紹介しましたが、みなさんはどんな意見を持つでしょうか。どの意見に共感し・どの意見に違和感を覚えたでしょうか。それは十人十色、みーんなバラバラかもしれません。多分そこに「正解」はないのでしょう。
でも、政治なんてそんなもんばっかりです。誰かにとってイイことをすると、誰かにとって悪いことになっちゃうことがザラにあります。だけど、だからこそ、問題の本質とできるだけ色んな立場の意見を知ったうえで、何かしらの答えを出していくことが大切なのではないでしょうか。
富山市で出会った「ぽてもん」たちは、そんなことを僕らにそれとなく教えてくれているような。そんな気がしました。これ、レベルアップの成果ですかね。

Fin.

なお、全ての会派にお話を伺いました。

プロデュース :吉川敦也
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