皆さんは『いいたて雪っ娘かぼちゃ』をご存知ですか?
いいたて雪っ娘かぼちゃはもともと飯舘村出身である育種者の菅野元一先生が
夏場でも比較的涼しい飯舘村でも育つようにと30年かけて品種改良を続けて出来た
特別なかぼちゃです。飯舘村のブランド野菜として広めていこうと育ての親の
渡邊とみ子さんと共に試行錯誤しながら大事に育てられ、ようやく完成したその
かぼちゃは、皮が白くて中の実がぎっしりと詰まったホクホクと甘く加工もしやすい
とっても美味しいかぼちゃです。
ようやく品種登録の手続きをして、これからという矢先に東日本大震災に伴う
原発事故が起こり、飯舘村の皆さんと共にいいたて雪っ娘かぼちゃもまた避難を
余儀なくされました。あの大変な混乱の中、どうしてもこの種を繋ぎたいと種と
共に避難をし、避難先ではとみ子さんがなんとか荒れた休耕田を借りて5年間
ずっと守り続けて来ました。
避難先では思うような畑や土には出会えなかったですが、それでも一生懸命育て
そこから芽が出た時に『こういうのを見ると負けちゃいられないって思うよね』
と笑顔で話すとみ子さんはあきらめない心をずっと持ち続けて来たのです。
昨年、福島市にある「あぶくま茶屋」で行われたいいたて雪っ娘かぼちゃの
収穫祭では、そんなとみ子さん達の想いと共に一緒に種を繋げたいと集まった
人達がいました。現在ではゆっくりとですが岩手県や長野県など日本各地に
いいたて雪っ娘かぼちゃが繋がれています。
また、今年の春にはベラルーシからチェルノブイリ原発事故の避難者でもある
方が来られていて、ベラルーシでもかぼちゃを食べるのですが、日の当たらない
ベラルーシでは甘いかぼちゃが出来ないといいたて雪っ娘のかぼちゃの種を頂いて
嬉しそうにされていました。
そして私もまたとみ子さんの想いを直接聞いて、少しでも繋げるお手伝いが出来たらと
地元の神奈川県三浦郡葉山町でとみ子さんと同じく女性一人で畑を始められた
イキ農園の大石美果さんにお願いをして、いいたて雪っ娘を試験的に育ててもらう事にしました。
初めてのかぼちゃの栽培という事もあり、実際に収穫できたのは半分もいかなかったですが、
それでも夏には無事に収穫が出来、その一部はちょうど夏から始まった横須賀の子ども食堂
(Yokosuka子ども食堂)さんに寄付をさせて頂き、みんなで夏野菜のカレーを作りました。
参加された子ども達やお母さん、お父さん達にもその想いが少しでも繋がって
くれていたらいいなと思います。
今年も10月29日にいいたて雪っ娘の収穫祭があぶくま茶屋で行われました。
一方で来年の春には一部の地域を除いて飯舘村の避難指示の解除がされる予定です。
あれから既に5年半が経っています。新しい場所で新しい暮らしをしている人達も
沢山います。とみ子さんもまたその一人です。除染作業が進んでも人が住まなく
なった家は傷み、簡単に戻れるというものでもありません。
その時、とみ子さん達は一体どんな判断をするのでしょうか。。
それはまた別の機会にお伝え出来たらと思いますが、今日はハロウィン。
都会では仮装をした人達で溢れ、たくさんのイベントと共にゴミも増え、
賑わいの日になっていますが、本来は秋の収穫を祝う宗教的なイベントです。
来年はいつもとは少し違ったかぼちゃを食べる日にしてみてはいかがでしょうか?