「表向きは『貿易協定』ですが、実質は企業による世界統治です。」600人の企業エリートによって草案がつくられていた秘密交渉TPP。リークされた内容を分析していたアメリカの市民団体パブリック・シティズンのローリー・ワラックははっきりとそう語った。2012年だった。
グローバル化が進み企業活動の幅が世界規模になった今、貧富の差も大幅に拡大した。北大西洋条約機構(NAFTA)によって様々な規制が緩和され、自由を与えられたアメリカの企業は、メキシコの農業を破壊し、仕事を失ったメキシコの人々は移民となってアメリカに渡り、生活の為にアメリカで、アメリカ人よりも低い賃金で働くようになった。そしてアメリカ人の仕事を「奪った。」
政府と企業の癒着状態の悪化によって、超富裕層にかけられる税率は減り、アメリカ社会は中間層のいない、1%の超富裕層と残りの99%という数字に表現されるように、2極化した社会へと姿を変えた。
どんなに富を蓄えてもなお利益追及し続ける多国籍企業が力を強め、地球の状態や人々の日常生活のあり方に大きな影響を与えている今、市民が選挙や政治によって行使する「主権」、つまり自分たちの国や地域のことを自分たちの独立した意思で決定して社会を形づくっていく権利は、どのような状態にあるのだろうか。
*
最近、「TPP秘密交渉の正体」に続くTPPについての新しい本を書き上げ、日本で5年以上に渡りTPP反対運動を続けている元農林水産大臣で弁護士、TPP交渉差止・違憲訴訟の呼びかけ人の1人である山田正彦さんは、自身のFacebookページに以下のように書いた。
「ようやく、TPPの新しい本を書き上げた。ほっとしたのだろうか。何か全身から力が抜けて行くような気がする。TPPのことがちっとも参議院選挙の争点にならない。メディアは選挙のあることをわざと避けようとしている。米国では大統領選挙、下院議員選挙の最大の争点になっているのに。TPPでは皆が政府に騙されている。今回、秘密交渉だった協定、6300頁の内容が英文で明らかにされて分析チームで必死で取り組んだ。政府はいまだに1800頁しか翻訳しないで、大事なところは隠している。内容の協定文が明らかになるにつれて、私は慄然とした。これ程、国の成り立ちの構造が根底から変わることを国民はは全く知らされていない。本を書く、矢も盾もたまらなくなって始めたのが3月、無謀な挑戦だった。頭を抱えた。深夜ポツリポツリとパソコンを叩きながら、なんどか止めようと思ったことか。何せ、協定文は法律条文なので、回りくどくどわざと分かりにくいようになっているのでどう解釈したらいいのか分からない。内田聖子さん等学者、弁護士、専門家の分析チームと朝から議論、TPPの研究者、スイスのサーニヤ、米国のトーマスカトウに日本にきて頂いた。なんとか、今、私達が知り得ている6300頁の問題点は書き上げた気がする。是非、読んで欲しい。苫米地英人さんが、オーナーのサイゾー出版早ければ7月中旬には発行される。参議院選挙に間に合わせたかった。電子書籍は間に合うかも。」
イギリスが国民投票によってEU離脱となった後、6月30日に山田さんは「主権」についてこう書いた。
「先程ニュース23を見て異議あり。トランプも、英国のEU離脱を主導した前ロンドン市長ジョンソンも移民を拒否する右翼政権だど酷評。そうではない。英国の消費税は食料品、電気、ガス、水道代金は0%だったのに、貧富の格差が拡大した今、EUに残れば国民の代表である国会の決議では元に戻せない。国家の大事な税制ですら、各国の同意がなければできない、国の主権がなくなるから英国民は離脱を選らんだのだ。TPPが批准されたら日本も他人事ではない。日本の政府、自治体が財政危機だからと消費税、固定資産税を上げたらISD条項米国の企業から訴えられることになる。(TPP協定、投資の章9章第7条、間接収用に該当する)現に最低賃金を上げただけで、エジプトは訴えられた。日本のメディアは本当のことを報道しない。大企業だけが限りなく儲かるグローバリズムに英国民も、米国民も反対の意思を選挙で表明し始めたのだ。トランプもウォール街から1円ももらっていない。表面だけでなく、彼の政策の根源を調べて欲しい。私達も参議院選挙でTPPを推進する自公議員を落選させなければならない。私達こそが主権者であり、日本の歴史、伝統、国の主権を子々孫々の為に守らなければならない。」
*
6月30日、山田さんに、政治に対して持っているビジョンを聞くと、「いわゆる新自由主義とか、グローバリゼーションとか、多国籍企業とかの利益とか云々じゃなくて、そういう金を持っているところから思いきって税金を取るべきだと思ってるんだ。かつて累進課税で7割くらいまで税金取ってたけど、今は一般のサラリーマンと金持ちから取る税金がかわらなくなってきてるじゃない。30%とか40%とか、せいぜい56%とかね。それから資産税を不動産だけじゃなくて預貯金にもかけるべきだな。資産税。だから、やっぱり福祉国家、民主社会的な考え方。そういうできるだけ富の分配を平等にするという形の、民主社会的なものがいいんじゃないかな、と思っている。公共の福祉、空気とか水とか環境とか農業とか医療とかってのは、商売じゃないんだって考えなのかな。俺も考え方わりとサンダースと一緒か?トーマス・カトウさんが山田さんの考え方はエリザベス・ウォーレンとバーニー・サンダースとほぼ一緒だな、と言っていたな。」と、ヨーロッパ帰りの山田さんは答えた。アメリカ合衆国とEUの間で進んでいる交渉、TTIP関連のことで山田さんはヨーロッパへ渡っていたのだった。
今回の参院選で山田さんが応援している候補者達の中には三宅洋平も含まれている。2人はTPP問題などの絡みで以前から親交を持っている。山田さんが彼を支持する理由はこうだった。
「洋平は(山本)太郎君と似たとこがあるんだけど、自分の考えがあるじゃないか。人の意見に左右されないとこがあるよ。それと、なんていうか、あいつは自分の感性で自分の言葉で話すことができる。自分の言葉でなんでも消化して話すことをできる。政治家としては珍しい才能を持ってる。人に訴える力を持ってる。類い稀な才能だ。それと、わりに大きく捉えることができるよな。時間と空間をかなり大きく捉えることができる。自分の言葉でしゃべることができる。是非彼に通って欲しい」と三宅さんの感性や言語能力の高さについて話した。
*
東京選挙区から無所属で立候補している三宅洋平さんは、3年前の参院選と同じように「選挙フェス」を毎日開き、街頭には大勢の支持者が集まっている。7月2日のハチ公前広場での「選挙フェス」では、広場に入りきらない人々が訪れ、横断歩道の反対側にも聴衆がいる状態だった。1人の候補者がこれほどの人を街頭に集めるのは、「事件」と言ってもいいのではないだろうか。選挙戦2日目、6月23日に高円寺で撮影されYouTubeにアップされた演説の動画の再生回数は7月4日の時点で40万回近くになっている。
無所属で、組織票も持たず、いくら街頭に人を集め人の心を動かしてもマスメディアに大きく取り上げられることのない三宅洋平の当落は、おそらく個々の支持者が自分がメディアとなり、残り6日で東京の友人・知人に声をかけて具体的に集票し、どれだけ票を伸ばせるかにかかっている。アウトサイダー三宅洋平と彼の支持者達は、一心一体となって、出来合いではない、自分たちの新しい民主主義を耕そうとしている。
※動画は7月2日、ハチ公前広場で行われた三宅洋平選挙フェスの最後の1時間のフィールドレコーディング。ラジオ感覚でどうぞ。