2016/04/25 文化
GWに「デジタルいわし」!人工知能(AI)を積んだ「デジタルいわし」の実態と魅力と、そして未来とは?

2016年4月。横浜・八景島シーパラダイスでは、「デジタルいわし」が展示されています。一匹一匹が人工知能(AI)を積んでいる「デジタルいわし」とは、どのようなものなのでしょうか。また、どこが開発したのでしょうか?

 

大型画面の前に、タッチパネルが設置されています。このタッチパネルには、「いわしキング」が表示されており、いわしキングをタッチして操作することで、15,000匹の「デジタルいわし」の群れを自在に操ることが出来ます。

 

いわしの群れが姿を変える度に大きな水音が響き渡り、親子連れの関心も高いこの展示には、「デジタルいわしを操る」というシンプルさからは想像も出来ないほど、高い技術力が秘められています。その一端に迫りました。

 

この「デジタルいわし」は、元々、2013年にオムロン株式会社(以下、オムロン)が、中国でのプライベート展示会に出展するために作られました。オムロンが当時目指していた技術課題のうち、「全体協調(進化した機械がたくさん集まって最適解を導きながら達成する)」をいわしに見出したのです。

 

開発当初、技術者達は簡単に考えていたと言います。人工知能(AI)を積んだ沢山のいわしを普通に動かせば群れが出来るのではないかと。しかし、自分で判断して動くことは出来るけれども、お互いに個性が強すぎ、群れとしては成り立たなかったのです。そこで、三つの大きなルールを人工知能に与えました。

 

●お互いにぶつからない

●並んで動く

●お互いに気にしながら動く

 

これで、渋谷の交差点のように、大勢の人が自分の目的を達成しながらも周囲に迷惑はかけないというような、社会性が出来たのです。

 

人工知能(AI)は、昨今話題です。ツイッターで、よくない学習をしてしまい、停止させられた「Tay(タイ)」。LINEので軽妙なやりとりが人気の「りんな」。人間が打つ囲碁を初めて破った「アルファ碁」。これらと「デジタルいわし」の共通点は、「時々の状況を読み取って、最適解を自分たちで見出し、自分で判断して、行動する」ということです。

 

デジタルいわしがこれらの人工知能(AI)と違う点は、たった1台のパソコンで動いている、ということです。上記に上げた人工知能(AI)は、数百台のサーバーを使って動かしていますが、デジタルいわしはパソコン1台。しかもゲーム用のものです。ゲーム用である理由は、15,000匹のいわしや周辺を描画するための性能が高いためで、人工知能(AI)そのものを動かすには、ごく普通のノートパソコンで十分なのだとか。

 

これは、オムロンが目指している方向で、センシング技術(センサーを使用して情報を計測・数値化する技術)に強みを持とう、としているところだということです。人工知能(AI)やビッグデータというと、クラウドやサーバーという大きなイメージになりますが、そうではなく、小さな環境で、リッチなものを使わずしていろいろなことを出来るようにと、技術者は心がけているとのことです。

 

デジタルいわしはそんなオムロンのコンセプトを「形」にしたものになります。デジタルいわしの技術をそのままいろいろなことに応用するのは難しくても、その考え方自体は、自動車の自動運転、人間や車の位置を知らせ合う交差点のシステム、電力のスマードグリッドにも応用できる未来を見据えているということになります。

 

一見すると子どもが喜ぶ遊びの場としての「デジタルいわし」。しかしその中には、人工知能(AI)を利用した未来が秘められています。

 

横浜・八景島シーパラダイスにおける「デジタルいわし」の展示は、2016年3月26日(土)から5月8日(日)まで。このゴールデンウィークに、その小さな身体に未来を秘めた「デジタルいわし」に、会いに行ってみてはいかがでしょうか。

 

横浜・八景島シーパラダイス「デジタルいわし」のページ

http://www.seaparadise.co.jp/aquaresorts/event/omuron_iwashi.html

 

オムロン株式会社「デジタルいわし」のページ

http://www.omron.co.jp/about/story/detail27.html

プロデュース :西村晴子
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