福島県相馬市。東日本大震災の被災地でもある当地で、心の復興を図り、生きる力を引き出す無償の音楽教育を受ける子ども達の成長を追いました。
取材者が子ども達と出会ったのは3年前。弦楽器の指導を受ける子ども達の演奏はまだまだ荒削りでした。それから月日が経ち、コーラスや吹奏楽の子ども達も加わった「相馬子どもオーケストラ」の演奏は、みるみるうちに上達。また、楽屋での表情も非常に明るいものがあります。
そんな子ども達に音楽教育を施しているのは、一般社団法人エル・システマジャパン。東日本大震災をきっかけに、4年前、設立されました。代表理事の菊川穣(きくがわ・ゆたか)氏は、「そうは言ってもまだ5年、心の問題はまだあるのではないか」と語ります。日頃から子ども達に接している当事者の実感でしょう。
今回の動画は、2016年2月13日・14日に行われた「第2回エル・システマ子ども音楽祭2016 in 相馬」を軸に、3年前からの演奏や表情を交え、構成されております。この音楽祭のあと、子ども達は、ドイツに渡りました。その活動がエル・システマジャパンの設立のきっかけのひとつとなった、ベルリン・フィルハーモニーと共演するためです。3月11日。東日本大震災が起きて5年が過ぎたその日に、子ども達は大役を果たしました。
震災で、大切な人を失った子どももいます。しかし、この音楽教育によってかけがえない仲間を得た、と語る子どもがいます。震災の時はとても怖い思いをした、でも今は充実していると。それは心の復興が徐々に進んでいる証でしょう。
未来を担う子ども達。音楽を通じ、心の復興と成長と、大切な仲間を得た子ども達がどんな未来を築いていくのか、今後も見守ってゆきたいものです。