東日本太平洋沿岸を襲った津波。
その時、地元の漁師達は何を思い、どう行動したのか。
震災から3年が経とうとする今、彼らが直面している現実とはーー
そうした震災の記憶を紙芝居にして伝えている夫妻がいる。
福島県新地町で旅館「朝日館」を経営していた村上哲夫さん・美保子さんご夫妻。
演題は「命のつぎに大切なもの」
漁師さんにとって命のつぎに大切なもの、それは船だ。
しかし、船を守りきった後に残ったものは悲しい現実だった。
東日本大震災時の実話を組み合わせた作話で、海の男たちの海の上での心情を描いた貴重な話。
村上夫妻は、福島県相馬郡新地町で130年続く旅館を経営していた。しかしあの時の津波で創業130年の旅館も何もかもを失った。
仮設住宅に移り、新生活を始めた村上夫妻。時間があの時のまま止まっている人もいる――しかし村上夫妻の時間は動き始めた。たくさんの人の手に助けられた、ならばお返しを。そんな思いが夫妻を動かしている。
現在、村上夫妻の奥さまは、紙芝居の読み手としてあちらこちらを回っている。旦那さまは、裏方は務めるものの、実は読み手ではない。しかし今回の紙芝居では、自ら読み手をかってでた。
初めての読み手。どうなることかと思われたが、本人の気持ちが紙芝居の内容に入り込み、周りからはすすり泣きも聞こえるほどの名演となった。
紙芝居でなければ、あまりにも生々しすぎて目を逸らしたくなるようなつらい現状である。しかしこれが、今回の震災の現実なのだ。