イラク戦争開戦の前に仏外務相として国連安全保障理事会を舞台に反戦の論陣を張って世界各国から拍手喝采を浴びたドミニク=ドヴィルパン元首相が昨年9月26日に仏国営放送の番組で語った内容がパリ同時多発テロ事件以降にネットで拡散している。そのコメントはイスラム国の空爆を批判して
「テロとの戦いは決して勝利できるものではない。失敗が運命づけられている。なぜならば、テロリズムというのは、不可視かつ変わりやすく日和見主義で、突然変異する手法を採るからだ」
「テロリストの勢力に密着している勢力を切り離す・分離するためには平和的手段と智性の力を持ちうるようにする必要がある」
「アフガニスタン以降、この種の対テロ戦争について私たちが知っていることは、これらが失敗に終わったということだ」
と述べたものだ。フランスでは、イスラム国・空爆の結果が同時多発テロの引き金になったという理由から、これらの発言が共感を呼んでいる。
ドヴィルパン元首相はさらに事件の翌々日11月15日、各種メディアの共同インタビューに応え、
「『我々は戦時下・戦争状態にある』『我々は戦争をしなければならない』という考えは(私たちを過てる方向に導く)陥穽である。『我々は戦時下にある』という思考を私は採らない。なぜならば、それはテロリストのゲームに私は乗りたくないからだ。(イラク戦争後の)この十年、あらゆる事態が悪化するのをとどめないし、我々は一度たりとも、この種の戦争で勝利していない。この見地に立てば、テロとの戦争というものは、決して良き解決策ではない」
と指摘した。その上で、
「シリアにおいて、政治的合意ができる状況をつくるために、フランスは調停役をかってでるべきであり、対等・平衡の立場を採るべきだ」
「政治的プロセスにおいてバッシャール・アル=アサドが去るべきだとしても、まずは、アサド政権と対話する必要があろう」
と述べ、アサド政権との対話こそがイスラム国を封じる手段だと語った。
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