2015/11/16 芸術
「神様なんかくそくらえ」ジョシュア・サフディ監督インタビュー②”Heaven Knows What” Joshua Safdie interview (2)

part2

 

翔子:メディア作品をつくるときのモラルに関する決定判断について、この映画をつくるときにモラルに関して頭を悩ますという部分はありましたか?私は東京で数人のホームレスの人々を知っていますが、彼らについて書くときはとても気をつけなければいけないことがあります。誰について書いているかで、変わってくる。

 

ジョシュア:この映画を撮るとなったときには、この映画に出てくる人、もしくはモデルとなる人のことを僕はよく知っていた。友達みたいにね。だから僕にとってはバリアーが無かった。友達だったから、全てがオープンだった。モラルには2つのタイプがあって、1つは個人的なモラル、もう1つは社会的なモラルだ。社会が君に押し付けるモラルは君に制限を与え、つまらないアートを蔓延させる。僕はいつも、より自由でより制限のないものを見ることに関心がある。個人的なモラルというのは自由の一部となりうるかもしれないけど…社会的なモラルはね…。この質問にはどうもうまく答えられないな。モラルの問題については考えてなかったからね。僕はアリエルと共同で、彼女に対して限りなく真実に近い形で物語を語ろうとしていた。誰も彼女のような人々のことを気にかけないからね。ほんとだよ。アメリカのボックスオフィスの数字を見たらわかるよ。誰も彼らの人生を見たくないんだ。彼らが「透明人間」と考慮されるのには理由があるんだ。

翔子:アメリカのボックスオフィスの数字?

 

ジョシュア:そう、アメリカでのね。全然X-Menみたいなヒットじゃないってこと。アメリカ人はこのフィルムに注目しない。あまりにもすぐ側にある身近なものだからね。興味深いのは、この映画が世界中を回っている間に人々はより映画に興味を持つようになる、そして時間が経つとこの映画の重要性というものが増してくる。映画を撮っている最中には気づかなかったことだけど、今ここ日本に来てそういうことに後から僕は気づいているんだ。この映画は路上でホームレス生活をしていた女の子についての映画だ。そしてこの映画は彼女の個人の歴史を再現している。それも彼女の友人達とね。その世界というのはとても小さいんだけど、僕らはその小さい物語を拡大した。僕らがしたことには何かしらすごくパワフルなところがあると思うんだ。そして時間が経つにつれてより多くの人が興味を持つ。君はとてもラッキーだよ。これが朝一のインタビューだからね。日が暮れることには僕はもうインタビューでヘトヘトになってるからね。

 

翔子:今日はいくつのインタビューがあるんですか?

 

ジョシュア:確か今日は…10?…ほとんど10個に近いインタビューだね。

 

翔子:東京にはいつまで滞在予定ですか?

 

ジョシュア:水曜日までしかいないよ。だけど…うん、とにかく色々しゃべるにはいい時間帯だ。

 

翔子:コーヒー片手に…

 

ジョシュア:ウォッカだよ。

 

翔子:いいですね。

 

ジョシュア:バレないようにコーヒーカップに入れてと頼んだんだ。ウォッカを飲んでるんだけどコーヒーを飲んでる人に見えるようにね。

 

翔子:昨晩この映画の監督に会うのにはどうしたら「適切」かなと考えていました。笑 映画はとてもリアリスティックだと思いました。私はカリフォルニア州のサンディエゴに住んでいましたが、人のしゃべりかたとか、悪態のつき方とか…私は日本に帰国して約3年ですが、日本の人々がとても「やさしい」ことにとても苛立ちました。ちょっと変な言い方ですが、この映画の中で人々がとても路上でアグレッシブであるのは私にとってはとても心地よいものでした。

 

ジョシュア:わかるよ。

 

翔子:とてもリアリスティックで、音もそう。自分がそこにいるみたいな感じでした。

 

ジョシュア:それが僕らの意図でもあった。

 

翔子:この映画が東京国際映画祭でグランプリを獲ったことについてはどう感じていますか?

 

ジョシュア:もちろんすごく嬉しいよ。アワードをもらって嬉しくない人なんているかな。競争そのものを信じない人々もいるけど、僕は彼らとは違う。特に日本でこの映画をリリースするというのは、僕らにとって1つのゴールだったんだ。僕らはこの映画は日本で1番理解されるような気がしていたんだ。だからこのアワードを受賞して、東京にやってきて、なんていうか、色々と腑に落ちる感じがしたよ。適切というかね。

翔子:東京や日本を探索する時間はありましたか?

 

ジョシュア:うん。初めて日本に来た時は京都に行ったよ。東京よりも京都で長い時間を過ごした。たくさんの神社を見たり、京都にいる外国人が特に興味深かった。東京に関しては、前回来た時は、たくさんの、なんていうか、文化?を見た。奇妙な場所とか、偏向した場所とか。ニカノ…なんだっけ、ニカノ…ナカノ…そうだ、ごめんごめん、ナカノ・ブロードウェイに行ったよ。2日前にね。様々なタイプの文化に対して、宗教的と言っていいくらい、強く取り憑かれた人たちが1つのビルの中に集めたにコレクションがあって、ああいうタイプの文化はアメリカでは少なくなっている傾向にあって、なかなか見られないから素晴らしかったし、新鮮な気分になったね。人の創造行為に対しての尊敬がある。

 

翔子:残り5分みたいです。

 

ジョシュア:了解。

 

翔子:カリフォルニア、ニューヨーク、ストリート、ハイエンドな場所、様々文化が社会の中にあって、あなたはこの映画ではストリートを選んだ。だけどこれからはもっとTVに関わったりとか…

 

ジョシュア:もしかしたらね。

 

翔子:多分。あなたは別の場所にリーチすることについてどんな風に感じていますか?

 

ジョシュア:アメリカで?それとも世界で?

 

翔子:世界で。というより違った人々…もしかしたらあなたたちにとって、何かをつくる為の強いドライブがあれば、問題にはならないのかもしれないけれど、だけど人によっては、誰がよりお金持ちで、この人はこういう考え方をする人で…

 

ジョシュア:いや、僕は年を取るにつれて、そんな風じゃなくなっている。そういうことは問題じゃない。なんていうか…形容詞で誰かを描写すること、例えば、この男はお金持ちでシカゴの高級マンションの50階に住んでいる、とか。昔はそういうことに興味を抱けなかったかれど、そういうことに対して今僕は興味を持てる。今の僕にとっての1番大きな挑戦というのは、今の僕がとてもインスパイアされ得ないような「普通」の人の人生について、いつか深い興味を持てるようになることだ。全ての人の人生は、それぞれ違った風に興味深いはずだからね。そして僕は誰についても興味深いストーリーを語ることができると信じているんだ。だけど僕はニューヨークの外で映画を撮り始めたいとも考えている。なんていったって、僕はニューヨークでしか映画を撮っていないからね。僕がこれからつくる予定の2つの映画というのもニューヨークで制作するんだ。

 

翔子:ニューヨークは好きです。

 

ジョシュア:ニューヨークっていう街はいろんなものを提供してくれる街だからね。国際都市だよ。うん、国際都市みたいなとこだ。

 

翔子:みたいな?

 

ジョシュア:うん。

 

翔子:ブルックリンって最近どうですか?

 

ジョシュア:わかんないな。ブルックリンには全然行かないんだ。僕はクイーンズとマンハッタンで育ったから、ブルックリンとはあまり関係性を持たなかった。今のブルックリンはとても…「消費者社会的」な場所だ。実際に消費者社会の中での存在物になっている。それはそれで興味深いしぼくはかまわない。所詮ニューヨークだ。ただ次にどこをどんな風にヒップにするかを模索している。そして今のブルックリンはとてもヒップだ。それは家賃の高騰に反映されているのも見える。今ブルックリンに住むのはとてもお金がかかることになった。

 

翔子:あなたに「政治的に適切な」質問をしようと思います。日本は2020年にオリンピックを開催します。私の知っている路上生活をしている人の中にはオリンピックの開催に反対の人もいます。オリンピックは再開発やジェントリフィケーションの波をもたらし、路上生活をしている人たちは公園から排除されたり、コミュニティーが壊されたりします。都市がホームレスの人を排除したりすることなどについてどう思いますか?

 

ジョシュア:僕は変化というのは常にいいものとして捉えている。ニューヨークでもたくさんの人がそういうことにはがっかりしている。それは確かに悲しいことだ。だけどそれは新しい場所がやってくるということにすぎない。僕は都市の再開発についてはノスタルジックではないんだ。トランスフォーマー(映画配給会社)は僕にとってくれたホテルはオリンピックの時に建てられたものだ。日本で前回にあったオリンピックのときにね。確か1964だったかな。素晴らしい建物だと思うよ。美しくて、まるで未来を見ているみたいだ。そしてもっと未来的な建物が建てられていく。ただまた違うエリアが再開発されるというだけの話だ。僕は日本については、自然災害についてもっと心配している。

 

翔子:地震とか津波とか?

 

ジョシュア:もちろん。前回の震災はとても恐ろしかった。僕は日本に住んでいる友達と話していた。彼女は動画を見せてくれたりしたんだけど、まるで映画を見ているみたいだった。とても怖かったよ。日本列島っていう島はとてもユニークで、なんていったって島だ。それもあって怖かった。だから僕は日本に関しては自然災害についてより懸念している。日本だけじゃなくて、地球全体の気候変動について懸念してる。災害の規模や威力や被害がよりドラマチックなレベルに上がっていることについてね。

 

翔子:ありがとうございました。

 

ジョシュア:うん、ありがとう。

 

翔子:東北に行ったら、たくさんの興味深い話をする人に出会うと思います。

 

ジョシュア:そう?

 

翔子:彼らの記憶はとても興味深いです。彼らの中にはあの災害のときに逃げ出さなかった人もいます。漁師さんや農家さんとか、彼らの心は土地と独特の繋がり方をしていて…

 

ジョシュア:もちろんそうだろうね。

 

翔子:それは私が彼らの言葉を聞くまであまり考えなかったことでした。特に原発事故があったので…

 

ジョシュア:そうだね福島は…

 

翔子:今日はほんとにありがとうございました。

 

ジョシュア:ありがとう。(Tシャツを見せながら)「生きる伝説」。それ4Kカメラ?すごく小さいね。ソニーね。ビデオカメラはソニーが1番だよ。この映画もソニーのカメラで撮ったよ。

 

 

-おわり END-

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『神様なんかくそくらえ』

12月26日(土)新宿シネマカリテほか全国順次公開

 

監督・脚本・編集:ジョシュア・サフディ、ベニー・サフディ

原案:アリエル・ホームズ

出演:アリエル・ホームズ、ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ、バディ・デュレス、ロン・ブラウンスタインa.k.a. Necro

音楽:冨田勲、アリエル・ピンク、タンジェリン・ドリーム、ヘッドハンターズ

2014年/アメリカ、フランス/英語/97分/カラー/日本語字幕:石田泰子/R15

原題:Heaven Knows What

配給・宣伝:トランスフォーマー

 

公式HP:http://heaven-knows-what.com/

Twitter:@HeavenKnows_JP

Facebook:facebook.com/HeavenKnowsWhat.JP

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プロデュース :蜂谷翔子
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