原発事故と地元の漁師達はどのように向かい合っているのか。
自ら語り部となり、発信を続けている男性がいる。
「もっちゃん」こと、相馬の漁師、菊地基文さん(37歳)。
菊地さんは東日本大震災の津波で仕事をなくした。
菊地さんは底引き網漁の漁師さん。津波では、船は流されなかったものの船底に穴が空いた。放射能による海洋汚染で、魚は獲れなくなった。その代わりに人々の思い出…瓦礫を引き上げる日々となった。
くさくさしていた彼が再び漁の再開に向けて奮起したのには理由がある。
それは、古くから地元に伝わる食材「どんこ」。
「どんこ」とは、相馬の食卓に日常的に上がる食材。魚である。
正式名称は、「エゾイソアイナメ」。アイナメと名が付くが、タラの仲間である。
身もだが、肝が大変美味しい。
専門に獲られる魚というよりは、混獲によって獲られ、地元で消費される。
今、東北と広島の協同で「東北まち物語紙芝居化100本プロジェクト」が進んでいる。
この一環で、菊地さんたちのプロジェクト「どんこボール」も紙芝居になった。
その紙芝居を通じて、今までどうしてきたか、これからどうするのか、菊地さん達は
周囲の人達に伝える活動も始めている。
昨年9月に相馬市で行われた「第1回ふくしまアンダーグラウンドフェスティバル」。復興を支援するNPOや相馬市役所の職員らによって開催されたこのイベントは、震災や原発事故によって将来失われてしまうのではと危惧される地元の文化や名産品を掘り起こそうと開かれた。
相馬の漁、水産経済、そしてなにより食文化を失う訳にはいかないーー。
菊地さん達の紙芝居は、紙芝居部屋に集まった100名、イベント全体に集まった750名に届いた。
※イベントでは紙芝居のほか、どんこボールの試食会も開かれた。
原発事故と向き合い、自分たちの海を取り戻そうと奮起する菊地さん達の活動を追った。