アメリカでは環太平洋の国々12カ国を含む貿易条約TPPの見通しが大分悪くなった。TPPを推進しているオバマ大統領に対して、上院はTPPをディベートなしでYESかNOかで投票するファスト・トラック「貿易促進権限」TPA(Trade-Promotion Authority)を可決したけれど、共和党の多くの議員は、TPPとセットになっている国際貿易によって職を失った労働者にトレーニングや教育の場を与えて救済する「貿易調整支援」TAA(Trade Adjustment Assistance)という法案に反対、またはオバマ大統領により大きな権限を与えることを拒否する共和党議員もいる。そして与党の民主党の多くの議員は、TPPをアメリカ国内で通すのに必要な法案TPAとTAAの両方に反対している。
2016年の大統領選のキャンペーンも始まり、民主党大統領候補のヒラリー・クリントンは、かつてはTPPを「貿易のゴールドスタンダーと」と言っていたが、大統領選が始まってから初めて行ったニューハンプシャーでの最初の会見で「私にとってTPPの問題はその内容がわからないということです。内容がわかったらコメントもすることができる」とより慎重なコメント。同じく民主党の大統領候補のバーニー・サンダースは、TPPにはより批判的な態度をとっている。
一方日本では、市民の間にTPPの反対運動が起こっている。TPP交渉差止・違憲訴訟が立ち上がり、現在3942人の会員と、1285人の原告が集まっている。違憲訴訟の会は、生存権(憲法25条)、幸福追求権(憲法13条)、司法主権(憲法76条1項)、知る権利(憲法21条)などが、TPPに含まれる内容によって侵害されるとして訴訟を起こしている。
5月26日には、違憲訴訟の会が共催のNO TPPフェス・キャンドルデモが行われた。代々木公園で行われたイベントでは、TPPが導入された後の世界を描いた寸劇や、農家の人たちによる売店、バンドによる演奏、TPPによって食の安全や日本の農政や医療システムや、知ることのできる情報、そして日本の国家としての主権のあり方などがどのように変わるのかなど、登壇者が様々な角度からTPPについて話した。
参議院議員の山本太郎さんは、自民党が政権を握ることになった2012年の衆院選で、自民党が使用していた「ウソつかない。TPP断固反対。ブレない。-日本を耕す自民党」と書かれた選挙用ポスターを持参し、現在もTPP交渉を進めようと動いている安倍政権を批判し、こんなに堂々と公約を破られて、有権者はなめられている、TPPのことをもっと多くの人に知ってもらえるようにしないといけないと呼びかけた。
参照記事
http://www.npr.org/2015/04/29/403094326/japans-abe-pushes-the-pacific-trade-deal-onto-center-stage
http://www.npr.org/sections/itsallpolitics/2015/06/15/414725367/clinton-walks-delicate-line-on-trade-economy-in-first-press-conference
http://www.npr.org/sections/itsallpolitics/2015/06/16/414931742/why-obama-has-his-work-cut-out-for-him-on-getting-trade-votes
http://www.economist.com/news/leaders/21654612-row-over-pacific-trade-deal-harming-americas-economic-and-political-interests-tpp-rip