2015/05/08 公式動画
【ネパール大地震】13日間の喪。黙祷。NGOたちの現場。失われたばかりのものとネパールの新しい日常

4月25日の地震から13日が経った5月7日、ネパールでは喪が明け、人々は地震の犠牲者たちに黙祷を捧げました。ネパールは今地震によって引き起こされた新しくて生々しい目に見える傷と、目には見えない傷を抱えています。地震の被害は地域によって異なり、地域の中でも被害には差があります。カトマンズ市内では交通量が増え始め、より多くの店がオープンし始め、日常の風景が戻り始めましたが、この新しい日常の中にはまだ新しく失われたものがたくさん含まれています。

 

 

私は5月3日から311後に新設されたピースボートの災害ボランティアチーム(以下PBV)のサイモン・ロジャースとロビン・ルイスのネパール支援活動に同行し、彼らの活動を通してネパールの現地の状況や支援活動の現場を取材しています。

 

 

今現地では、ネパール政府、各国政府、国連、NGO、民間団体など、たくさんの違った得意分野や資金力や能力や経験やスタイルをもった団体や人々が支援活動をしています。今回のPBVの支援のフォーカスは食料とシェルターです。現地に着いてまずするのは情報収集で、カトマンズ市内にあるUN HouseやWorld Food Programの拠点に行き、クラスターミーティングと呼ばれるミーティングに参加します。ミーティングの目的は支援のコーディネーションで、ネパール政府関係者、国連スタッフ、NGOメンバーなどが集まり、様々な地域で実施した支援プロジェクトの結果報告や問題点、今後の課題などの情報共有をし、それを日々繰り返して情報をアップデートし、支援方針などを決めていきます。コーディネーションを重ねるかさねることで、支援先がかぶってしまうことを避けたり、支援の難しい地域や行っていない地域の把握をし、その情報も活用しながらそれぞれの団体が支援プロジェクトを立てます。しかし当然現地に行かないとわからない情報も多くあります。

 

 

PBVは単独では動かずに、シャプラニールや、ネパールの地元でソーシャルワークをしているSWI(Social Work Institute)と協力しながら支援プロジェクトを実行に移しています。ミーティングとコーディネーションを重ね、慎重に支援先を選んで支援を実行します。

 

 

支援をする際に彼らは、支援するコミュニティーのニーズやコミュニティーの事情を把握することに時間をかけます。支援を実行する前に実際にコミュニティーに足を運び、被害の状況を目で見て、地元の人々と話をします。地震の後にどんな困難があったのか、何を食べているのか、どこで寝ているのか、今までどんな風に生活をしていたのか、これからどうやって生活を立て直していくのか、今までどんな支援があったのか、もしくは無かったのか。このようなことは実際に行ってみないとわからない情報です。そして被害の状況や大きさ、コミュニティーの大きさやニーズによっては支援を諦めなければいけない場合もあります。コミュニティーの中で不平等が生まれて確執が生まれないように支援をしなければ、支援がネガティブな結果を生んでしまうこともあるからです。支援が届きにくいのは、やはり車がアクセスできなくなっている地域です。

 

 

PBVはシャプラニールとSWIと共に、最初の支援先の候補として、ヌワコット郡(カトマンズから北にある地域)の3つのコミュニティーを選び、現地入りした後にニーズのアセスメントをし、地元のソーシャルワーカーやリーダーと具体的な支援の段取りをコーディネートをし、ヌワコットで支援物資を購入し、それを運ぶトラックと運転手を雇い、支援先に向かいました。そして配布時に混乱が起きないように、あらかじめ支援対象者に配られたチケットと物資を交換し、支援を受け取った人はサインをします。

 

 

支援には緊急支援、中期的な支援、そして長期的な支援があり、今は食料、ターポリンを使った簡易シェルター、医療、レスキューなどの緊急支援の段階です。これからよりしっかりとしたトタンなどを使った仮設住宅や、学校の復興やトラウマのケアなど、中期的な支援活動へと移行していきます。長期的な支援は文字通り長期的で、支援を持続するには人や物やお金やスキルが必要で、地元の人にスキルトランスファーをしたりすることも持続的な支援には大切になります。

 

 

今現在の状況としては、ターポリンがとても手に入りにくくなっていて、PBVは最初の支援でターポリンを配布する予定でしたが手に入らなかったため、第一弾の支援は100世帯を対象にした食料のみになりました。物資の調達はネパールでできないものの多くは隣国のインドや中国で行われます。食料の調達はそこまで難しくなく、ヌワコットの地元のお店から購入しました。1つの支援物資のパッケージには1世帯5人家族と考えて、5日分の食料が入っています。ネパールは今はまだ乾期ですが、雨がたくさん降るモンスーンの季節が近づいていて、雨期は9月まで続くため、ターポリンなどのシェルターをつくる材料が確保できないと被災した人々は雨に濡れるか、もしくは崩れる危険性のある建物の中で眠らなければならなくなるかもしれないので、シェルターの需要が高いです。

 

 

災害支援の際に、ボランティアの力というのはとても大きな力を発揮します。PBVやシャプラニールと協力関係にある、地元で子どもたちのエンパワーメント活動をしてきたCWIN(Child Workers In Nepal Concerned Center)には、たくさんの18歳から25歳くらいの若いボランティアが集まっていて、毎日150人ほどのボランティアが働いています。PBVの次のプロジェクトの1つとしては、やる気があるけれど災害ボランティアの経験がまだ浅いボランティアのたくさんいるCWINで、ボランティアの力を上手に活かすことのできるボランティアリーダーの育成をし、より生産性の高いボランティアチームを組織することです。

 

 

5月7日の昼、PBVとシャプラニールのスタッフはこれからの動きをコーディネートするために、CWINの活動拠点にいました。山積みになっている支援物資はノルウェーの支援団体FORUTからの寄付によって購入したもので、地元のRDTAは実動部隊として協力しています。天気は晴天で、大道りからは絶え間ないクラクションの音が聞こえ、町のところどころで赤や紫色の花が咲いています。13日間の喪が明けて、人々は動いていた口や物資を運んでいた手を休めて、地震で命を落とした人々のために2分間の黙祷を捧げました。

 

 

ピースボート災害ボランティアセンター(http://pbv.or.jp)

シャプラニール(http://www.shaplaneer.org)

CWIN: Child Workers In Nepal Concerned Center (http://www.cwin.org.np)

SWI: Social Work Institute (http://www.swi-nepal.org)

プロデュース :蜂谷翔子
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