2015/02/21 社会
【都市と貧困】ルポルタージュ②2月22日の東京マラソンと野宿者の荷物と居場所

1月28日、新宿区の都庁周辺に住む野宿者たちの荷物に張り紙がされた。

 

 

「2/13〜工事、2/22東京マラソン 警告 この物件の所有者は至急撤去して下さい。2月12日午前迄に撤去しない場合は不用な物として処分します 平成27年1月28日 東京都第三建設事務所 警視庁新宿警察署」

 

 

2月5日に再び張り紙がされた。

 

 

「2/22 東京マラソン 警告 この物件の所有者は至急撤去して下さい。2月19日迄に撤去しない場合は不用な物として処分します 平成27年2月5日 東京都第三建設事務所 警視庁新宿警察署」

 

 

彼らはまだ動いていない。

 

 

2月14日に「のじれん」が共同炊事の際に行う寄り合いに参加した都庁付近で野宿をしている男性の報告によると、約30名の野宿者の荷物に、東京マラソンがあるので荷物を移動するようにとの警告の文書が貼られた。去年の東京マラソンの際には、新宿区が新宿中央公園に野宿者の人々の荷物の仮置き場を設置して一時避難させた。しかし今年は「テロ対策」で仮置き場の設置はしない。マラソン実施に伴う撤去は毎年恒例だが、今年は臨時の避難場所がない為、東京マラソンが終わった後にもしかしたら元々住んでいた場所に戻れないかもしれないと男性は言った。新しい場所に大人数で移住すると、他の野宿者との間に軋轢が生まれることもあるので、慣れ親しんだ顔ぶれでできるだけ一定の場所で暮らしたい、と彼は言う。

 

 

 

 

「のじれん」側の代表者が東京都第三建設事務所の担当の山村さんから話を聞くと、荷物の撤去は警告書の期日の翌日の午後に行うとのこと。その日までの撤去が望ましいが、どうしても撤去日に路上に残っていて、また明らかに荷物と判断できるもの(ブルーシートでまとめられているなど)に関しては、処分せずに、こちらで一時的に保管をする。

 

 

この措置は日常的な道路法ではなく、道路交通法の題6条に基づき、その緊急措置として行う。保管した荷物に関しては、後日第三建設事務所に連絡があれば警察官の立ち会いのもと返却。保管場所は「近場」。保管期間は最大3ヶ月程度。荷物の撤去は新宿中央公園一帯のみで、それ以外の場所に置かれた、または移動された荷物に関しては撤去は行わない。東京マラソン後に高架下に戻れないように排除の措置をすることは特に検討していない。

 

 

仮置き場を設けないのは「警視庁からテロ対策で荷物は一切置かないという要請を受けた。これに伴い東京マラソン財団からの支持で今年は設置を見送った」とのこと。

 

 

 

 

2月14日は「のじれん」にとって共同炊事(野宿者と支援者が一緒にごはんをつくること)の拠点である渋谷区美竹公園が仮区庁舎建設の為に完全封鎖されてから2度目の共同炊事だった。通行人の目にもよくつくみやしたこうえんの階段下で共同炊事は行われた。先週は使用可能だった公園の階段下付近の水道の元栓が閉まっていたので、水はみやしたこうえんの上のからバケツリレー式で運ぶ。配食数115。場所が一目につく場所に変わったからか、配食数はいつもよりも30食ほど少なかったが、おかわりが多かったので全てキレイに胃袋の中に収まる。白米。ごぼう。人参。ジャガイモ。鶏肉。大根。トマト。キムチ。味付けはラーメンの元など。七味唐辛子、チリソースやごま油はお好みで。

 

 

この日は月に1度の医療相談があり、道にパイプ椅子と折りたたみの机を出して、松山毅さんが希望者の健康チェックをした。松山さんは約15年間「のじれん」の活動に関わり医療相談をしている。松山さんによると、特殊な症状というのは少ない。多いのは高血圧。それから元々糖尿病を煩っている人。アルコール中毒の人も時々いる。ごく稀だが野宿者特有なのは皮膚の疾患で、ダニやシラミの被害が出ることがある。これもまた稀なケースだが、結核が流行ることもある。結核は咳でうつる。それから急性疾患、俗に言う風邪。ウィルス疾患やインフルエンザなど、薬が無くては治らないわけではないもの。この日に医療相談を受けたのは4名。1名が区役所へ診療に行くとのこと。

 

 

 

 

来週のメニューは豚汁の予定。

 

 

 

 

公園の夜間施錠に反対する運動「渋谷区神宮通公園に夜10時30分集合」は、2月14日で115日目を迎えた。夜間施錠に反対する人々が公園の閉園時間である10時30分に公園に集まり、プロテストアートを作製し毎晩展示している。頭の禿げた年齢60歳の「キャン太郎」というキャラクターはこの運動によって生まれた賜物。毎朝清掃員がアートを一掃するので、毎晩アーティスト達は新しいアートをつくっている。新陳代謝の激しいパブリックアートプロジェクト。以前から渋谷区とは、みやしたこうえんの「ナイキ化」に反対する運動など、公園のあり方や機能を巡って闘争があった。

プロデュース :蜂谷翔子
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