2014/12/14 政治
【総選挙2014】多様が普通な新宿二丁目の人々の金曜日と普通が普通の世の中を相手にゲイを公言して出馬した石川大我さんの闘い

「面白い人がいてオイラも応援してるんだ!」

 

 

「誰?」

 

 

「石川大我さん」

 

 

「わかった」

 

 

ということで、沖縄から戻った私は衆院選に立候補している石川大我さん(40歳・ゲイ)の取材をすることにした。

 

 

12月12日、金曜日、午後4時過ぎ、石川さんは白い車体にブルーの文字で「社民党」と書かれた選挙カーに乗って荻窪駅にやってきた。セクシュアルマイノリティー、LGBTのシンボルのレインボーの旗をはためかせる選挙カーには、メッセージの書きこまれたシールや、(おそらくは大我という名前にかけてつくった)タイガーのポップなキャラクターと「多様性は力」と英語で書かれたポスターが貼ってあった。

 

 

「社会からいないものとされていた私たちLGBTが今世界で活躍をしています。世界で『私たちはここにいる』と言っています。そうした力を得ながら、私自身も日本で初めてゲイであることをオープンにして当選をする、衆議院議員、目指して行きたいと思っています。全国のみなさん、2票目の投票用紙には『社民党』と書いてください」と石川さんは寒空の下演説を始めた。

 

 

「この社会はいろんな人達で成り立っています。5.2%、1クラスに1人のセクシュアルマイノリティーがいる。『佐藤』さん『鈴木』さん『高橋』さん『田中』さん、この4つの名字を持っている人と同じくらいの数の人達がLGBTだと言われています。LGBTの人権を人権問題として扱わなくてよいと言っているのは自民党だけです。自民党の憲法の改正案の中に『愛国心』や『家族愛』を組み込むそうですが、『家族愛』の中に、私たち同性愛者のカップルは入っているのでしょうか?おそらく入っていないと思います」

 

 

荻窪駅北口での演説が終わった後、ゲイであることをカミングアウトするのは石川さんにとってどんな経験だったのか聞くと

 

 

自分が自由になるというか楽になるという思いがあります。自分はこういったかたちで広くオープンにしてますが、カミングアウトをしてそれを受け入れてくれる人がいると、本当に自分が楽になるし今まで重いものを背負っていたということがわかるものだと思います。少しずつでもいいと思います。自分が何者であるかというのを伝えることによって社会は少しずつ変わっていくと思います。僕がどんなに全国駆けずり回ってもなかなか社会を変えることはできませんが、5.2%、クラスに1人いると言われているその当事者の皆さんが少しずつカミングアウトをすることによってこの社会は変えられると思っています、と全国の『佐藤』さんや『鈴木』さんや『高橋』さんや『田中』さんほどもいるというLGBTの当事者の人々に向けて石川さんは気持ちを語った。

 

 

 

 

石川さんの演説をツイキャスで生中継していた丸井さん(女性・コピーライター)に、石川さんの選挙運動に対する街での反応を聞くと、杉並はいい、新宿もよかったという。多様性を認めるという空気がある。だけど石川さんの存在はまだ浸透していないし、情報を持っている人が少ないので、LGBTのことや石川さんのことを世間に浸透させるには時間とお金がかかる、と彼女は言った。

 

 

 

 

選挙カーが走り去った後、荻窪駅から出てきたスーツ姿の若いサラリーマン(男性)は、LGBTと公言して選挙に出るということに対しては特に何も思わない、投票先は党で選ぶ人の方が多いんじゃないかと思うと言った。

 

 

 

 

投票先は人よりも政党で選ぶという渡辺さん(50代・女性)はLGBTとして立候補することに「賛成はいたしかねますっていうか、要するに自分のことではないから勝手にやればっていう。反対はしないけど、例えばその人にLGBTだから入れるかってなるとちょっと別かな」と陽気に言った。

 

 

いろんな法案がありながらも、野党ってそういうもんかもしれないけど、それを引き摺り下ろしたり違うところから切り崩そうとしてる。自民党はやり方も強行だし確かに安倍もいいとは思わないけど、違うことで足の引っ張り合いをしすぎるから、どんどん法案を通して国の進むべき方向に進んでほしい、と彼女は政治について彼女が感じていることを言った。

 

 

どんな国になってほしい?

 

 

日本にはやっぱり安心安全の国になってほしい。今それが少し危なくなってきてる。それから、若い人にもっと海外や外に出てほしい。若い人が萎縮していると思うのよね、とどこか楽しそうな彼女は陽気に付け加えた。

 

 

 

 

駅のそばの広場で一休みしていた青木さん(66歳・男性)は、ゲイを公言して選挙に出ても別にかまわないんじゃない?人それぞれだしね、主義主張は。隠れて生きるよりはいい。すごいじゃない性同一性障害とかも、昔だったらちょっと世間体を気にしたりしたけど、今は随分改善されているし。同性婚については、見た目だよね。こういっちゃ失礼だけど、不潔だったら嫌だし、清潔だったら美しいな、と思うじゃない。だから生きている上で人間男女問わずそういう生き方をしっかりすれば世間からも認知されるんじゃないの?

 

 

「愛って何でしょうか?」

 

 

愛っていうのはね、出会いなんだよね。人生一度なんだよね。だから出会いを大事に、運命の人に出会ったら、楽しく生きてかなくちゃね、と渋い役者のような落ち着いたしゃべり方をする青木さんは言った。

 

 

 

 

青木さんのいた広場には、他に3人の若者が寒空の下立っていた。誰かを待っているらしい。

 

 

一ノ瀬さん(26歳・男性)は、後輩にゲイもいるし、差別みたいな目で僕は見ないです。同性婚もいいと思う。金城さん(21歳・女性)は、今の時代は偏見をもってる人は少ない方だと思う。人間としての男女の間に子供が生まれるわけだから、パートナーの間に子供ができないという理由で同性愛は嫌がる人もいるんじゃないか、同性婚が許可されたら批判や反発に合うかもしれないと思う。本田さん(20歳・女性)は、当人達が幸せならできたらいいと思う、と3人とも若者らしく、そんなの常識というか今どき別に普通だろう、という感じであっさりと答えた。

 

 

 

 

私はゲイの友人と、ノイズ音楽とかが好きな男友達を誘って、石川大我さんがトークショーをやるという新宿二丁目のあるバーへ向かった。小さなバーには朝日新聞の政治記者も来ていた。ちなみに記者という職業も世の中ではいつもマイノリティーであり、知っての通り世間という圧倒的多数から色んな理由でバッシングされる。

 

 

その朝日新聞に務めて6年目の政治記者(28歳・男性)は、以前にLGBTの取材をしたことはない。私が知らないだけかもしれないけれど、これは新しい動きだと思う、いい動きだと思う、どんどんやればいい。国内で受け入れる雰囲気がどのくらいあるのかはわからないと言った。

 

 

朝日新聞に関しては、今年は誤報の問題で朝日は世の中から批判を受けて社長も辞めたという事件があり、批判がもろにきました。我々としてはできるだけ正しい情報をと心がけるしかできないのです、と彼は言った。

 

 

なんで「自民300議席!」とか新聞の見出しってあんなに揃うんですか?ちょっと不自然に見えるんですが、あれって揃えてるんですか?と聞いてみると

 

 

あれは揃えているわけではなく、選挙中に各社一斉に世論調査をするのだけれど、同じような結果がでるので結果として同じような見出しになってしまうんです、と彼は言った。

 

 

新聞なんてほんとに、実際世の中のごく1部のことしか伝えられていないんだろうと思うんですけども、今おっしゃったように何かこう実際色んな人に会ったりどっか行ったりするそのきっかけみたいなもの、こういうことが世の中にあるんだっていうのを知ってもらうきっかけになったらいいですよね、と彼は言った。

 

 

私たちはメディア人としてしばし雑談した。

 

 

 

 

石川大我さんは、そのバーでのイベントでは、オーディエンスもLGBTコミュニティーの人々が相手なので、街頭での演説よりも、より具体的な話をした。ゲイである石川大我という人間が、社民党という小さな政党からでて議員になることによって、LGBTコミュニティーの直面している問題に関して何ができるのかということについて、石川さんは話した。

 

 

社民党、衆議院に2議席、参議院に3議席、合わせて5議席という非常に小さな政党になってしまったので、大きな法律をつくることや発案することはできない。しかし「ほにゃららを実現する議員連盟」という議員連盟を、志や想いのある超党派の議員を集めてつくり、みんなで勉強会や話し合いをして法律をつくることができる。僕が国会議員になれば、例えば「同性婚を実現する議員連盟」を国政の場でつくる。そして自民党から共産党まで様々な議員に入ってもらい、勉強会を重ね、メンバーが各々の党で交渉し、自分の政党を説得するという作業を超党派の議員ですることができる。

 

 

法律をつくることだけが政治ではない、と石川さんは続け、法務省からの「嫌がらせ」によって以前生じた同性愛者にとっての不便を解消した過去の事例を紹介した。

 

 

日本人が外国で結婚するときは、同性愛者に限らず、日本国内で結婚する資格があることを証明する「婚姻要件具備証明書」というのを出す必要がある。海外の役人はわざわざ日本の役所に来て戸籍を調べるわけにもいかないので、日本から海外に結婚する資格があることを証明する証明書を持ってきてくださいと言われる場合がある。「婚姻要件具備証明書」は、今までだったら性別に関係なく、同性婚の相手方の日本人にも発行されていたが、法務省が相手方の「性別欄」というのを「婚姻要件具備証明書」の中につくって以来、男性である石川大我が、相手方の「性別欄」のところに「男性」と書くと、「婚姻要件具備証明書」が出ないようになった。海外で同性婚がしたくても、その国では同性婚を認めているのに、日本の法務省のつくった「性別欄」という「嫌がらせ」によって結婚ができないという状態が生じた。この不便を解消する為に、社民党の福島瑞穂さん、民主党の松浦大悟さん、薬害HIV訴訟の川田龍平さんなどと一緒に省庁交渉をして、「婚姻要件具備証明書」を変えることはできなかったが、「独身証明書」という新たな証明書をつくり、再び日本人が海外で同性婚ができるようになった。

 

 

このように細かいところで不具合を解消してゆくことが国会議員になって1議席あればできるし、1議席あれば、私たちLGBTがここにいるということを示すことができる。それが大きいことだと思っています、と石川さんは言葉を選びながら説明した。

 

 

 

 

質問タイムに移り、バーにいた細身で髪の長い女性が「頭の堅いおじさん達がいる間に日本は変わりますか?」と、いかにも頭の堅いおじさんには期待していないという感情を声の語尾ににじませながら質問した。

 

 

社民党の中にも保守派という人達もいるが、しゃべってみると理解がある人が多いというのが社民党の魅力です。頭の堅い人でも、身近にLGBTがいるということがわかったら変わる。党としては同性婚に反対のアメリカの共和党のチェイニーさんですら、自分の娘がレズビアンとわかり、同性愛者に対しての考えを変えた。身近にいることを示すことが大切。3時間しゃべってもわかってくれない人は放っておいて、15分話せばわかってくれる人を増やすことが大切、と石川さんは答えた。

 

 

 

 

台湾人だけれど国籍はオーストラリアの彼氏がいる日本人(21歳・ゲイ)は、ジントニックを飲みながら石川さんや、彼をサポートするLGBTの人達の話を聞いていた。

 

 

彼は、社民党のことはよく知らないけど、石川さんを応援するLGBTの人達が、恥ずかしそうにうつむき気味に話してたから、パートナーシップ法や同性婚ができるようになっても、法律だけでは周りからの差別を無くせないので、差別を無くすことも掲げないといけないんじゃないかと思う。パートナーと結婚したいと、石川さんを応援するレズビアンの人は言っていたけど、それに対して自信を持って話せる感じじゃなかったから、法が決まったとしても本人が自分に自信を持ってないと結局周りの差別も無くならないから、この問題は根深いんだなと石川さんの演説を聞いてても、同性愛者の人の演説を聞いてても感じた。

 

 

どうやったら自信がもてると思う?と聞くと

 

 

自信のあるないの差は、その人の所属している世界にもよる、と彼は言った。ファッションの世界とかアートの世界ではそもそも変わっている人というのが貴重であったり普通な世界なので、一般的に言ったらカミングアウトしやすい。逆に体育会系に属していると、普通でないことが気持ち悪がられることもあるので難しい。大企業ではカミングアウトしにくいけど、個人経営で働いてる人は比較的簡単かもしれない。カミングアウトできるかどうかというのは、その人の性格だけじゃなくて、その人のバックグラウンドや環境にもよる。

 

 

彼はLGBTのことを説明するのに「自分が同性愛者であることをカミングアウトするのを世間が望んでいなかった」という水泳のイアン・ソープの発言を引用した。世間がスターがLGBTだということを望んでいない。一般の人は自分の周りにはいないと思っているから、その常識自体が間違っている。テレビに出てる人もカミングアウトしずらい。ネットでもゴシップとして扱われるから、一回有名になるとカミングアウトしにくいんじゃないかと思う。今の世間には自分の周りにはLGBTはいないという無意識が蔓延しているので、カミングアウトをするといちいちゼロから説明しないといけないので、カミングアウトはとても面倒な作業なのだと思うと彼は言う。中でも親にカミングアウトするハードルは高い。特に自分が一人っ子で家を継ぐような立場だと、親を「裏切れない」という気持ちから絶対にカミングアウトできないと思う人もいて、ゲイを隠して女の人と一般的な結婚する人もすごく多いと思う、と彼は言った。若い彼は、目も声も真っすぐで、どこか正義感に満ちているような感じがした。

 

 

 

 

私は石川さんのイベントのあったバーから出た。とても寒い夜だったけれど、金曜日の夜の新宿二丁目では、たくさんの人達が楽しそうにお酒を飲んでいた。私の友人は2杯目のイエガーのショットをしていた。寒かったので、私もショットをした。グラスを持った人々がバーの外の歩道にも溢れ出ていた。

 

 

茶色いドリンクを片手に会話を楽しんでいたオーストラリアのダニエルさん(24歳・ゲイ)とリースさん(24歳・ゲイ)は、付き合い始めてから18ヶ月だと、自分たちの関係について話してくれた。石川さんの立候補について意見を聞くと、日本は正しい方向に進んでいると思うと言った。フレンドリーで幸せそうな旅行者2人は、日本は保守的だけど同時に進歩主義な国でもある、国会でゲイを公言している議員がいい仕事をすることは大切なことだ、オーストラリアにはLGBTの政治家がいるので、日本も同じ方向に進んでいることは嬉しい。日本は保守的なので大変かもしれないけどね、と言った。

 

 

たくさんのゲイバーが新宿二丁目に集中しているのは興味深い。オーストラリアだと、ゲイバーも普通のバーやパブと混じっていて、こんな風に集中はしているってことはないんだ。

 

 

オーストラリアでゲイであるということに関しては、世間からほぼ受け入れられていると感じる。まだ改善するべきことはあるけれどね。結婚の権利はまだ平等でないし、時代を逆行するような政治的場面もある。だけどオーストラリアの社会に住んでいて、ゲイだから怖いと思うことはない。ゲイのクラブにも普通のクラブにも行ける。

 

 

東京はクリーンでフレンドリーな感じがする。地下鉄のシステムが整っている。オーストラリアには地下鉄は無いんだ。日本人は少し保守的だと聞いているので、ゲイとしては、少しだけ気をつけている。普段僕らは公共の場でも手をつないだりして愛情表現をするんだけど、東京ではしていない。だけど今のところ東京の人はみんなとても親切にしてくれる。

 

 

ゲイの人権問題に関しては、トップダウンで行わなければいけないと思う。まずは政府がセクシュアルマイノリティーに限らず、あらゆる人々を認めるというイニシアチブを出すべきだ。ほとんどの国では、まだ政府が全ての人の権利を認めるということを十分にできずにいる。

 

 

政治的な意見に関しては、大体においてダニエルさんが述べ、隣りでリースさんが見守り、ダニエルさんが話し終わった後に同意した。「彼はおしゃべりなんだよ」と、理路整然とした彼のスピーチに感心しながらも、少しちゃかすようにリースさんは言った。

 

 

 

 

「なぜ外国人にばかり質問するの?」と同じバーで飲んでいた、日本人の陽太さん(33歳・ゲイ・看護師)は、私に疑問を投げかけた。

 

 

僕個人としては同性愛の結婚が法律で認められなくてもいいと思っている、と彼は話した。同性愛でなくても結婚をするのはお互いがいいかどうかで、実際籍を入れなくてもある程度、事実婚関係であれば法的にも認められる権利も大分あるとなると、入籍できるかどうかはあんまり関係ないかなとは思う。今の日本で同性婚の為に頑張りますっていうのが選挙の第一公約っていうのは、「今の日本では」ずれてるかなと思います。このタイミングの選挙での第一で言うこととしてはずれてると思います、と彼は「今の日本では」というところを強調した。もっと福祉のこととか、高齢化社会や医療の問題が片付いてないのに、同性愛の権利がどうというのはまだまだ後かな、と彼は言った。

 

 

政治的に認められていなくても、同性愛者は存在するし、政治的に認められていなくても、愛し合うこと自体に支障はないということですか?と聞くと

 

 

そうです。政治的に認められなくても僕個人としては困っていない。お互いが良ければいいので、政治で認められなくても愛し合うことには支障がない。

 

 

この衆院選に関してはどう思いますか?と聞くと

 

 

今このタイミングで選挙だったのかな?わざわざ解散しないといけないレベルだったのかな?もうちょっとふんばってやるっていうのが責任だったんじゃないかなと思います。

 

 

どんな社会を望みますか?と聞くと

 

 

日本は格差社会になってきているから、昔みたいにほどほどに稼げるように戻ってほしいと思う、と彼は言った。

 

 

 

 

陽太さんと同じテーブルで、穏やかな顔つきでお酒を飲んでいたカナダ人のブライアンさん(57歳・ゲイ)は、東京に22年間住んでいる。東京の空気について聞くと、東京は保守的だ、と彼は短く言った。

 

 

その夜、私はあるバーのレズビアンのオーナーにずけずけとセクシュアル・マイノリティーについて質問をした後に、もっと勉強してこいとこっぴどく怒られ、取材方法などに関して厳重注意を受けていたので、セクシュアルマジョリティーとして、蜂谷さん(27歳・女性)は少しヤケ気味に彼に質問した。

 

 

「性的なマイノリティーでない私には、ゲイであるあなたがどんな風に感じているのか正直言ってわからないし、わかっているフリをしたくありません。ゲイのあなたから見ると、世界はどんな風に見えるんですか?」

 

 

私と彼は真っすぐお互いの目を見ながら話していた。

 

 

「私はあなたと同じように感じている。性別は問題じゃないんだ」

 

 

そのシンプルな回答を聞いた後、私は何か言いかけたが、それ以上何も質問する必要は無いということがすぐにわかった。

 

 

「私はあなたと同じように感じている」

 

 

私はお礼を言って、友人と二丁目にあるクラブへ向かった。エントランスの料金を払い、右手首の内側に透明なスタンプが押された。王冠のような柄がブラックライトに照らされて一瞬浮かび上がり、溶けるように消えた。

 

 

クラブではThe Bugglesの “Video Killed The Radio Star” のリミックスがかかっていて、多様が普通の金曜日の人々は幸せそうに踊っていた。普通が普通である世の中を相手どって、ゲイであることを公言して闘うことに決めた石川大我さんは、突然の解散で、時間が無い中転がるようにして始まった怒濤の選挙戦の追い込みをしていた。

 

 

今日、12月14日、日曜日は、20歳以上の日本人にとって衆議院選挙の投票日だ。私たちのシンプルで複雑な世界は、これからどんな世界になってゆくのだろうか。

プロデュース :蜂谷翔子
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