半年以上前になるが、「生きている図書館」というものを主催しているかたのお手伝いとして映像を撮影しに赴いた。(「生きている図書館」の詳しいことはこちらをご覧下さい)
前回の会でも撮影したのだが、そのときは全体の会場の雰囲気を動画にまとめたものを作成した。しかし、今回も似たようなものでは、面白くないだろうと思い、私自身が参加者として、参加したものを撮影し編集した。そうすることで、「生きている図書館」の雰囲気がつかめるのではないだろうか。この動画は、しばらくハードディスクの中で眠っていたのだが、つい先日、公開しても大丈夫だとのお返事を頂いたので、ここに載せたいと思う。ただ、動画だけでは、伝わりにくいところもあり、また、ぼく自身も改めて勉強しなおしたいということから、お話してくれた内容を書きお越しし、編集したので、まずは、以下のテキストにてご覧いただければと思う。
慢性疲労症候群(CFS : Chronic Fatigue Syndrome)という神経難病をご存知ですか。繊維筋痛症やリウマチ・膠原病という病気の兄弟のような病気です。症状としては、病名の通り慢性的に激しい疲労が現れるということです。私の場合はまだ軽症なほうですが、ほとんどの人が外出もできず、寝たきりになってしまいます。
補足
厚生労働科学研究(障害者対策総合研究事業)「慢性疲労症候群の病因病態の解明と画期的診断・治療法の開発」研究班 ご挨拶 倉恒弘彦 の文より引用
慢性疲労症候群(chronic fatigue syndrome: CFS)とは、これまで健康に生活していた人がある日突然原因不明の激しい全身倦怠感に襲われ、それ以降強度の疲労感と共に、微熱、頭痛、筋肉痛、脱力感や、思考力の障害、抑うつ等の精神神経症状などが長期にわたって続くため、健全な社会生活が送れなくなるという病気です。1988年、米国疾病対策センター(CDC)よりCFSの報告が行われて以降、アメリカだけでなくカナダ、イギリス、ドイツ、スウェーデン、オーストラリアなど世界中の国々においてCFS症例の存在が報告され、その病因・病態の解明や診断、治療法の開発が進められています。
我が国におきましても、1991年より旧厚生省にCFS研究班(主任研究者:木谷照夫)が発足し、6年間(1991年4月~1997年3月)に渡って病因・病態の解明、治療法の開発に向けた臨床研究が行われています。1999年、「疲労の実態調査と健康づくりのための疲労回復手法に関する研究」の中で慢性疲労の実態調査(対象:一般住民4,000名、有効回答者3,015名(75.4%))を行いましたところ、国民の35.6%が慢性的な疲労を自覚しており、生活に何らかの支障をきたしている方が約5.2%存在することが明らかになりました。なかでも重篤な慢性疲労状態であるCFSの診断基準を満たす方も0.3%確認されていまして、この数字を単純に現在の日本人口1億2千万人に当てはめてみますと、我が国ではCFS患者は実に約36万も存在することとなります。
(中略・・・・・)
ここで重要なことは、CFSは決して詐病のような病態ではないことが判明していることです。CFS患者の病因・病態には脳機能異常が深くかかわっており、特に重症のCFS患者では中脳や視床における炎症が存在することがポジトロンCT(PET)などの特殊検査装置を用いた検査で分かってきました(2011年度報告書)。この脳における炎症は、通常の頭部CT検査やMRI検査ではみつけることができません。また、種々の免疫機能、自律神経機能、睡眠覚醒リズム、酸化ストレス、内分泌系評価、ウイルス学的検査などの成績においても多くの異常がみられており、CFSは決して自覚している疲れを強く訴えているような病態ではないことが確認されています。
我々は、日本におけるCFS患者の実態を明らかにするために、2012年度にCFS診療を行っている医療機関の協力を得てCFS患者470名(平均年齢:40.8±10.5歳、男性161名、女性309名)の調査を行いましたところ、日常生活のかなり多くの部分が疾患により阻害されている実態が明らかになってきました。CFSに対する治療を受けていても回復がみられない患者が半数近くおられ、PS7(身の回りのことはでき、介助も不要であるが、通常の社会生活や軽労働は不可能である)以上の状態が続いている患者も1/4近く認められています。このような重症のCFS患者の多くは、家族の支えにより何とか生活をしているのが実態であり、最低限の国民生活を営むためには社会的な支援が必要であると思われます。
今回のタイトルがケアの仕事ということなのですが、もともと私は、重度障害を専門とした看護師だったんですよ。なので、この病気になる前、仕事として、難病の患者を看ていました。
この病気を発症したのがいまから、約5年前になります。症状が出ても、多くの方は、あまり知られていない病気なので、すぐに診断されない場合が多いです。長くて、10年以上診断がつかない場合もあります。私は、看護師の仕事をしていたので、病名などを知っており、症状が出て2週間後ぐらいに慢性疲労症候群だと診断されました。
そして、難病だということが分かり、いろいろと調べるてみると、国が指定する特定疾患ではないとすぐに分かり、より大変だと痛感しました。そこで、同じ病気の方が集まる患者会を通じて、これからどうやって、この病気とうまくつきあっていけばいいのかということを考え始めました。
発症してから、外出などが出来なくなることもあり、いままでのように、仕事ができなくなってしまいました。今年(2014年6月)は体調がいいんですけど、天候によっては、よくないことが多いですね。とくに去年が凄く大変でした。そういうこともあり、私は、もう仕事には復帰できないとあきらめていたのですが、2014年の1月終わりぐらいに、お手紙を頂いたんです。偶然にという感じで。それは、週1日でもいいから、働きませんかという内容で、前職と同じような職業でした。
患者会を通じて、難病患者はハローワークに毎日通っても就労ができない状況ということを知っていたので、嬉しかったのですが、半信半疑でした。とりあえずお問い合わせをして、履歴書を出してみたんです。そういえば、雪の日に転んで顔を打ってしまって、履歴書用の写真が撮れず、出すことが出来ないと言ったら、顔の腫れが引くまでまってくれました。そんな、良心的な対応もあり、2月の終わりごろに面接の日取りの連絡があって行ってみました。いろいろと「何が出来るの?」「どうすればいいの?」などと聞かれるのではないかと、少し不安だったのですが、逆に病気のことを教えて下さいと言うようなことで驚きました。そして、4月から働くようになりました。私自身ケアの仕事には強い思いがありました。その中で、病気により働けなくなって少し閉じこもりがちだったのですが、再びこういう場で働けて、大変感謝しています。
週に1回仕事のある日は、その前後の日にはなにもないようにゆっくり休み、体の体調を整えて行っています。最初の日は、仕事から帰ってきて3日も寝込んでしまいました。いまは、翌日は寝ていることが多いというぐらいに安定しています。ただ、続けているなかで、体調による変化はあるんですけどね。突然どこかが痛くなったりというような。
ケアの仕事って、なんのためにやっているのと思われることが多いです。私の場合は、好きだからという決意をもってやっているんです。
私は、幼少のころに父をはやくに亡くしました。そして、母は足に障害を抱えていたんです。また、私自身、死産という形で、子どもを亡くし、自分の命も危なくて、なんとか助かりました。そのときは、精神がいろいろと崩れてしまいましたが、周りの友達や先生から手紙をもらって、だんだんと立ち直っていきました。それでいまに至りました。こういう人のためというようなケアの仕事は、あのとき助けてもらったということに対して、私が恩返ししたいという思いもあります。やはり、周りの人たちに支えられていまがあると思っています。
慢性疲労症候群は、ある日突然動けなくなります。私の場合は、朝目覚めたとき、起き上がれませんでした。とある主婦は、布団をかけようとした瞬間に倒れてそこから疲労が始まったということもあったみたいですね。そういえば、ナイチンゲールもこの病気だったらしいんです。37歳ぐらいに発症したそうですよ。
こういう病気になって心理的な負担がかかって、マイナス的な考え方になってしまいがちですよね。そのことで、悪化してしまうこともあります。ですが、病気を受容している人は穏やかなんですね。やっぱり、なにも分からない難病だと精神的に不安定になり、やりたいことが出来なくなってしまうと思います。私の場合は、仕事柄、そういった不便になってしまうこともなんとなくイメージが出来ました。逆に、病気になったからいままでやらなかったことに挑戦してみようと考えるようにしました。やっぱり「人生を楽しまないと!!」と前向きに捉えるようにしています。
もし、この病気などで悩んでいるかたがいたら、私たちが、活動している、日本cfsナイチンゲール友志会へ、気軽に相談してくれればと思います。
おわり
大人になるにつれて、自分の興味のあること、関係のあることにしか焦点が合わなくなり、新たな驚きや発見というものが少なくなる。今回のような、あまり知られていない難病を知るという機会は、普通の日常を送っていたらまずない。自分や身近な誰かが患ってから知るということがほとんどだろう。その普通の日常の中で、ふとしたきっかけを与え、知る機会を得られる場が「生きている図書館」の面白さであり、魅力だろう。