香港の人々が普通選挙の実現を目指して始まった「傘の革命」のプロテスロサイトの一つAdmiralityには夕方頃から急激に人が増え始め、封鎖されて歩行者天国状態の大通りや橋は人で埋め尽くされた。
プロテストを運営する為に体を動かしたり、友人達と座り込みをする学生達、歌を合唱するキリスト教系の人々、「流動民主教室」(動く民主主義の学校)に輪になって集まる人々、あちこちであがるシュプレヒコールとそれをリピートする大衆の声、メディアや写真を撮りにきている人々、休日の為家族連れも多く、空には空撮写真を取る為のメディアのドローンも飛んでいた。多くの人々が黄色いリボンをつけている。警察本部の周辺以外には警察の姿はない。
プロテストのメインサイトとなっているAdmiralityを少しだけ離れて周辺の繁華街を歩くと、休日の夜の賑わう街の日常的な光景に加え、学生達へのサポートを意味する黄色いリボンをつけて歩いている人の姿が時々目に入る。
北京在住のアメリカ人のマット(30)は、休日を利用して北京から香港に来ていて、これから香港島の対岸にある九龍でのプロテストを見に行くところだと話してくれた。北京の現地の人々は「傘の革命」についてはほとんど知らないだろうと言う。「1つの国、2つのシステム」と言われるように、違うシステムの元でこれまでやってきた香港と中国本土の違いは明らかなものだ。
警察からの暴力を伴う弾圧に関しては、催涙弾やペッパースプレーの使用が結局学生への支持を高め、より多くの人々がプロテストに参加するという結果になったため、政府はまた同じことは繰り返さないだろうというのが多くの人々の推測だった。しかし夜中が一番プロテストの場所を奪われる可能性のある時間帯なので、学生達は夜中~午前2時頃の時間帯に多くサポートにやってくるという情報を聞いた。
真夜中に近い時間帯になると、プロテスター達がケータイのライトを掲げながら合唱したり、演説をしたりして団結を強めていた。少し雨がぱらつき、雷が光っていたが、プロテスター達は全く動じず、夜通しでプロテストサイトを占拠していた。3日間ずっとプロテストを続け、1日2時間しか寝ていないというエリック(19)は、学生達の決意は堅く、警察が暴力を使っても逃げない。自分たちは利己的な理由ではなく、社会全体の為にプロテストをしていることを知ってほしいと言う。インタビューした中で最も若かったのがクリスタル(15)で、彼女も香港の民主主義について懸命に語った。香港在住のイギリス人のジョナサン(33)は、香港が民主主義を獲得することは、未来の香港の世代に重大な影響を与えることだと「傘の革命」を賞賛した。
夜中から明け方にかけても、水や食べ物などの物販を運ぶトラックが行き来し、時たま演説やそれに対する拍手と歓声が起きた。香港は10月でも昼間は暑く湿度も高めで体はべとつくが、夜には暑さは和らぐ。寝袋や毛布無しで簡単に野宿することができ、橋の上でも下でも道路の上でも、至る所でプロテスター達が眠っていて、非日常の光景が広がっていた。
朝から昼の時間帯にはまた頭数が減ってゆく、おそらく彼らの多くは夜になるまた戻ってくるのだろう。