2014年7月25日から28日の間、福島から遠く離れた福岡県で「ふくふくあそびマルシェ」(以下、「マルシェ」)と呼ばれる保養企画が行われた。運営に携わるのは震災後、被災地や避難者を対象にボランティアを行ってきた人達。「マルシェ」を心待ちにするのは、主に福島県いわき市の子連れだという。どれだけ研究機関や政府から「数値は低いから安全」と伝えられても放射性物質を不安に思う気持ちは拭い去れない。特にわが子には気兼ねなく自然に触れてほしいと願う保護者にとって、こういった保養企画は救いになっている。
7月27日は農作業とそうめん流し、海水浴が行われた。福島からの参加者は思い思いに土を触り、収穫したばかりの野菜に齧りついた。「子どもは本来土とたわむれるのがすごい好き。なかなか福島ではそれができないから、その分ここで遊んでほしい」と運営に携わるスタッフは語る。農作業の後は昼食もかねてそうめん流しが行われた。子ども達は流れてくる水を指で触り、竹で作られた器でそうめんを食べていた。麺つゆは畑の管理者が手作りをしたという。細かなところへの徹底振りが、放射性物質を忘れたい参加者への気遣いに感じられた。
昼食を食べ終えると、今度は海に行き、プロのダイバーの指導の下、簡単なスキューバダイビングが行われた。「今年は海行けてよかったな」。参加者の親子の会話が聞こえてきた。海水浴を終え、運営スタッフにインタビューをしてみた。この方は、震災後南三陸など被災地の海にも潜り、たくさんの瓦礫や人と接してきた。「福島の人だけでなく、自然と触れ合うことは人間にとって大切なこと」と語る彼は海水浴前、参加者の子ども達に「まず海水を飲んでみてください。そしたら海がわかるから」とユニークな指導をしていた。今後保養企画が全国的に増えていくかという質問に彼からは「増えるといいとは思いますが、保養企画を行う目的が大切。目的にそぐわなければ開催すべきではない」と経験者ならではの厳しい意見が出た。
すでに全国各地でたくさんの保養企画が実施、計画されている。参加者を不快にさせる企画が乱立しないためにも、今後は運営側のスキルや計画性など保養企画の質そのものが問われていきそうだ。