予告編 http://www.youtube.com/watch?v=msxq0UifZlE
インドのタラプール原発周辺での健康被害、環境被害、政府による弾圧、住民達の声を記録した、約30分の短編ドキュメンタリー映画『ハイ・パワー:大いなる力』を作製し、ブラジルのウラン映画祭で短編賞を受賞したプラディープ・インドゥルカー監督が現在来日し、上映ツアーを行っている。
インドゥルカー監督は、日本の他にも核産業において重要な場所を訪れてきた。2005年にインドと米印科学技術協定を結んだアメリカ合衆国、原発をつくる為の関連会社や技術者の多いドイツ、EPRという原発を製造するアレバ社のあるフランスなどだ。監督が来日したのは、日印原子力協定や、EPR原発のタービンのシャフト部分を製造しているのが三菱であること、協定を止める為に最も大きな力を持っているのは日本だと感じているという理由からだ。
インドゥルカー監督が題材とした、マハラシュトラ州にあるタラプール原発はインドで最も古い原発。1964年に建設された。当時は「大いなる力」として熱狂的に迎えられた。建設前、政府の役人達は周辺の住民に多くのことを約束したが、約束された住宅も教育も医療も一つとして果たされなかった。原発の温排水の影響で、海からは魚がいなくなった。体の麻痺や、甲状腺癌、癌、流産など、数々の健康被害を住民達は訴えるが、政府は彼らに対して保障をするどころか弾圧を加えている。監督は利用され、見捨てられてた人々の姿を映した。
ムンバイから南に450キロのジャイタプール原発の建設の話が提案される2005年まで、インドには反核運動はなかったが、ジャイタプール原発建設を期に反核運動が始まった。ガンジーの非暴力の精神にのっとって、同じマハシュトラ州にあるジャイタプールからタラプールまで行進したり、農民や漁民が非暴力プロテストをしている。
インド国内の政治環境としては反核運動には不利な状況だ。インド政府はアグレッシブに原発を推進していて、シューナセ党という政党のみが反核を掲げている。中産階級や知識層やメディアも、政府に逆らいたくないというのが現状だと監督は話す。
上映後に、日本にメッセージはと聞くと「日印原子力協定は、インドの反核運動においてとても重要な役割を果たすことになります。インドの反核運動だけではなく、グローバルな反核運動にとってもとても大切なことです。日印原子力協定が実現すれば、たくさんのことが核産業に解禁されてゆき、インドや世界中での核プログラムに影響を与えます。特に福島原発事故の後なので、反核運動において日本人の果たす役割や責任は大きいのではないかと思います。日本の人々が日印原子力協定についてどう考えているのか知りたいと思っています」と監督は思いを語った。同じ核問題でも、国や地域や立場によって捉え方や考え方が違う。私たち日本人は核についてどう考えているのだろうか?
【プラディープ・インドゥルカー監督】
ムンバイ在住の映画監督であり、運動家。
機械工学の専門家、科学技官として、1980年代より、BARCバーバ原子力研究センターに12年間勤務。1994年、自身の体調悪化を感じて同センターを退所後、環境教育者としての活動を開始。環境教育プロジェクトの一環として、スリハリコタ島のISROインド宇宙開発機関内のセンターのデザインなども手がける。2009年、ジャイタプール原子力発電所に関わる運動に加わり、反原発の立場から2年かけて「ハイ・パワー:大いなる力」を完成させました。
現在は遺伝子組み換え生物・食品についてのドキュメンタリーを製作中。
上映についての情報はこちら(badseaweed.wordpress.com)