6月8日、小雨の降る日曜日の午後、5月21日に福井地裁が出した大飯原発差し止め判決を祝うパレードが渋谷や原宿の街を練り歩いた。「人格権」に重きを置いた判決を出した福井地裁の樋口英明裁判長、石田明彦裁判官、三宅由子裁判官や、再稼働を阻止する為に行動してきた人々への「ありがとう」を音楽や言葉や踊りで表現しながら参加者約100人のパレードは進んだ。数ある原発訴訟で原告住民側が勝訴したのはこれが3度目。
参加者の中には仮装をしたり着物を着たり花束を持つ人々の姿もあり、赤、白、ピンクの風船のアーチや「ありがとう」の言葉を書いたプラカードや派手な色の横断幕、お祝いムードの音楽が人目を引いた。
参加者の雨元さん(42歳・男性)は、最高裁では国や企業の都合が優先されることが圧倒的に多い中でのこの判決は捨て身の判決だと思う。これを全国に飛び火させたいと述べた。川岸さん(32歳・女性)は、パレードはすごく楽しかった。司法が国民を見捨てなかったことに感動したし、判決には家族で涙した。原発の危険性に司法が踏み込み判断を下したことが素晴らしい。今までで一番画期的で良い判決だったので、最高裁までサポートしたい。サポートしなければ潰されてしまうと思う、と述べた。松さん(46歳・男性)は「人が国富」というのはまさに真理だと判決文を賞賛した。匿名希望の女性は、今回の判決を聞いて希望があると思ったし、皆喜んでいる。皆が「ありがとう」という気持ちにならないと先に進めないと思い参加したと述べた。井上さん(30歳・男性)は、パレードが盛り上がったのは良かったし、パレードを見て手を振ってくれた人もいたのはよかったけれど、もっと伝わる方法を模索したい、と感想を述べた。中田さん(34歳・女性)は、いつもデモでは批判や要求ばかりしているので、こんな風にもっとポジティブなアクションをやっていきたい。命がけの判決だったと思うので、「ありがとう」の気持ちを伝えることが大切だと言った。
青山通りや表参道沿いでパレードを見た人々にコメントを求めると、「原発は無い方がいい。他のエネルギーを」「他の原発も止まってほしい」「喜ばしい」「特に何とも思わない」「(判決には)驚いた」「知らなかった」「自分も原発には反対なので嬉しい」「難しくてよくわからないけれど、諦めなくて良かったですね」「(原発には)大反対」「何のパレードなのかよくわからなかったので、違うやり方をしてもいいのではないか」などのコメントが返ってきた。
原発が大きな社会問題であることは間違いなく、原発についての意見も様々だが、関心のレベル、知識の量や種類や危機感の有無、さらには利害関係などもまた様々。街頭で原発についての意見を求めると、パレードに参加している人々のような熱意は感じられないが、原発は無い方がいい、という人々が多い。
時に実感することが難しくても、私たちは日本社会の中でバラバラに個別に生きているわけではない。このような大きな社会問題に関する裁判に国民が関心を向け、時には感謝の気持ちを表現しサポートすることは、社会全体の雰囲気をよくしたり、より人と人が繋がりお互いをケアしあっているという雰囲気のある社会をつくる為にも良いことだろう。社会について考え話す機会が増えれば、おのずと社会の「動き」というのも感覚として掴みやすくなるかもしれない。