医療グループ「徳州会」の徳田毅氏の辞職に伴って行われる衆議院鹿児島二区補欠選挙は、去年の夏の参院選以来、そして4月の消費税増税後初の国政選挙。隣の選挙区には、再稼働第一号となる可能性の高い川内原発がある為、再稼働を目指す候補者にとっても再稼働反対の候補者にとっても、そして県内外の市民にとっても大きな意味を持つ選挙。
再稼働反対を強く訴えているありかわ美子さんの後援者と、対照的に早期再稼働を訴えている幸福実現党の後援者の方々にインタビューを行った。
<ありかわ美子さんの後援者インタビュー>
鹿児島市議会議員でありかわさんの選挙事務所の責任者を務めている小川みさ子さんは、この選挙を全国で原発を再稼働をしない第一歩の選挙にしたいと言う。安倍政権は福島の過酷事故から教訓を何も学んでいないと非難。ありかわ候補が企業や政党からの資金援助を受けずに市民からのカンパや全国から集まるボランティアの力で選挙を戦うのは、党や企業の為では無く、市民の為に働ける議員を生む為で、この選挙は非の打ち所の無いクリーンで理想的な選挙になっていると言う。
北海道からボランティアに参加している大和さん夫婦もこの選挙に勝つことは再稼働を食い止める為に必要だと考えている。ボランティアはありかわさんの為というよりかは自分達の為にやっていると言う。311以来政治に関心を持ち始め、去年の夏の参院選では三宅洋平候補の選挙もボランティアとして支えた。政治に参加することによって政治がおもしろいと感じるようになり興味も深まったという。ありかわさんのことはフェイスブックを通して知った。
石田さんはつい最近まで政治に興味が無く、ほとんど投票も行っていなかったが、妹が全身癌になる夢を見たことがきっかけで放射能について調べ始めた。誰にも正確な影響というのはわからないと思うが、チェルノブイリの前例を踏まえた上で考えると現在の日本の状態には違和感を持っている。情報が開示されていないと強く感じていて、とにかく現状を変える為に自分にできることをやろうと思い選挙を手伝うことにした。
仁尾さんは川内原発の再稼働を止めるためには、再稼働に対してノーと言っている候補者を勝たせることが必要で、それに懸けてみようと思い東京からボランティアに来た。脱原発を掲げている人間としては、今がやらなければいけないタイミングだと考えている。元々レゲェをやっていて、レゲェはレジスタンスや反逆の意味のある音楽なので、脱原発が少数派だとしても声を上げることには元々あまり抵抗が無い。当たり前のことを当たり前に言い、やっていると彼は言う。
<まつざわ力さんの後援者インタビュー>
松沢茂さんは消費者だけではなく生産者にも影響の出る消費税増税を食い止めて経済を復興させることがこの選挙の最も重要な点だと言う。早期再稼働実現を掲げている理由は、電力会社の経営悪化、海外から輸入する燃料費、電気料金の値上げなどに対する懸念など。今まで原発で発電していた電力を脱原発派が言うように再生可能エネルギーで補うことはほとんど不可能に近いと主張。
好士崎さんは2009年、まだ学生だった頃に始めて幸福実現党の政策や活動に触れる機会があり、党の活動を見て政治にも熱心で誠実な人々がいるのだと憧れていたので自分もボランティアに参加するようになった。中国や北朝鮮、憲法9条に対する懸念などをいち早く持ち、今までにない、嘘の無い党の政策が魅力的だったと言う。原発事故や放射能について初めは懸念していたが、福島の放射能はドイツなどのものとは違ったほとんど害の無い放射能だと聞き、電気代やガス代が上がると底辺で生きている人間には辛いので、経済を考慮すれば再稼働が理にかなっていると考えている。今は原発が1番良いエネルギー。日本の原発は世界的にも誇れるものなので、原発の輸出も推進したい。
濱田さんは元々政治にあまり興味がなかったが、最近の政治や諸外国の様子を見ていて真実を知りたいと思い、党の言っていることが真実だと感じ、松沢さんという年齢も近い方が立候補したのでボランティアをすることにした。情熱があって行動力のあるところが党の魅力。鹿児島の声を国会に届けることは年数を重ねれば必ずできると感じている。新しい考え方を入れてゆくことが鹿児島を良くするために必要だと言う。
<川内原発と人々>
川内原発展示館へ行くためにタクシーに乗ると、偶然タクシーの運転手さんが原子力発電に25年間ほど携わってきた方だったので意見を伺うと、しっかりとした仕事をしてきたというプライドはあるし、自然災害に対してもできるだけの想定はしていたと語った。しかし脱原発運動をやる方々の気持ちはわかるし、福島のことに対しても心を痛めている。川内原発も川内市に近いので怖いと思うこともあるが、今原発が全て止まっているからといってそのまま脱原発できるというわけでもないと思う、と複雑な気持ちを話した。
展示館を訪れていた男性の来場者は、鹿児島で飲食店を始めるかを検討中で、街の下見をしに来たと言う。北海道在住の彼は、鹿児島の人達が産業や原発についてどう考えているのか知りたいと言う。現在住んでいる北海道の泊周辺では、再稼働に賛成が多いと言う。
様々な人々の想いや時代の流れに抱かれながら、川内原発展示館では福島の事故前と同じように坦々と機械の声による原子力発電についての説明が続き、現在運転を停止している川内原発は今を生きる日本人達の決定を静かに待ち、何も言わずに佇んでいる。