まだ桜が開花する前の3月23日、日曜日の暖かい午後に、母親達が企画したデモ「ママデモ」のカラフルな行列が渋谷、原宿の街を行進し、約500人の参加者が集団的自衛権の容認や平和憲法の改正反対、脱原発や脱被曝を子供をもつ母親の立場から訴えた。
デモ終了後、初の「ママデモ」を終えて参加者から「すごく良かった」という声をたくさんもらったという主催者の1人である魚ずみさんは、母親達でデモを主催した理由について世代を超えて母親達で繋がりたかった、1人1人の力は小さいと皆が思っているかもしれないが、続ければ空気も変わるので、自分たちが行動することで希望が起きればいいと思っていると語った。
魚ずみさんは現在の原発再稼働や海外への原発輸出などを目指している日本の状態について「親が子供を投げ出さないように、投げ出したくなることもあるけれど日本を投げ出さない」と、社会運動にも子育てと同じように、根気よく柔軟性を持って取り組みたいと語った。
子供が保育園に行っているという参加者は、給食について不安を持っていると言う。世田谷区の給食は関西方面の食材を使っていると聞いているが、牛乳とお水は断っていて、小学校に上がったときは給食を断ることも考えていると、彼女は食の安全に対しての不安を語った。
デモに初めて参加したという1歳の子供の母親もいた。彼女は自分の母親に誘われて、自分の子供も連れて参加していたので、祖母、母親、子供、と3世代での参加だった。デモはベテランだという彼女の母親は、ママデモならハードルが低いと思ったので今回は子供を持つ娘を誘うことにしたと言う。デモベテランの彼女は、デモには体調に合わせて参加している。諦めたら負けなので、続けなければいけないと逞しい笑顔で語った。
企画にも参加していた母親は、ママデモは今後も続けてゆきたい。思ったよりも参加者も多く、気持ちよくできた。第一歩を踏み出せて満足していると語った。
2歳の言葉を話すようになる年頃の子供を連れてよくデモに出かけているという母親は、特定秘密保護法案反対のシュプレヒコールを子供がたくさん聞いていたので、子供が「いらない」という言葉をよく口にするようになったと言う。彼女はこの日曜日も子供を抱いてデモに参加していた。
車椅子の年配の女性は終始マイクを握りスピーカーを車椅子の後ろにのせ、かわいらしい歌声で穏やかな表情で愉しそうに社会風刺の歌を歌った。
ママデモをサポートする男性の参加者も多く、中には女装をして現れた参加者もいた。外国人の記者や参加者も少数見えた。原発、TPP、憲法改正、集団的自衛権容認などに反対している参議院議員の山本太郎さんも姿を見せた。
ママデモの企画が始まったのは、脱原発候補が破れた2月の都知事選の後。なぜ脱原発勢力が1つになれないのだろうかと考えていた彼女達は、女性やお母さん達で何かやろう!という意気込みでママデモを計画し始めた。主催者のほとんどはシングルマザーで、皆素人の女性達だという。
母親達は日常的に自分のことよりも子供のことを優先しなければいけないことが多い。子供達の「お腹が空いた」「トイレに行きたい」「眠い」「熱が出た」など様々な要求に応えなければいけない。命を育むのには時間が必要なので、母親はピリピリせずに平和な気持ちで、柔軟性を持って子供が何か必要とするときは命の為に根気良く応え続けることに慣れている。このような命を大切にする母親の姿勢というのは、そのまま日本の社会にも必要な姿勢だと思うと魚ずみさんは語った。
戦時中の母親というのはひたすら耐えなければならなかったかもしれないけれど、耐える時代は終わり。昔の母親にはできなかったけれど、今の母親にはできることがある。今は根気よく柔軟に声を上げられる母親達の時代だと彼女は言う。
ママデモの打ち上げには、たくさんの子供達の姿や、徹夜でデモの準備をして疲れてウトウトする女性の姿、ママではないけれどママ達のデモをサポートする為にデモに参加した男性達など、幅広い世代や性別の人々の姿があり、ママ達と彼女達を応援する参加者、そして子供達が初のママデモの成功を祝った。