与那国島の自衛隊配備について、農業生産法人南牧場と沖縄防衛局との土地回収交渉が難航していたが、今月12日に行われた組合の総会で2億4千万円の妥協案が8名の組合員の内、賛成5、反対2、欠席1で採択された。地元関係者によると、総会を欠席したメンバーは、自分は反対だが身内に賛成派がいる為、悩んだ末に欠席したという。 今月5日には、2、3時間の総会の末に、自分がハンコを押した場合子供や孫達に対して責任を取ることができないと、大嵩長史組合長が辞任。その後賛成派の鳩間正八氏が新組合長となり、一気に採択が行われた。
自衛隊配備は2015年度末までに行われる予定。政府は自衛隊配備の理由を南西諸島の防衛力強化としている。
与那国島では自衛隊誘致賛成派の外間守吉氏が去年8月11日に行われた町長選挙で当選してから自衛隊配備に向けての動きが活発になり、自衛隊配備によって発生する町へのダメージに対する「迷惑料」や土地回収の為の交渉が沖縄防衛局との間で進められていた。当初は10億円の「迷惑料」を防衛省に求めていたが、交渉はなかなか噛み合わず、組合員1人あたり3千万円の、2億4千万円に落ち着いた。
与那国島の人口は1625人、有権者は1128人。投票率は95.48%だった。自衛隊配備反対派の先原正吉氏は47票の僅差で破れている。地元住民の話によると、有権者が1128人で人と人との繋がりが密接な「島社会」での選挙では、身内に対する配慮や利害関係など自分の意志で投票しにくい独特の空気があるようだ。与那国町では近年まで3名が投票用紙を見せ合って同時に投票する「はさみ投票」がまかり通っていたが、前回の選挙では選管から厳重注意があり、1人ずつの投票となった。
また、去年の夏に自衛隊配備反対派が500名以上の署名を集めて自衛隊配備に関する住民説明会を開くように町に求めたが、議会で3対2で否決され実施されなかった。さらに、町役場で署名の名簿が公開され、土建屋などから署名者が署名を取り消すように迫られるケースもあったという。
現在自衛隊配備反対派は、島民に対して充分な説明がなされていないと主張。約150名の自衛隊関係者が新しい島の有権者となれば町の政治において新しい政治勢力が生まれ、町の政治が大きく変わるであろうこと、日米安保・地位協定にのっとり自衛隊の基地は米軍と共同で利用されること、集落の間近に建設予定のレーダー基地から発せられる電磁波による健康被害、レーダー基地は戦争などの不測の事態が起きた場合真っ先に狙われる標的であること、自衛隊配備に伴って高まる国際緊張、インビ岳に生息する絶滅危惧種や与那国島固有種、希少生物に対する影響などを懸念している。
石垣、竹富、与那国を含み、過去に基地の配備されたことのない沖縄県の八重山郡に、長い間沖縄の人々を二分してきた基地問題がついに持ち込まれた。石垣市長選中、防衛省や中山陣営は否定していたが、石垣市にも自衛隊配備の計画があることが明らかになった。現在、与那国島の久部良の集落から約200メートルの丘の上にあるレーダー基地建設予定地には、深緑色の一本の旗がはためいている。