2014/03/12 社会
【震災から3年】クリストファー・ノーランド監督からのメッセージ

こんにちは。クリストファー・ノーランドです。私はサバイバルジャパン〜311の真実〜という、3.11の地震、津波、福島原発事故を記録したドキュメンタリー映画の監督です。トリプルディザスターから3年が経ち、長い時間が経ったようにも感じますが、災害をまるで昨日起こったことのように生々しく感じることもあります。また地面が動き出すのではないかと不安に感じていた日々もありました。地震のあった日に自分の東京のアパートにいたのを覚えています。揺れはもう止まらないかもしれないと感じました。それは私が過去に経験したことのない感情でした。自分はもう死んでしまうのだと思いました。そして地震が止まり、私は自分がまだ死なずに生きていることに気づき、早く安全を確保しなければと思いました。私は最寄りの駅に行きました。そして約40分後、駅にいた人々皆がテレビに映る津波を目撃しました。皆信じられない気持ちと静寂の中で津波を見つめていました。今まで見てきたものの中で最も恐ろしい光景でした。地震後の2、3日の間に、皆さんも知るように原子力発電所で爆発が起きました。最初私は一体何が起こったのか、コンセプトを頭でよく理解することができませんでした。わかっていたのは室内にいなければいけないということだけでした。矛盾だらけのテレビからの情報とインターネットからの情報で溢れていたからです。人々はどうしたらいいのかわからなかったのではないかと思います。とにかくその週は一歩も外に出まいと思いました。

私は災害のボランティアをすることに決めました。ボランティアをしようと決めたのには2つの理由がありました。1つ目の理由は、日本は私に新しい住む場所や経験を与えてくれた国だったからです。私は日本に住むことができることにとても感謝していました。災害ボランティアは、助けを必要としている日本に恩返しをする為の私なりのやり方でした。日本語が流暢でない外国人を受け入れてくれるNPOを探すのにとても長い時間がかかりました。始めの頃は日本語を流暢に話せる外国人しか受け入れていなかったからです。しかし現場の被害の深刻さを経験してからは、助けになりたい人なら誰でも構わず受け入れられるようになりました。2つ目の理由は、私は原発で一体何が起こっているのか知りたかったのです。たくさんの疑問があったのにそれに対する答えはあまりにも少なかった。

私はまず岩手県の大船渡に行きました。ボランティアとして瓦礫を片付けたり、炊き出しをしたり、物資を運んだりしました。その頃、私はカメラを持っていましたが、映画を撮ることは全く考えていませんでした。単に情報収集をして、東京の人達に東北で何が起きているのか知ってもらおうと考えていました。しかし私は情報をどうやって発信するのかを考えていませんでした。電話もインターネットも被災地では使えなかった為、当初私がやろうと思っていた形での情報発信は不可能でした。なので私はボランティアをしながら情報を集め続けなければなりませんでした。東京に戻った後、私は集めた映像をインターネットで公開しました。すぐにたくさんの人々から反応があり、貴重な情報なので映画にするべきだと提案されました。私は過去に映画をつくった経験がありませんでしたので、これが自身初の長編映画となりました。まさか自分が映画をつくることになるとは思ってもいませんでした。はたして本当に映画をつくれるのかどうかすら当時の私にはわかりませんでしたが、映画をつくることは正しいことだと感じていました。ボランティアで東北に行ったとき、人々が切実に情報を必要としていることを肌で感じましたし、彼らはまた彼らの声が平等に聞かれることを望んでもいました。しかし彼らの望みは全く叶えられていませんでした。被災地からの情報は外には伝えられずに、被災地の外から入ってくる情報は、間違っているか、もしくは全くのゼロでした。特に原発事故の状況については人々はどう考えていいのかわからずにいました。人々は室内にいるべきなのか、それとも非難するべきなのか判断する為の情報を与えられていませんでした。彼らは事態は「安全」だと言われていたのです。しかし本当に安全なのかどうかわからないので、人々は大きな不安を抱えていました。

そしてその不安や疑問は今現在まで続いているのです。現在は原発についての意見が分かれ、人々の間に分断を生んでしまっています。しかし、私がこの災害を通じて学んだことはその反対で、悲劇の最中で人々が団結し助け合うことができるように力を尽くすことでした。たとえ言葉が違っても、ポジティブな方向に世の中を変えるために、世界中が団結する必要があります。日本に限らず、今の世界を見ると、人々が分断させられてしまっているのを感じます。人々は対立しあってしまっています。世の中を変える為には、人々は歩み寄り団結し協力しなければいけない。考え方の違いにこだわらずに歩み寄らなければいけないときもあります。311は私にとって原発に賛成か反対かを議論する日ではありません。311は私に極めてリアルな感触をもって、この世界がどのように成り立っているのかを教えてくれました。311のおかげで、私は必要なときには人々は助け合うことができるのだとわかりました。そして311は企業による共謀や政府による妨害もまざまざと私に見せつけました。人々は適切な情報を与えられなかった為、判断ミスをし、人災をさらに悪化させました。放射能に関するデータや情報が間違っているということも何度も起こりました。信憑性のあるはずの情報が間違っていました。そして現在も様々な理由で放射能のレベルは上がり、海にも洩れ続けています。私は情報の隠蔽は許されるべき行為ではないと思っています。日本も世界も、少なくとも放射能に関する正しい情報を要求しなければいけません。人々にはそういった情報を知る権利があります。命に関わる判断をするときに、適切な判断ができるように、人々には何が有害で何が無害なのかを知る権利があります。

この映画を見る人々には、私が経験したのと似た感情を経験してほしいと願っています。人生を変えるような出来事は人々を考えさせ、人生やこの災害や未来について違った見方を持たせることもあります。私はこの映画をつくるにあたって、特定の論点を持っていたわけではありません。この映画を通して、私が自分の人生という旅の過程で出会った人々と分かち合った経験や時間をオーディエンスと共有したかったのです。そして私は今私の旅の全てをあなたと共有しています。あなたは私の旅から何かを学ぶことができると思います。そして私はあなたがこの映画から学んだことをポジティブな方法で世界と共有できることを願っています。全ての人々はこの災害から何かを学ぶことができます。これは単純に過去の出来事として片付けてはいけないことです。私たちは毎年311に自分自身や他の人々の為にどのように世界をより良い場所にできるか考えるべきです。今私たちが手にしている世界を変える為の大きなチャンスを逃してしまったら、私たちは世界を変えるチャンスを失ってしまいます。この複雑な世界を変えるのは不可能だと考えている人々が多いことはわかっています。しかし世界に違いを生み出すのに必要なのはたったの1人の人間で充分なのです。そしてその1人1人が団結し協力すれば本当に世界を変えることができるのです。

私はこのプロジェクトをやり遂げるために協力してくれた全ての人々に感謝しています。皆さんは私の人生においてこれからもずっと大切な存在であり続けます。日本の皆さんには本当に感謝しています。日本は私の人生を変える経験を与えてくれましたし、人々は団結し助け合うことができるのだということを教えてくれたからです。

ークリストファー・ノーランド

サバイバル・ジャパン〜3.11の真実〜[DVD]

プロデュース :蜂谷翔子
Comment

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  • 及川健二@France10 2014-03-12 08:00:23
    字幕があって嬉しいです。たいへんな労力ですねm(_ _)mご苦労が報われますように……。
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