「違法伐採者からチェンソーを奪い、森を守る」。東南アジアのリゾート地・フィリピンのパラワン島で、命がけで自然と向き合う環境活動家たちがいる。彼らの闘いを追ったドキュメンタリー映画『デリカド』が5月31日から日本公開される。それに先駆け、市民メディア「8bitNews」のジャーナリスト・構二葵(かまいふき)氏が、活動家ボビー・チャン弁護士に独占インタビューを行った。
フィリピンの美しい自然が残るパラワン島。サンゴ礁、マングローブ、手つかずの森。世界中の観光客を魅了するこの楽園で、違法伐採や密漁が今も横行している。その闇に真正面から立ち向かうのが、環境保護NGO「PNNI」を率いるボビー・チャン弁護士と仲間たちだ。
彼らの活動は、まさに命がけだ。
違法に伐採された木材を守るため、活動家たちは自ら山に入り、違法伐採者の元へ。回転するチェンソーをその手から取り上げ、証拠として押収する。海では、ダイナマイトを使って魚を獲る違法漁師たちを追跡し、爆薬や毒の使用を阻止する。
ボビー氏は語る。
「最初は環境法を教えていたが、森のすぐそばで木が切り倒され、サンゴ礁では爆弾が投げ込まれる。教育だけでは自然を守れないと感じた。だから行動に出たんです」。
これまでに活動に関わる15人以上が命を落とした。
それでも彼は言う。「一人が倒れても、三人、四人がその場所に立つ。それが私たちの答えです」。
活動の過酷さに加え、資金面の苦しさもある。PNNIには十分な資金がなく、ボートなどの装備もレンタル頼み。支援団体からは「危険な活動に関わりたくない」と資金提供を断られることも多いという。
また、日本との関係も問われている。日本政府はフィリピンへの防衛装備供与(OSA)を開始し、今後船舶なども提供される可能性がある。
「その装備が私たち市民活動家を弾圧するために使われる可能性がある。日本の皆さんにもその責任があると伝えたい」とボビー氏は訴える。
映画『デリカド』では、こうした活動のリアルとともに、家族の葛藤、仲間を失う悲しみ、そして「それでも続ける」決意が映し出されている。
「日本では法律が機能し、森林は守られているかもしれない。でも、私たちのような国では、まず“守る人間”が必要なんです」とボビー氏は語る。
映画の中では、薬物犯罪のリストに無実の女性政治家が掲載される場面も描かれる。大統領による強権的な体制のもと、環境活動が「国家への反逆」と見なされる現実がある。
「環境を守ることは、信仰でもある」とボビー氏は語る。
「これはNGOの仕事ではなく、市民社会全体の責任です。気候変動の最前線にあるこの森は、日本の未来とも無関係ではありません」。
映画情報:
『デリカド』は5月31日(土)から全国順次公開。
公式サイト:https://unitedpeople.jp/delikado/
最後に:
番組でボビー氏と対話したジャーナリスト・構二葵(かまいふき)氏は、「この闘いは、遠い島の話ではない。映画を観て、SNSで感想を発信することも行動のひとつ。私たちにできることは、必ずある」と語った。