アートとアクティビズムを掛け合わせた活動を続けるアーティビスト・黒部睦さんが、パレスチナと日本にルーツを持つラッパー・DANNY JINさんをゲストに迎え、パレスチナの歴史と現在について深く語り合いました。
毎年5月15日は「ナクバの日」。1948年、イスラエル建国によって75万人以上のパレスチナ人が故郷を追われ、難民となったこの出来事は、パレスチナの人々にとって「大災厄」を意味します。77年が経った今も、その傷は癒えることなく、ガザでは50,000人以上が命を落とし、飢餓と封鎖の中で人道危機が続いています。
黒部さんは、「ナクバの日」に合わせて新宿駅前で行われた抗議アクションを取材。そこで交わされた声は、決して過去の記憶ではなく、今なお進行中の「民族浄化」に対する切実な抵抗でした。
番組後半ではDANNY JINさんが、パレスチナの人々がいかに長い歴史の中でこの土地に根ざしてきたかを語ります。
「僕らの祖先は古代カナン人、フェニキア人、アラム人……つまりずっとパレスチナに住んでいた人たち。DNA的にも、今のイスラエル人より古代イスラエル人に近いと言われることもある」とDANNYさんは話します。
近代に入ってからのヨーロッパからのユダヤ人移住、1947年の国連による分割案、1948年のイスラエル建国と第1次中東戦争、1967年の第3次中東戦争と占領地の拡大、そして現在のガザとヨルダン川西岸の状況──ひとつひとつの歴史的経緯が丁寧に語られ、視聴者にとって地図の変化が意味するものが見えてきます。
番組では、5月15日が沖縄の本土復帰の日でもあることに触れられました。基地の島としての現実に声を上げ続ける沖縄と、軍事占領に苦しむパレスチナ──「どちらも土地を奪われ、声を無視され続けている」と黒部さんは言います。
「僕たちが今声を上げなければ、歴史はまた繰り返される」とDANNYさん。「ハマスが生まれた背景も、ガザの人々がなぜ怒っているのかも、この歴史を見ればわかる。今だけを切り取って語ることはできない」
番組の最後には、黒部さんから「世界の市民が声を上げない限り、この状況は止まらない」という言葉がありました。政治や国際機関に委ねるのではなく、一人ひとりが「知る」ことから始める。アートを通して、街頭で、SNSで、どこからでも声を重ねていく。その大切さを、改めて実感させられる1時間でした。