2021/04/17 政治
<食の安全>ネットで流通する基準値超えの野生キノコ・山菜を巡り、厚労省を動かした市民測定 我慢値100ベクレル/kgを死守する闘い

2021年3月9日、自民党のプロジェクトチームが放射能汚染に関する食品の安全基準を引き上げる動きをしていることや、基準値超えの食品がネットで流通している実態を受け、「みんなのデータサイト」が参議院議員会館で記者会見を行った。

 

 

※「みんなのデータサイト」は東京電力福島第一原発事故を契機に生まれた全国の市民放射能測定室のネットワーク団体。全国約30の市民測定室が加盟し、食品・土壌などの測定結果を集積するデータベース「みんなのデータサイト」を運営している。独自に東日本17都県の土壌3,400ヶ所を採取・測定した結果をまとめた書籍『図説・17都県放射能測定マップ+読み解き集』はシリーズ累計2万部を発行。https://minnanods.net/

 

 

 

 

市民放射能測定所の測定により、安全基準である100ベクレル/kgを超える野生のキノコや山菜が、ヤフオクやメルカリなどの個人売買サイトを通して流通している実態がわかった。保健所によりその実態が確認されたことから、厚労省は2020年10月19日に、山菜・きのこ類を出品する際の注意喚起をするよう、ヤフオクやメルカリをはじめとしたオークション・フリマサイトに「協力依頼」を要請し、厚労省のサイトにも注意喚起が掲載された。

 

 

基準値超えの食品がネットで流通しているのがわかったのは、NPO「ふくしま30年プロジェクト」がネットから購入したコシアブラの測定を実施し、100Bq/kgを超えるものが多数発見されたことをきっかけに、「2020年秋の全国きのこ測定プロジェクト」を立ち上げ、10月11日から11月30日の期間で、高濃度の放射性セシウムを検出しそうな品種、産地に絞ってキノコを購入し測定したことによる。個人売買サイト、道の駅、地場野菜の直売所などからキノコを購入・測定。コウタケ、サクラシメジ、ウラベニホテイシメジ、バカマツタケ、ショウゲンジ、クロカワ、オオシメジ、アミタケ、ハナイグチから食品基準100Bq/kgを超える放射性セシウムが検出された。最大値1833Bq/kgを示したコウタケは測定件数が18件と最も多く、食品基準の100Bq/kg超えの比率も61%と高く、複数検査が可能であったキノコのうち基準値超えが最も多かった。茨城、群馬、福島、岩手、宮城、長野、栃木、山梨、新潟、山形、北海道、秋田、東京、神奈川、青森の天然生キノコのうち、基準値超えがあった都県は多い順に、茨城、群馬、福島、岩手、宮城、長野、山形だった。

 

 

汚染のある都県には、出荷制限、出荷自粛、摂取制限というような、出荷制限が国や県の要請でかかっている。1833Bq/kgのコウタケが見つかった宮城県の気仙沼に関しては、本プロジェクトの測定結果に基づく訴えにより、2020年12月25日に出荷制限が出されが、それまでは出荷制限がかかっていなかった。出荷制限地域からの出荷は23件中5件だった。出荷された基準値超えのキノコの内、出荷制限地域からの出荷は22%、出荷制限なしの地域からの出荷は48%、制限の有無不明地からの出荷は30%だった。

 

 

出荷制限がない地域でも、キノコに放射性セシウムが移行しやすいので、モニタリング検査をして情報を住民に提供しなければいけない。生計をそれらに頼る方々は、測って出荷し、周知を徹底すること。ネットでの売買が盛んになった今、消費生活の中で放射性セシウムによる内部被曝をしなくてすむように国が対応することが必要とされている。そしてキノコは放射性物質を吸着しやすい性質のため、土壌汚染が深刻でないところでも基準値超えのキノコが出ている、と大沼章子さんはプロジェクトの結果について語った。

 

 

 

 

「ふくしま30年プロジェクト」の阿部浩美さんは、測定して基準値超えが見つかったので、測定所所在の福島市の保健所に通報した。測定結果と、ヤフオク、メルカリでの出品者の提示をし、申立書を提出した。通報の後、改めて公的機関での測定をし、実際に基準値超えになるかを確認する作業をすることになった。放射能測定のために既に切り刻んだキノコやコシアブラを渡しても、「参考値」として扱われるので、測定に使わなかった食品を渡し、再び基準値を超えた場合、保健所がヤフオクやメルカリに連絡し、個人情報の開示を求めるという流れ。メルカリはユーザーが匿名で使用しているので、運営会社が取引に問題があると認識した場合に個人情報が保健所に開示され、保健所から売った人への注意喚起が行われる。売った人が福島市に住んでいた場合はそのまま福島市の保健所が担当するけれど、県外に住んでいる場合などは、県外のその人の住む場所が管轄の保健所が対応する。メルカリは、販売をした人に連絡をし、保健所から基準値超えのものがあったと連絡を受けたので、出品したものを自主回収し返金をするようにと通達。ヤフオクの場合は連絡はするも、返金をするようにとまでは通達はしなかった。行政は出品者に採取地を聞き、現地に行きキノコの採取を行い測定をし、再び基準値を超えれば出荷制限が出される。野生キノコやコシアブラは旬のものなので、採取できなければそこで終わりとなり、対応は先送りとなる。市民測定所の通達が出荷制限に繋がった気仙沼市の例は稀有なものだった。福島市の保健所に基準値超えの通報が多かったため、厚労省が2020年10月19日に、山菜・きのこ類を出品する際の注意喚起をするよう、ヤフオクやメルカリをはじめとしたオークション・フリマサイトに「協力依頼」。厚労省のサイトにも以下のような注意喚起が掲載された。

 

 

「インターネットモール運営事業者への協力依頼について

厚生労働省は、インターネットモール運営事業者8社に対し、野生の農産物を販売する利用者に対する注意喚起を依頼いたしました。

食品衛生法に違反する食品の販売が確認された場合は、モール運営事業者、各自治体、関係省庁と連携・協力し、該当食品の廃棄・回収が行われるとともに、調査の結果、周辺地域にも基準値を超えた品目が認められる場合、原子力災害対策特別措置法に基づく出荷制限等の取組を実施します。」

 

 

厚労省の協力依頼に応じ、メルカリとヤフオクは山菜・きのこ類の出品の際の注意喚起を行ったものの、ユーザーが必ず気づくようなやり方では広報が行われていないため、阿部さんはサイトでの注意喚起の実効性は弱いと見ている。メルカリは「野生の農産物(山菜・きのこ等)については、産出地域ごとに出荷制限されているものがあります。販売にあたっては、産出地域を慎重に確認し、出荷制限の対象地域で産出されたものでないことを最新の情報でご確認ください。詳しくは以下の厚生労働省のサイトをご確認ください」という文章で注意喚起を行い、放射能汚染の基準値超えの食品の消費を避けるための注意喚起であることを明示しなかった。しかし厚労省が動いた結果、県や自治体も注意喚起を行うようになった。これだけの対応ができたのは福島市の保健所だったからで、福島県外の保健所には、放射能汚染のことが他人事という雰囲気があり、おそらくこのような事態を想定していなかったためか、もっとそっけない扱いを受けることもあると阿部さんは言う。

 

 

 

 

新潟で放射能測定をしている村上直行さんは、新潟の保健所の対応は福島の保健所の対応と比べると雲泥の差だと自身の体験を語った。キノコを測定してみる際に、保健所に確認をしてもらおうと思い、キノコの全部を使わず、一部だけを使って報告をし、基準値超えの恐れがあるので、確認のため測ってもらえないかと相談すると、予算が足りないとか、このような事例がないということで、なかなか保健所に測ってもらうことができなかった。経緯を説明し、厚生省も通達を出していることを伝えると、渋々取り合ってもらうことができた。村上さんの保健所とのやりとりの結果、汚染が確認されたことがわかった、最終的にはメルカリで返金がなされたことがわかった。

 

 

みんなのデータサイト調べで、個人売買通販サイトのように、業者ではない個人が「食品」を販売することに、まったく規制が効かないところでは、高濃度の放射能汚染食品が大量に出回る危険性があることがわかったので、村上さんは食品衛生法を違反する行為に対する処分が甘いのではないかとの懸念を会見で語った。個人が何の責任も負えないのに、個人売買通販サイトで高濃度に汚染した食品を売っていること、通販サイトがそれを許していることに問題があるのではないか?また、厚生省は、インターネットモール運営事業者8社に対して、利用者に対する注意喚起を協力依頼したものの、非常に緩い対応で監督官庁としての責任を果たしていないのではないだろうか。

 

 

食品衛生法は、食品を扱う事業者や個人が「自らの責任においてそれらの安全性を確保するため、販売食品等の安全性確保に係る知識及び技術の習得、販売食品等の原材料の安全性の確保、販売食品等の自主検査の実施その他の必要な措置を講ずるよう努めなければならない。」と定めていおり、「有毒な、若しくは有害な物質が含まれ、若しくは付着し、またはこれらの疑いがあるもの」を販売・陳列してはならないとし定めている。「これに違反した場合は、厚生労働大臣又は都道府県知事は、必要に応じ、改善指導、当該食品の破棄命令(食品衛生法第54条)や、当該営業社の営業許可の取消し(同第55条)を行うことができるほか、悪質な事例については告発が行われ、罰則として、2年以下の懲役又は200万円以下の罰金(同第72条)が適用される場合があります。」と定められている。

 

 

しかし「ふくしま30年プロジェクト」の阿部さんの行った情報開示によると、福島市保健所は販売をした人に連絡を取ることができたものの、売った人は電話で対応しただけで、面会やメールでのやりとりを拒否。基準値超えの食品をネットで販売した人は、食品衛生法の違反をしているにも関わらず、保健所は注意をしただけで終わりとなってしまった。法律上規制はかけているものの、実質それは全く行われていないと村上さんは指摘した。

 

 

厚労省の放射能測定検査体制についても村上さんは疑問を抱いている。2012年4月以降、2019年12月25日までの食品検査は約235万件で、膨大な検査をしているものの、その内容の79.3%が「畜産物」の測定で、1908555件、その畜産物の内99.3%を牛肉の検査が占めている。他には農産物9.9%、水産物6.3%、その他2.7%、牛乳・乳児用食品1.1%、野生鳥獣肉0.5%、飲料水0.2%となっている。このように検体の偏った検査をして、どうです?これだけ測っているんです、と国は言っているが、果たしてこれが私たちの食生活と直接結びついているのかと考えると、ちょっと怪しげだなと思います、と村上さんは語った。

 

 

 

 

このような状況の中、福島2区選出の衆議院議員・根本匠氏(元復興大臣)を座長にして、食品の規制基準値改訂のためのプロジェクトチームが2021年1月21日に発足。山の恵みである、山菜、キノコが100Bq/kgの基準値のために、出荷できないことから、食品の規制基準値を上げようとしていることがわかりました。これは国の放射線審議会の会議議事録とも一致しています。(第143回総会放射線審議会 2019年1月25日)

 

 

自民党のプロジェクトチームは、まずは100Bq/kgの出荷制限解除を行い、最終的にはCODEX基準の1000Bq/kgに基準値を引き上げようとしていることが、プロジェクトの資料から判明しています。田中俊一氏および高村昇氏が、プロジェクトチームにレクチャーとして使用した資料が、伊藤信太郎氏(宮城4区)・菅谷一郎氏(福島4区)のブログに、公開されています。

 

 

特に、田中俊一氏の下記の記述、「新基準(100Bq/kg)の値を決める時点で、市場に出回る福島県産食品の放射能汚染割合は、すでにほぼゼロであった」という驚くべき文言があります。この見解を元に、1000Bq/kgに引き上げても何ら問題なく、厚労省の新基準値の設定がそもそも間違いであったと、持論を展開しています。理由が風評被害で、他の食品の汚染が低減しているから山菜・キノコを食べても大丈夫という論理展開はいかにもおかしくないでしょうか?それならば、法令で定められた基準値の方をさらに下げるべきではないでしょうか?農業生産の現場では、汚染を下げようと継続努力しているのに対し、基準を緩めることは消費者離れを招くことにならないでしょうか?

 

 

山菜とキノコの基準値引き上げの先には、イノシシ、鹿、熊などのジビエ基準値の引き上げが見込まれていると、みんなのデータサイトは予測しています。農水省では、かねてからジビエの学校給食導入に積極的に動いており、西日本から関西にかけて、既に導入が始まっています。鳥獣被害対策としてのジビエ利用を否定するものではありませんが、全国で放射能測定を行った上での利用が必要です。地元産のジビエであれば問題ないという考えもありますが、移動距離の長い野生動物を、測らずに、子どもたちに食べさせる行為は避けるべきです。さらに基準値を引き上げて、東日本でもこれを導入させようという動きに発展すれば、全国に高濃度汚染のジビエが流通される恐れも生じます。森林の野生動物(イノシシ、鹿、熊)は、セシウム循環の枠組みに捉えられてしまっており、なかなか汚染が低減しないので、長期に監視が必要です。

 

 

これらの動きに対して、みんなのデータサイトでは「放射能をたくさん含む食品を流通させるために規制値を緩めることに反対!せめて100ベクレルを守ってください。」署名をスタートしました。プロジェクトチームの動きを監視し、年単位の時間をかけて取り組んでいく所存です。
これから賛同団体を募り、団体署名にも取り組んでもらう予定です。

 

 

署名リンク☞ https://minnanods.net/blog/entry-1615.html

 

 

 

 

福島では、原発事故で汚染され、帰宅困難区域となった場所の除染をしてから住民を帰還させるという方針でしたが、今は除染なしの20mSv以下の環境に帰還をしてもらうということをしています。国際基準では一般人の年間被ばく量は1m Svを超えてはならないとされています。食品の基準が緩和されれば、外部被曝と内部被曝の両方が上がり、被曝数値が上がる可能性が高い。

 

 

そしてコーデックス基準の1000ベクレルというのは、汚染食品の混入率10%を基準にしているので、全ての食品が汚染されていて、年間被ばく限度が1m Svだと、100bq/kgになります。食品基準を決めるときの根拠も、500bq/kgの時は年間5mSvを前提とした計算だったし、100bq/kgになった時は、年間1mSvを計算根拠にして出している。事故を起こした汚染当事国がいきなり国際基準、つまり外国からやってきた汚染物、10%以下だよね、という前提でつくられた1000bq/kgの基準をそのまま導入するっていうのは全く変ですよ、と村上さんはコメントした。

 

 

※コーデックスとは、1962年に国連の専門機関である国連食糧農業機関と世界保健機関が合同で定めた国際的な食品規格、または食品規格委員会。正式名称はCodex Alimentarius Commission)。

 

 

そして野生の山菜やキノコをたくさん食べる食文化を持つ人々はいるはずなので、そういったものの平均的な消費量が少ないからといって基準値を上げるというのは、そういった食文化を持つ人々のことを全く考慮していない。山形ではコシアブラは山菜の女王と呼ばれているし、天ぷらや塩漬けにして食されている。松茸のようにコウタケもとても人気で珍重されている。そういった食文化を持つ人たちはたくさんの量を消費することを考慮しなければいけない。

 

 

ウクライナでは1986年のチェルノブイリ原発事故から年月の経った1997年、1998年に人々が被った内部被曝が、事故のあった1986年よりも高くなっているというホールボディーカウンターのデータがあり、日本でも10年経ったからといって安心するのではなく、腹を括り直す必要があると、大沼さんは記者会見を締めくくった。

 

 

 

 

この3月9日の記者会見後、マイナーフードに関しては、1000ベクレルを超える、12500bq/kgまで流通可能にしようとしているのではないかという懸念が持ち上がった。

https://www.agrinews.co.jp/p53639.html

プロデュース :蜂谷翔子
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