2020/04/13 国際
兎愛と人智〜愛は国境を越えるか〜うさぎ羊毛フェルト教室・台湾編

「可愛いね!」「可愛いね!」「可愛いね!」動画の中で私は連呼する。見る方の頬が緩む。うさぎの可愛さは日本でも台湾でも同じ。うさぎへの愛も同じ。台湾でうさぎを愛する人たちに会い、話を聞いてみた。2020年1月の話である。

 

うさぎ羊毛フェルト講師・作家の畑牧子さん。日本を拠点に活動する。羊毛フェルトとは、羊毛の原毛を針で突きながら形にしていき、人形などを作る手芸である。畑牧子さんはそちらをうさぎ専門で手掛ける。リアルかわいい作品は話題を呼び、日本国内での教室はいつも満員、そして時には、このように諸外国でも教室を開いている。

 

今回は台湾教室にお邪魔した。台湾の台北・台中・高雄と、台湾を縦断しながら三都市で教える。お邪魔したのは台中だった。台中国際空港に到着後、タクシーを飛ばし会場へ駆けつける。すでに熱気に満ちていた。畑先生の教える可愛いうさぎを作り出そうと、受講生は皆夢中であった。

 

そして、受講生の中には、愛兎連れの人も。そのうさぎ達に会い、冒頭の「可愛いね!」連呼に続くのである。通訳の方を介しつつ、話を聞いていく。もう本当に、うさぎを愛していることが、話から、態度から、伝わってくる。うさぎ愛は日本も台湾も同じ、畑牧子さんの台湾教室もすぐ満員になるほど、うさぎは愛されている、そう感じた私はあることを聞いた。

 

「うさぎを愛するように、愛で国境は越えられますか?」

 

聞いた方は皆「愛があれば国境は越えられる」と答えてくれた。「国は国、人は人」なのだと。お答えいただいた内容の詳細については動画を見ていただきたい。

 

日本に帰国し、畑牧子さんにも話を聞いた。事前に何の打ち合わせをした訳でもない。台湾でお話を聞いた現地の方々と同趣旨のお話を畑さんはしてくださった。驚いた。思いは一緒だったのだ。まさしく、国境を越えた瞬間だった。

 

畑さんは講師でもあるので、作品制作にあたってのテキストを出版している。この春、その台湾中国語版(中文(繁体))が翻訳出版された。畑さんがまず告知を出す。それを受けて、台湾現地の受講生が、「買いましたよ」と、動画にも出演した愛兎との写真をソーシャルネットワークにアップする。それらが、動画のラストに出てくる。まさに国際交流の証そのもの。

 

台湾は、隣国諸国に翻弄されてきた過去があり、世界での立場はいまだ安定しているとは言い難い。日本においても「国」とは認定されておらず、「地域」としての扱いである(2020年4月現在)。1987年に戒厳令が解除以降、急激に民主主義と政治の自由化が進む台湾。民主主義が効果的に機能する一方で、一国二制度を掲げる中国からの経済を重んじる人たちもまた、多い。

 

民主主義と経済。バランスを保つのは難しい。1月の蔡英文(サイエイブン)総統再選に伴い、民主主義と経済を巡って、親子間で断絶が生じたとも聞く。お互いを受け入れることができず、子が家出までするケースすらあるという。そのような分断を招いてまでも、若い世代は民主主義を重んじようとする。本来の民主主義なら、分断を生まず、民主主義と経済をどのように良いバランスで融和させていくかだろうということだが、民主主義は話し合いなど、何かと時間がかかるのもまた事実だ。

 

うさぎの可愛さに癒やされるも良し。しかしその裏に流れる「台湾の血流」とも言えるものも感じてもらえればありがたい。台湾の方たちは、なぜ「愛で国境は越えられる」と答えたか。その思いの裏に何があったか。難しいことは言わない。国境というものの意味、そしてそれを越える意味、何を以て越える意味、それの答えが「愛」であった意味。

 

この動画を見てくださった方の思慮のヒントになれば幸いである。

 

なお、動画中、うさぎに負担がかかる体勢で抱っこをしているシーンもある。そのような場合は、うさぎと飼い主に深い信頼が醸成されていることが大前提となる。うさぎに信頼感がなければ、身体を人間に預けることはできない。安易な真似は謹んでいただければと思う。

 

(一社)日本うさぎ羊毛フェルト協会 代表理事 畑牧子さん
活動の様子は以下からどうぞ。

 

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プロデュース :西村晴子
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