福島県南相馬市萱浜地区。
ここは東日本大震災で津波による甚大な被害があった場所の一つです。
南相馬では当時最大震度6弱を観測し、沿岸に到達した津波は相馬港の観測点では
9.3m 以上の最大波を観測。その被害面積は市域の約10%にも及んだそうです。
それに伴い多くの犠牲者が出ましたが、その後の東京電力福島第一原発の事故により
警戒区域に指定され立ち入りが制限された為、行方不明者などの捜索は一時中断、
そして1年以上本格的な捜索活動が行われませんでした。
その間、地元の方達とボランティアのみでの捜索活動が継続されてきました。
この菜の花迷路は津波でご家族を亡くされた上野さんが代表となっている
「福興浜団」 により2013年から少しでも笑顔がこの場所に戻るようにと開催されています。
昨年の2月、逗子で行われた上野さんご家族が主人公になっている笠井千晶監督の
ドキュメンタリー映画『Life 生きてゆく』の上映会ではアフタートークに
上野さんも参加され被災されたご自身が直接されている捜索活動について
「みんなが生きていたら何をしていたかなと考えた時に、
自分は命があるのでやらなくてはいけないと思いやり始めた。」
「 東北の震災が『教訓』として日本の中で残っているものだと思っていたが
その後の常総での豪雨災害で逃げ遅れたりしている人を見た時に
東北の震災の教訓が残されていないと感じた。
『まさか』で2万人弱の方が
命を落としたが、常総でもまた『まさか』という言葉が使われていた。
『 命が一番大事。自分や家族の命をどう守っていくのか、どう地域で守って
いくのか。
東北での悲しい記憶は忘れてもらってもいいと思っている。』
教訓として『どうやって命を守るのか』それだけを残してもらえればいい。
自分や自分の家族の命を考えてもらいたい。
何かの災害が起きた時に死者がゼロなのが一番嬉しい。
だから教訓に拘っている。」と話されていました。
上野さんは東日本大震災の津波によりご両親とお子さま2人を失っており、
残念ながら未だお父様と息子さんは見つかっていません。
またこの地域では他にも多くの行方不明の方がいらっしゃいます。
だから上野さん達は今でも捜索活動を続けています。
そんな中、今年の2月下旬に震災後初めてこの地域で福島海上保安部による
海の捜索が行われました。
残念ながらこの日は風が強く海の状態が悪かった為、特に捜索の成果は
なかったそうですが、8年経って初めて捜索活動された事自体を地元の方は
喜んでいたようです。
震災から8年。
復興の速度は地域によって、人によって大きく違います。
過去に囚われ過ぎず、未来へ進み過ぎず、今を大事にしていくことが
一番大切なのかもしれません。その先に未来があります。
来年もまたたくさんの菜の花と多くの人の笑顔がこの場所に咲きますように。