vol.1では明治から昭和にかけての女性誌に掲載された生理用品広告を辿り、生理用品が時世に大きく左右されたことを取り上げました。今回は戦時中に発刊された女性誌より、生理中の過ごし方を提案する記事を取り上げます。
戦時中の女性誌に掲載された「生理中の過ごし方」。それまで使われていた脱脂綿が軍需品とされたため、節約を呼びかけ、代用品が提案されました。記事の通りに試作をしてみました。
以下、記事の詳細です。
婦人の毎月使ふ綿は大変なものでせう。
これを各自で再生したらほんとうにお国のためです。
使った綿は、小さな目ザルのようなものの中に入れ、器を定めて水に浸けておきますと、血液が溶けて水が真っ赤になりますから、引き上げて今度はカルキ液か石鹸液で煮沸消毒し、後を十分に水洗ひします。
(いつもザルごとすれば、さう手先を使はないでもきれいになります。)
それから押し搾って物陰で干し、乾いたら手先で解しておきます。
度々再生してぼろぼろになりましたら、布袋に包んで使ひます。
なほ、綿をお使ひになるときは、塵紙でも何でも、紙を柔らかく揉んで落ちないやうに綿の間に挟んでおくと、紙は吸収力が強いですから、下側の面をあまり汚さないで済み、非常に経済的です。
また田舎の方には、月経時でもお産のときでも、藁灰の利用をお奨めします。
日清、日露の戦争当時は、兵隊さんの傷の手当てに藁灰包帯といって盛んに使ったものですが藁灰は吸収力も消毒力もあり、柔らかで立派な綿の代用品です。
掌くらいの大きさに作ったきれいな布袋に五六分厚みに藁灰を入れて使ひ、袋は幾度でも洗ひ返して役立てます。
日本婦人が、輸入の綿を一日十銭づつ使うと聞いた十数年前から、もったいない、私だけでも倹約してと思ひ立ち、職業柄、折あるごとに、人様にもお奨めしてきました。
掌くらいの木綿のぼろ布(きれ)や端布(はぎれ)が出たらどんな古いものでも溜めておき、洗って熱湯と日光でよく消毒して、清潔な箱に収めておきます。
これを月経時やお産の時に五六枚ずつ重ねて使ひ、汚れたら洗濯して繰り返し使ひます。
この外側に青梅綿を当てて、丁字帯をしなくても、粗相をするやうな心配は絶対ありません。
脱脂綿はなくても結構ですし、直接当たるところだけ綿を使っても従来の二分の一、三分の一で済んでほんとに経済的です。
なほ産褥布団は、この頃はゴム引きの布(きれ)も油紙も質が悪くなりましたから、代用に新聞紙を七八枚重ね、その中央に一尺(三十八センチ)四方ほど青梅綿(古くて結構)をおき、表面に消毒した布を重ねてみましたが、これで充分間に合ひます。
私は朝鮮の習慣から糠を二三分の厚みに入れた袋を作り、この上に脱脂綿を薄く当てて使っていましたが、綿が手に入りにくくなつてからは紙脱脂綿やガーゼを使ひました。どちらも肌触りがよく衛生的ですが、高価で今後は綿と同様に貴重なものとなりませう。
晒布(さらし)の肌襦袢などの古くて着られなくなったものを利用するのが、よい方法でせう。
朝鮮では、着物に麻布(あさ)をよく用ひるので、他にすることのできないぼろ麻布(あさ)を祖母から母に、母から娘へと伝へて、綿代わりに使ひます。
糠は脂肪が多く、水気をはじく性質がありますから、糠袋を使へば丁字帯だけで月経帯はいりません。
配給の脱脂綿も少なく月経時に大へん困っていると、
挺身隊の方々からよく聞きますが、傷んでざくざくになった
手拭いやタオルを半分に切り、煮沸して六つ折りにして
使うと非常に具合よく、綿がなくても困りません。
新聞紙も、小さく折りたたんで、上側にちり紙や布など、
柔らかい吸収性のものを巻いて使うと、結構綿の補助にはなります。
▲月経時の脱脂綿の代用に=配給の脱脂綿も少なく月経時にたいへん困っていると、挺身隊の方々からよく聞きますが、損んでざくざくになった手拭いやタオルを半分に切り、煮沸して使ふと非常に工合よく、綿がなくても困りません。
またつぎの当てようもなく損んだ下着類や古浴衣なども、同じやうに手拭半分大に裁って何枚も用意しておき、使用後は一晩水につけて洗ひます。
▲新聞紙も小さく折りたたんで上側に塵紙や布など軟らかい吸収性のものを巻いて使ふと、結構綿の補助にはなります。
▲月経帯の工夫=ゴムも補給がつかないので、古モスリンでで作った丁字帯を使っていますが、木綿などで作るときには、綿の当たる部分だけにモスリンか綿ネルを縫ひつけておきます。
これなどは、たためば小さくなりますから、端布(はしきれ)利用の代用綿と一緒に通勤用の救急袋に必ず入れておきましょう。
協力サイトはこちら
むかしの女性はどうしていたの?
明治・大正・昭和の女性誌の生理用品広告集
http://nunonapu.chu.jp/naplog/
(2016.09.18)
【about period〜生理と社会のカンケイ〜】✳︎TWFF(伯野朋絵)
https://www.twff.info