2018年2月16~18日ミュンヘンにて安全保障会議が行われ、各国の首脳や閣僚ら約100人が参加した。それにあわせ、ミュンヘン近郊に暮らすアフガニスタンの少数民族であるハザラ人たちが、アフガニスタン政府ぐるみで行われている、ハザラ人に対する組織的な差別撤回を求めるデモを行った。安全保障会議には、アフガニスタンのアシュラフ・ガニー大統領も参加した。
このデモには、2011年にドイツに難民としてやってきた、ハザラ人のヤシン(22歳)も加わった。
ヤシンはアフガニスタン中部のチャグチャラーン出身、アフガニスタンに住んでいた時は満足な教育が受けられなかったが、現在はドイツの大学でITを学んでいる。
ハザラ人が弾圧されている理由はこうだ。
ハザラ人はイスラム教シーア派教徒、顔立ちはアジア人に近く、アフガニスタンでは3番目に大きい280万人の民族である。国内の多数派であるパシュトゥーン人はスンニ派を信奉しており、異なる外見や宗教観の違いから、ハザラ人は常に暴力と差別のターゲットとなっている。高等教育を受ける機会を奪われ、低い地位のまま発言力も持てず、人が嫌がる仕事に就くしかない。さらに、死に値する異端者と見なされ、民族浄化を目論むISやタリバンといったテロ組織からの大量殺戮、追放、誘拐の危険と隣り合わせで、今日でも残酷な行為が行われている。そのため、難民として国外に住むアフガニスタン人はハザラ人が多い。
ハザラ人に対する組織的な差別の一例に、アフガニスタン電力プロジェクトがある。これは、アジア開発銀行から出資を受けた送電プロジェクトで、当初は中部のバーミヤンに通す計画だったが、アフガニスタン政府は、カブール北にあるサランルートに変更した。その理由は、バーミヤンはハザラ人の居住地域だからである。ハザラ人に経済的恩恵を与えたくないという明確な意思が働いているとハザラ人たちは言う。
この電力プロジェクトに失望したハザラ人たちは、2016年7月23日カブールで大規模な抗議デモを行ったが、そのデモはISの標的となり、自爆テロによって80人が亡くなる悲劇的な結果となった。
世界中に散らばっているハザラ人コミュニティーは、アフガニスタンでの非道行為を訴えるデモ活動等を通じて、国際社会に力を貸して欲しいと声を上げ続けている。