2018年1月25日、「民進党」大塚耕平代表が定例会見を党本部で行った。
冒頭では、午前中に行った参院本会議代表質問の感想として
「憲法と働き方改革を中心に安倍総理の認識を聞かせていただき、働き方改革はそれなりにお答えいただいた気がするが、憲法については実際に憲法改正するとなればさまざまな実務的な問題もあるということで質問したことに、真摯に受け答えする姿勢が全く見られずに大変残念だった」
と述べ
「そういう姿勢であるからこそ安倍さんの憲法改正論議にはどうしても皆疑念が付きまとうということだと思う」
と安倍総理を批判した。
質疑ではFrance10は合計3問の質問をした。
【「フランス10」・及川編集長】
「民主党政権の経済ブレーンだった経済学者の小野善康さんが朝日新聞大阪本社版1月12日付の朝刊で、生産性革命や人づくり革命というのは結局供給サイドの政策で、今必要なのは総需要不足の解消ではないかと書いていた。民進党はこの総需要不足の解消のためにどのような経済政策を掲げるのか伺いたい。」
【大塚耕平代表】
「小野先生は、我々の政権時代から今のようなご主張が持論で、やはり民主党政権と今の安倍政権の違いをそういう意味では非常によく捉えていらっしゃるコメントだと感じる。
つまり、「生産性革命」とセットで「人づくり革命」と言って、本日も代表質問で申し上げましたが、いかにも我々の「人への投資」とかぶっているような政策をやっているように安倍さんは見せているのだけれども、総需要対策としての観点が全然ない。
だから、時々申し上げているが、NHKの「日曜討論」でも何回か申し上げた気がするのですが、アベノミクスというのは「経済がよくなれば生活がよくなる」、こういうコンテクストなのだ。ところが我々は「生活がよくなれば経済がよくなる」と、真逆なのだ。
安倍さんの「経済がよくなれば生活がよくなる」という、いわゆるトリクルダウンは特に平均的な国民の皆様には、現に起きていない。私達の「人への投資」というのは、例えば本日も質問したが、保育士の皆さんの処遇改善、結局そのことは保育士の皆さんの消費行動、つまり需要につながっていくので、やはりそういうところで安倍さんの経済政策は私達とは根本的な違いがある。
きょうの質問、たまたま土改事業のことを取り上げたが、土地改良事業は補正予算と今年度の当初予算を合計すると、民主党政権前の水準を超えてしまった。こういうことをやっていたら、本当の需要対策の予算は出てこない。
したがって、小野さんがおっしゃるように、安倍さんのおっしゃる「生産性革命」はまさしく供給サイドの政策で、あわせて「人づくり革命」もセットで供給サイドの政策の一環のように見えてしまうところが最大の問題だ。
だから私達はやはり需要サイドの政策、これは単純に給付を拡散するということだけではなく、もちろん保育士さんや介護士さんのように他の産業よりも平均所得が低い部分は大胆に是正しつつ、しかし、その他の職業分野の方々も所得が恒常的に上がっていくような、やはり分配政策と同時にその人達のスキルアップやさまざまなキャリアアップにつながるような施策を行っていくということだ。
小野さんのそのコメントももう一回読ませていただいて、しっかり対応したいと思う。」
【ゲイレポーター酒井佑人】
「若者が希望を持てる社会を」と野党は主張しているが、自民党への若者支持率は43.4%と非常に高く、野党への若者支持率とは大きな差があるように思えるが、この差をどうお考えか。若者の支持率が足りない理由は何だと思われるか。」
【大塚耕平代表】
三つあって、一つはやはり広報対策。そういうストラテジーの面で差が出ていると思う。SNS対策とか自民党さんは随分やっている。そういう面で少し我々、野党全体かもしれませんが、出遅れているので、ここは補強しなければいけないと思う。
二つ目は、若者の年齢層にもよるけれども、今の若い皆さんにとっては物心ついた時には民主党政権だった。そして世代によっては、その後、自民党さんが復活して、自民党さんが古い政党だという意識があまりないのかもしれない。だから、気がついた時には民主党政権で、むしろ民主党政権は下野したと。その後出てきたのが自民党だという、こういう世代間ギャップもある。
3番目は、エーリッヒ・フロムというヨーロッパの社会学者がいるが、『自由からの逃走』という本を書いている。今若干、社会の、特に若者にそういうフロムの言っていたような社会傾向が少し潜在的にあるのかもしれないなというふうに思う。
これはつまり、自民党さんあるいは安倍政権は我々から見るとかなり強権的な政権に見えるのですが、やはり今の若い皆さんの所得水準などは必ずしもかつてのバブル世代のようにどんどん伸びるわけではない、いろいろ束縛も多い中で、何かその強権的な政治が自分達の希望を一気に実現してくれるのではないかという潜在的期待感。こういうことをフロムの『自由からの逃走』というのは書いている。勿論、フロムが書いた時代背景や対象とは全く一緒にならないが、そういう社会心理学的な要因もある。
その三つぐらいだと思う」
【「フランス10」・及川編集長】
「今週日曜日に保守思想家の西部邁さんが自死されたが、西部さんは晩年、グローバリズム反対や日本の中小企業や農業保護、あるいはマーケットにおける利潤最大化のみを追求する資本主義への批判など、日本共産党の政策を高く評価し、共産党は今の日本の政治では一番保守に近いのではないかとおっしゃっていた。大塚代表は共産党とは政策が異なると何回も主張されているが、保守の思想家の側から日本共産党こそ保守ではないかという意見が上がっていたことについて、どのように思われるか伺いたい。」
【大塚耕平代表】
「共産党と選挙協力は難しいという最大の理由は、私たちは自衛隊合憲の立場だからである。その他の政策で全て異なるなどということは一度も申し上げたことがなく、むしろ社会保障とか経済政策では結構接点がある。あわせて、小池さんを含め、大門さんとか山下さんとか、仲のいい人はいっぱいいますので、人間的にはつき合いは深いです。
ただ、やはりそのベースになる基本政策、特に自衛隊の扱いなど、こういうところに差があると、それはなかなか政権を一緒に目指すというようなことは難しいので、選挙協力は当然難しくなるけれども、お互いに向き合うのは今の自民党さんの強権政治だということであれば、それは自主的にご協力いただくとか、いろいろな方法もあると思う。
2点目だが、本来、古典的な保守はこれまでの慣習、伝統、社会の構造を守るというところにあるだから、つまり共産党さんがおっしゃっているそれこそグローバリズムで国民の皆さんが疲弊しているとか、さまざまなご主張は、今も言ったような観点から言うとまさしく保守的であるとも言える。だから、保守とリベラルというのは対立概念ではないということだ。
宣伝ではないが、ちょうど本(大塚耕平『賢い愚か者の未来』早稲田大学出版)ができたので、この中にそういう話がいっぱい書いてある。まさしく保守とリベラルの話も書いていて、やはり我が国の政治、あるいは日本が国際社会の中でどういうことが課題なのかということを、私自身が政治家として、まだ少しアカデミズムにも足を突っ込んでいますので、そういう観点からいろいろ書いていますので、一回読んでみてほしい」
と最後に本の宣伝をして、会見の幕を下ろした。
取材&文:酒井佑人(ゲイレポーター)