2015/02/23 政治
【与那国島住民投票】ルポルタージュ③中学校までしかない島で15の旅立ちを控えた中学生たちの住民投票

2月22日、日曜日。日本最西端、人口約1500人の小さな国境の島で自衛隊海上監視部隊の誘致とそれに伴うレーダー基地建設についての民意を問う住民投票。1284人の成人。中学生以上の未成年97人。永住権を持つ外国人5人に投票権あり。

 

 

投票日当日、与那国島の祖内、比川、久部良という3つの部落の中の1つ、祖内の投票所。気温は温かく、投票会場の構造改善センターの周りには目の眩むような緑と切り立った崖の輪郭、島の人々を取材する為に待ち構える沖縄本島や日本本土からやってきたメディアの人々。各社中学生のインタビューを取るように支持があるのか、島の中学生が現れるとザワザワとし、彼らはちょっとしたセレブリティーのよう。

 

 

 

 

住民投票を済ませ、投票所から出てきた中3の男の子を数台のカメラと記者が囲む。髪の短い、目のきれいな男の子。黒くてシンプルなアディダスのロングスリーブシャツを着ている。

 

 

「ちなみに今何年生?」

 

 

「中3です。」

 

 

「学校の中で議論とかでてたり、友達とかとこういう話をしたりとか?」

 

 

「いや、あまりないですね。」

 

 

記者からの質問を聞くとき、質問を聞き逃さないように微かに表情を険しくし、短めに答える。

 

 

「決めるときはどうやって決めたんですか?」

 

 

「島のことを考えて、どっちがいいかなぁって、考えて決めました。」

 

 

「中学生が投票権を持つことに対してどう思いますか?」

 

 

「ちょっと、あまり良くないかなぁ。あまりよくわからない年齢なんで。考えが、はっきりしないので、ちょっと…一票で島が変わるっていうのに、ちょっと…重荷ですね。」と目やおでこをこすりながら言った。

 

 

「家族でけっこう話になったりはしました?」

 

 

「あまりありません。自分で考えて入れなさいって。」

 

 

「友達同士で今回の住民投票について話したことはありますか?」

 

 

「少し。」

 

 

「どういったことを話しましたか?」

 

 

「投票行くか〜?って。」

 

 

「中学3年生だとこれから高校に行くのに島から出ると思うんですけど、島から出た後もやっぱり帰ってきたいって思いますか?」

 

 

「はい。もちろんです。」

 

 

「どういうところが好きなんですか島の?」

 

 

「自然溢れていて、人も人情豊かで、みんな家族みたいな島なので、いつでも帰りたいですね。帰ってきたいですね。」

 

 

「今まで全くアメリカ軍も自衛隊もいなくて、もし基地ができたら変わると思うんですけど、島が大きく変わっていくかもしれないっていうことを考えたときに、どんな気持ちになりましたか?」

 

 

「いい気持ち。いい気持ちって言えば、いい気持ちですけど。島が活性化すればいいですよね。」

 

 

「自衛隊についてはどういうイメージを持っているんですか?」

 

 

「自衛隊、個人的には好きですね。ちっちゃい頃から好きです。」

 

 

「同級生で投票に後ろ向きな子とかもいたのかな?」

 

 

「そういう子はあんまりいませんでした。」

 

 

インタビューが終わると彼は母親の運転する車へ戻る。「新聞記事になっても大丈夫ですか?」と記者が聞く。「…いいですよ」と後部座席に座っている彼。「…本当にいいのね?」と運転席の母親が息子に聞く。大丈夫、と息子は頷く。

 

 

 

 

同じクラスの中3の女の子2人。1人は髪を1つに縛って前髪を斜めに流して、もう1人は肩より長い髪をそのままおろしている。

 

 

「2人は学校の友達?」

 

 

頷く。

 

 

「どういう思いで今日は会場に?投票に行かないっていう選択もあったと思うんだけど、2人して来たっていうのは何か、考えがあるのかなぁと思って。」

 

 

「…自分で考えたこと。」彼女たちは終止笑顔で、言葉少なく答える。

 

 

「2人は一緒に投票にきて、投票に来る前も一緒に島のことについて話したりしたんですか?」

 

 

「…した?」と笑いながら体を少しねじって友達の顔を見る。

 

 

「…ちょっとだけ。」と2人で記者の方を見て答える。

 

 

「学校で話題になったりします?クラスの中で。投票のこと。」

 

 

「するよね。」

 

 

「どういう感じ?行く行かないとか、それともどっち入れるとか?」

 

 

「それはないけど。」あることとないことがはっきりしている。

 

 

「今度あるよね、みたいな?」と記者。

 

 

「2人は高校で島を出た後、将来はもう1回戻ってきたいって思ってるの?」島には高校が無いから、子供達はみんな15歳で島の外へ進学する。

 

 

「まだ考えてない。」

 

 

「島を出るのは楽しみですか?それとも不安ですか?」

 

 

「楽しみ。」

 

 

「何したいとかありますか島からでて。」

 

 

「たくさん友達をつくって色んなことを学びたい。」

 

 

「色んな人が中学生に投票させるなんて!って言っていますが、そのことについて何か思うところはある?『私たちだって考えてるんだ!』とか『確かに』って思うとか。」

 

 

「確かに。」

 

 

「本当は投票したくなかった、投票できてよかった、どっちの思いが強いですか?」

 

 

「中学生はちょっと早いかなとは思うけど、えーと、一応投票することができるから、自分なりに考えて投票したいかな。」

 

 

「島の将来とか今を考えるきっかけにはなった?」

 

 

「うん。」

 

 

「良いことと悪いことを判断するときに、自分の中で基準とかってありますか?」

 

 

彼女たちは質問を聞きながら少し悩む。

 

 

「どういうふうに…」と小さな声でつぶやく。少し体を揺らしながら考えている。

 

 

「家族に相談しましたか?」違う質問が投げられる。

 

 

「相談っていうか、投票するしないっていう、自分の考えを持って考えた方がいいよ、というな。」

 

 

「中学生なんか何にもわかんないって言ってた大人もいるんですけど、どう思いますか?」

 

 

「わかんないっていうか。島のことを考えるのはいいことだと思うけど、責任とかはちょっと難しいかなって思うところもある。」

 

 

「大人と同じ一票を入れることが重いっていうことですか?」

 

 

「はい。」

 

 

「大人もおかしいんじゃないって思うこととかないですか?子供のことばっか言うけど。」

 

 

「たまにあります。ちょっと大人げないとか。ちょっとなんか、なんだろ、もうちょっと違う言い方あるんじゃないかな、とか。言葉の使い方。」

 

 

「どういう島になってほしいですか?今後、この島が。基地のことに限らず。」

 

 

「自然はいっぱい残っててほしい。」と髪を1つに結んだ女の子。

 

 

「やっぱ平和が一番かな。」と髪をおろした女の子。

 

 

「遊びに行ったりして島の外の世界を見た後、与那国と他の場所の違いについてどう思いますか?」

 

 

「スーパーとか、ちょっと不便だなと思うとこもあるけど。与那国でしかできないこともいっぱいあるし。」

 

 

「賛成の人も反対の人も両方とも『平和』っていう言葉を使うけれど、それはどう思いましたか?」

 

 

「どうだろう。ややこいしい。」

 

 

「平和ってなんだと思いますか?」

 

 

「えーと。平和とは。武力を使わず、争いごとがないことだと思います。」

 

 

 

 

13歳の娘と一緒に投票に来た母親。投票所の外で、娘の代わりにマスコミのインタビューに答える。

 

 

「賛成と反対はどちらに…?」

 

 

「どっちかはこれは私のあれなので、言う気はありません。」

 

 

「今回娘さんがいる中でこういう住民投票を中学生達がやられることに対してどういう風に感じられますか?」

 

 

「あの子たちの生まれ故郷で、これから島から出る、社会に出て行く中で、自分たちの故郷のことなので、別に中学の投票があっても。逆に中学生の頃から真剣に生まれ育った島のことを考えるいい機会だと思いました。」

 

 

「そういう意味では中学生からの住民投票を評価するということでしょうか?」

 

 

「評価ができるかどうかはわからないですけれど。やっぱり子供が真剣にちょっと考えたのは事実ですから。なかなかね、島に戻ってこないのが現状ですから、出て行った子達は。島がこれで大好きになればいいかなと思ってますね。」

 

 

「学校内で投票することに対する不安とかあったりします?」

 

 

「いや、全然。あの娘からも聞いても学校内でそういうことがあるというのは聞いてませんし、全然そういうのは無かったですね。」

 

 

「けっこう悩まれてました?」

 

 

「難しいみたいでしたね。ちょっと緊張もしてたし、意味がわからないのでそこから説明するのが大変でした。」

 

 

「ご家庭内でどのよなお話を?」

 

 

「あなたが両方の意見をちゃんと照らし合わせて、あなたが好きな方、あなたがいいと思う方にマークをつけなさいと教育しました。」

 

 

「お子さんの自主性というのを…」

 

 

「もちろん。その代わりその自主性を決める為に、ちゃんとしたメリット、デメリット、国のこと、というのは私がわかるかぎりは教えましたが。」

 

 

「娘さんは何年生?」

 

 

「中学校1年生。13歳。難しいみたいでしたけどね。」

 

 

「一番最年少ですもんね。」

 

 

「特に幼いですからねうちの子は。だけどそれなりに考えてたみたいなので。」

 

 

 

 

以下は、匿名を条件に通常の選挙で選挙権のある島の人々が語ってくれた言葉。

 

 

 

 

「私はダイヤモンドに目は眩みません。自立の道を選びます。」

 

 

 

 

「俺は誘致派だよ。なぜ?難しいね。まぁみんなね、人口が減るからどうのこうのって言うんだけどね。けど国境の島で自衛隊があって、当たり前のことだよ。監視部隊だから。」

 

 

「ずっと島で暮らされてるんですか?島生まれ?」

 

 

「うん。」

 

 

「今更必要無いという声も聞きますけど。」

 

 

「その方達はやっぱり革新系というかな、なんでもかんでも反対する人達でしょ。そうじゃなくて、これからの島をどうするかなんですよ問題は。自衛隊が来るから行政の立場も変わってきますけど、みんな心配してるのは自衛隊が来ることによって、町長選とか議員選で賛成はが有利になるのではないかといったこと考えるとまた話別なんだよね。150人でバランスが変わることはあり得るよ。今の行政がそういった立場だから、それではいかんなぁと思うんだけどな。でも、ちょっと難しいな、そういったのはね。」

 

 

「今の行政の立場っていうのは?」

 

 

「要するに、自分たちの身内だけで固めてるもんだから。これもちょっとね。これがだんだん輪が広がらんと駄目だな。ボンクラでもなんでもかんでも入れておけばいいわけじゃないんですよ。やっぱり保守革新なくしてさ、ただこれがさ、今回の選挙っていうのは、今まで選挙のたんびに賛成か反対かでやったんで、これでぴしゃっと終わりたいなというのが、僕の願いである。そうなってほしい。それ以上はやりたくないね。兄弟でも兄弟でもケンカしてるんだからみんな。嫌だねそういうの。今日で終わってほしいなっていう。」

 

 

「本島だと米軍の基地があるからケンカが無くならないようにも思うんですけど、自衛隊が入って来たらそういうのは逆に…」

 

 

「いや、ないと思うね。ていうのはね…」

 

 

「ピーピーピー。電話がなる。台湾からの電話。」

 

 

「台湾と普通に電話できるんですか?」

 

 

「できますよ僕は。登録してあるから。全世界できるようになってます。台湾には39年通ってますから。今回の選挙で自衛隊が入るからどうのこうのって言ってますけどとんでもないですよ。台湾ははっきりいってアメリカ海軍の第7艦隊が守ってるんで中国が攻撃できないっていう立場なんですよ。それに自衛隊が入ってくると鬼に金棒だと台湾は喜んでますよ。私は行政関係けっこう知ってる方いらっしゃいましてね、議員さんなんかもよく知ってますから。台湾のね。立法員も何名か知ってるんですよ。それはもう歓迎だよと。」

 

 

「彼らは国民党と民進党ってありますけど。」

 

 

「まぁまぁ大体国民党関係が多いですね。次の総統は民進党になる可能性が充分ありますけどね。与那国は華蓮市との姉妹都市ですので。華蓮市は国民党が多いですからね。でも知事は無所属。台湾で初めての無所属が今2期連続知事になってます。」

 

 

「島の自衛隊以外の産業はこれからどうしていくんでしょうか?」

 

 

「これは商人がやることであって、これは商人がちゃんと商人らしくことをやるでしょう。それをね行政の方がバックアップしてやれば幸いなんですけど。どうしても人口減ってるんで、新しい方達が来ますから、やっぱり行政も一体となってやっていかないといけないんじゃないかな。」

 

 

 

 

「やっぱりちょっと遅かったかなと思いますね。だって工事始まってますでしょ。あれができなくても反対の方が過半数以上取れれば別にあっちも阻止できると思いますけどね。」

 

 

 

 

「二分化してる現状はあまり好ましくないという、正直な話、なんだけど、やっぱり複雑ですね、島の人間としては。今後もしこりがなければいいんですけど。」

 

 

「ストレスやしこりは以前はなかったんですか?」

 

 

「ここまで厳しくはないんじゃないかね?でもねずっと、町長選挙とかでも、やっぱ小さい島ですからね。そうするともう、まぁしこりというか、反対もあれば賛成もあるという状況。保守もあれば革新もいるという状況が町長選挙でもあるんだけど、けどそこまでの激しいものは無かったような気がするね。今の二分してる状況。自衛隊の話が来たときから、ちょこちょことはでてきたんだけど、段々現実化なってきて余計にしてきてる状況はありますね。兄弟だったり親戚でもね割れてしまう場合があるっていうのがまぁキツいかもしれないね。」

 

 

 

 

2月22日、当日の投票時間は朝7時から夜7時まで。8時から開票作業が行われ、結果は自衛隊誘致賛成が632票、反対が445票。無効票が10票。白票が7票。1284名の投票資格保有者の内、1094名が投票。

 

プロデュース :蜂谷翔子

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