2018/04/01 文化
命が輝くときとは、いつだろうか。その命高く跳べ~うさぎのななちゃんとラビットホッピング~

うさぎのななちゃん。日本ラビットホッピング協会(JRHA)主催のラビットホッピングにおいて、日本で最も高い8段のハードルが跳べるうさぎです(2018年3月現在)。ななちゃんは実験動物出身。飼い主のちゅんちきさん(仮名)は、ななちゃんを引き取った経緯から、実験動物、そして、動物の命について語ってくれました。

 

お調子者でおっちょこちょい。そんな、ななちゃんですが、自己アピールが下手で淡々とした地味な性格もあり、生後半年も経たないうちにちゅんちきさんのもとに一時保護という形で預かられてから、3歳になっても里親は見つかりませんでした。

 

一時保護の間は、保護主に懐くと次に里親に引き渡した際、飼い主が変わるストレスが大きくなることから、保護うさぎとは距離を置きます。けれども、うさぎが若く、最も生き生きしているであろう3年間をそのような状態で過ごしたななちゃん。ななちゃんを生き生き過ごさせてやりたいと、保護主のちゅんちきさんは、自らが里親になり、ラビットホッピングをやらせてみることにしました。

 

最初はうまく跳べなかったとのことですが、先にラビットホッピングを始めていた同居うさぎの見よう見まねで、ものにしていきました。そして、JRHA主催のラビットホッピングのエキシビションや大会に参加するようになります。

 

同居うさぎの1匹である、「おび」ちゃん。良きライバルとして共に活動していましたが、2017年10月、おびちゃんが病魔に倒れ、息を引き取ります。その後、おびちゃんの意思を引き継ぐかのように、一層、ラビットホッピングに身が入るようになったという、ななちゃん。そして、その年の4月には6段を跳んでいたものが、11月には8段を跳び、その後安定した記録を残していくようになります。

 

ラビットホッピングが日本に導入されたのは、2014年頃。最初の頃は、1段を跳ぶだけでも精一杯、という映像も残っています。それから4年。JRHAが主催するラビットホッピングでは、一番高い8段というハードルを安定して跳べるようになった最初のうさぎが、ななちゃんです。

 

才能が一気に開花した、ななちゃん。しかしその裏には、シビアな命の物語がありました。実験動物出身のななちゃんは、実験が終われば命を落とす運命にあったのです。日本における実験動物の扱いは、使命が終わった後に里親を探すのはまだ一般的ではありません。動物実験の現場に明るいちゅんちきさんは、ななちゃんを始め、複数の実験うさぎの里親探しに奔走します。そうして命を継ぐことができたうさぎのうちの1匹が、ななちゃんです。命を継ぐことができなければ、ラビットホッピングで才能が開花することもありませんでした。

 

動物実験は、人間の生活において、現時点では必要不可欠です。薬や治療法の開発、安全性の確認、つまりこの世界で暮らす以上、いろいろなものの安全性や治療法は実験動物たちが担保しています。今や少しずつ動物実験は、減らされていく方向にあるとはいえ、全くゼロにすることは難しく、よって、データを取るために身命を賭す動物たちは少なくありません。

 

けれども、その現実に目を向けなければなりません。食肉にしてもそうですが、他の命をいただいて初めて、生きていけるということ。そしてそれを受け入れて初めて、現実を見据えた命の保護ができるということ。今はまだ、日本では実験動物の里親探しは一般的ではありません。ただ海外ではそういう例もあると、日本でもそうしていけたらいいと、ちゅんちきさんは話します。

 

データを提供し、その命を「安全を守る」「治療法を確立する」という形で次世代の命に継ぐ実験動物。里親を探して、その命を自ら継いでゆく保護動物。ななちゃんが8段を跳ぶということは、命を継いだその証でもあります。ラビットホッピングは見た目にも楽しく、飼い主さんとうさぎさんの絆が深まる手段でもあります。表面的に「楽しい」だけでなく、そこには深い物語もあることをぜひ知ってください。

 

ラビットホッピングには推奨年齢があります。若いうさぎ向けの競技なので、もう5歳になるななちゃんは、いつまで続けられるか分かりません。うさぎにおける5歳は、人間における50歳程度にもなるからです。ラビットホッピングを続けているため、触って分かるほどに筋肉が発達しているというななちゃん。いつまでも元気で過ごせるよう、願ってやみません。

プロデュース :西村晴子
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