2013/12/31 地域
津波防御壁で失われる景観 福島県いわき市にある勿来海岸沿いの今

2013年11月。約1年ぶりに、いわき市を訪ね歩きました。
震災から約3年が経ち、自分の中にある記憶を風化させないために、1年に1度訪れる場所がこの勿来(なこそ)海岸です。 天気が良い日は、水平線近くに海上を行き交う船がくっきりと見ることができます。青い海、青い空、ゴミもない砂浜は、歩き、その空気を吸うだけで、背筋が伸び、まるで「頑張りなさい!」と背中を押してくれるようです。海沿いには民家が建ち並び、幼稚園などもあります。砂浜に下りて、遊ぶ家族連れやカップルで遊びに来ている風景が1年前にはありました。 あれから1年。 訪れた海岸沿いは、何本もの鉄骨が網目のように組まれ、工事関係の車両が行き来し、細い路地を抜けた先に広がっていた青い空、青い海は網目の隙間からしか見えなくなっていました。訪れるまで、そんな工事が始まっているとは知らず、地元の方に伺うと「津波や高潮から護るための工事だよ」と教えてくれました。1年前、歩くことができて砂浜には、いくつもの土のうが積まれ、鉄骨が並べられているので、当然のことながら、砂浜を歩く人は誰もいません。水平線近くに見えていた行き交う船も鉄骨の網目からしか見ることができませんでした。 未曾有の災害を経験し、今あちこちでこうした工事が進められているようですが、自然災害から人々の命を護るための手段とはいえ、自然豊かな風景が人々の暮らしの中から縁遠くなってゆくのが、少し淋しい気がします。 ☆☆☆☆☆ 撮影・編集 : iPhone4S

プロデュース :erika takeda
Comment

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  • 2014-01-01 23:52:35
    映像ありがとうございます。
    最近、勿来海岸まで足を運べていなかったので、景色の変化と変わらぬ静かな波音の映像に色々と考えさせられました。
    津波から沿岸部を守るための津波防御壁の建設について、三陸一帯の各々の町では様々な意見が聞こえてきます。巨大な津波防御壁の建設に一部から反対の声があがっている気仙沼市を以前取材しました。地元の漁師さんにお話を聞くと、「子どもの頃から海と触れる事で防災意識が高まるのに、海と生活が遠くなってしまうことで却って海の変化に鈍感になってしまわないか心配だ」と話されていました。しかし、一方で住民の方からはもうあれほど大きな津波に町が飲み込まれるのを見たくはない、と、防御壁の建設を望む声も聞かれます。
    地元の景色と暮らしをどうまもるのか、地域での議論は十分とはいえないという声もあります。
    ここ勿来で、皆さんがどのような意見をお持ちなのか、次回はその辺りもぜひ取材して投稿してみて下さい。
    続報をお待ちしております!
    有り難うございます。
  • たつのこ太郎 2014-01-02 21:17:11
    現地の方の声を知らずに勝手に書いています。
    巨大な防潮堤を作るお金があるならば、高台移転に使って欲しいと思います。

    ・自然破壊
    ・自然と人との関わり合いの断絶
    ・人口減少の社会はこのインフラを50年後に維持メンテナンスできない。

    恐れを知らぬ壮大な愚行だと考えます。何故大した議論もなくこうなってしまうのでしょうか?
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